進路アドバイス:学部選択~法学部


 「法学」とは「法律学」と同じことであり、「法」を対象とするあらゆる学問が含まれますが、大別すると次のようなものに分類されます。


(1) 基礎法学(基礎的理論的分野)

法史学(法制史)=法や制度の歴史を扱う。

比較法学=各国の法を比較する。

法社会学=社会と法の関係を扱う。

法哲学(法理学、理論法律学)=法の概念や意味を研究する。


(2) 実用法学(実用的実践的分野)

法解釈学=現存する諸領域の法(実定法)について解釈する。法学の最も広い部分を占め、単に「法学」と言えば、「法解釈学」を指すことが多い。その対象とする領域に対応して、さらに次のように分類される。

(1)公法学=憲法学、行政法学など。

(2)民事法学=民法学、商法学、民事訴訟法学など。

立法学・法政策学=特定の政策を実現するために有効な法規を研究する。


 したがって、こうした「法学」を学ぶのが「法学部」であるので、如何に就職のために有利だからといっても、法学そのものに関心が無い場合は極めて苦痛な4年間を過ごすことになりますので、まずもってよく「自己分析」をしておきましょう(「判例研究」などは欠かせない勉強ですが、法学に関心が無い人にとっては無味乾燥にしか思えないでしょう)。

 法学部で学ぶ場合、大きく2つの進路が考えられます。1つは司法試験を頂点とした「法律系資格」を目指す場合、もう1つは公務員試験も含めて、一般就職を目指す場合です。

 司法試験はアメリカ式の専門教育改革を狙ってロースクールが導入され、大学院で2年間(法学部出身でない場合は3年間)学ばないと受験資格がなくなっていきますが、そこまで費用的にも学力的にもかからない法律系資格はいっぱいあり(旧司法試験の場合、合格率は約2~3%で、4~5年の受験はザラでした)、独立志向の人はこれらを目指せばいいわけです。

 こうした「資格志向」が特にない人でも、「法学部は最もつぶしが利く」という評判通り、文系の中では最も就職に有利とされます。とりわけ、不況になるとがぜん脚光を浴びてくる「公務員試験」の場合、法学分野の出題される比重がきわめて多いため、法学部出身者は受験対策上有利となります(次に有利なのが経済学部。ただし、一般知能や論作文・面接など、独学がほぼ不可能な科目があるので、専門予備校を利用するに越したことはありません)。

 また、こうした直接的メリットの他に、「法律的思考・知識」が社会人としてどのようなビジネスに携わるにしてもプラスに働きます。例えば、1人で会社を興すにしても、最低限必要な知識は「法律」と「税金」であり、一般的には「法律」「会計」「語学」「情報(パソコン・スキル)」の4つの能力を持つビジネス・パーソンは高く評価される傾向にあります(「市場価値」からいって当たり前と言えば当たり前ですが)。さらにどの分野でもそれぞれの分野に応じた「法律的思考・知識」は必須不可欠と言ってもよく、国際関係論を学ぶ人であれば「国際法」を学ばざるを得ず、教育者を目指す人でも「教育法規」は必ず学びます。工学部へ行ってメーカーに就職した人でも、遅かれ早かれ「知的財産権」に関わる「特許法」「著作権法」などを学ぶことでしょう。「法」は社会の根幹とも言えるので、これに対して無知であることはできないのです(もっと日常的なレベルで言えば、電車に飛び込み自殺した場合、遺族に200万円の賠償額が請求されることもあり、車をぶつけて信号機を壊しただけで1,000万円請求されたりするということを知っているのと知らないのとでは大違いということです)。


【法学検定・ビジネス実務法務検定】

 法学検定は法律系資格としては一番有名で、合格すれば法律学について相当の能力があると社会的に認められ、就職等に有利になります。アドバンスト(上級)コース(法学部修了程度)、スタンダード(中級)コース(法学部3年程度)、ベーシック(基礎)コース(法学部2年程度)、法科大学院既習者試験(法学既習者試験)の4つがあります。ビジネス実務法務検定は1~3級に分かれていて、法学検定より実務的な内容になっており、法務部のみならず、全ての分野のビジネスマンが受検しておいた方がよいと言われています。特に憲法・民法の知識・理解は法務系資格のみならず、公務員試験などでも必須です。


【司法試験】

 これに合格しないと、日本における国家資格の最高峰「法曹三者」(裁判官・検察官・弁護士)になれません。アメリカでは法学・経営学・医学の分野では大学院で高等専門教育を行なうシステムになっており、日本でも司法試験を受験するためには、法科大学院(ロースクール)課程を修了、または司法試験予備試験の合格のいずれかが必須条件となりました。法科大学院を終了した者は、その後5年度間に3回の範囲で司法試験を受験することができますが、受験資格が消滅した場合、法科大学院を再び修了するか、予備試験に合格すれば、再び受験することができます。


【司法書士】

 裁判所や法務省などに提出する申請書類などの代行を独占業務とし、仕事の8割は不動産登記に関するものですが、個人訴訟の背後には必ず司法書士がいるとされ、弁護士の少ない地方では「街の弁護士」として様々な形で活躍する人が多いようです。試験科目は、憲法、民法、商法、刑法、民事訴訟法、民事執行法、民事保全法、不動産登記法、商業登記法、供託法、司法書士法で、地道で根気さえあればいつかは合格できる試験です。したがって、法律に興味はあるが、とても司法試験は自信が無いという人に向いています。


【行政書士】

 役所・官公庁に提出する書類作成の代行を独占業務としています。「街の法律家」どころか弁護士もどき、トラブルシューターとしての役割も担うことができます。


【弁理士】

 特許、実用新案、意匠(デザイン)、商標などの工業所有権に関して、調査・鑑定から特許庁への出願・申請を代行し、「理系の弁護士資格」とも言われています。こうした工業所有権の出願数に対し、弁理士は絶対的に不足しているとされます。





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