「100万人の速読術」

1、「既に何度も読んだ本」なら誰でも「速読」が出来る

●「月100冊」の読書も難しくない=ニューヨークタイムズの書評担当記者のように、本を読むことが仕事の人であれば、「月100冊の本」に目を通すことも珍しくありません。文芸評論家・慶応大学教授の福田和也氏なども月最低100冊の本をざっと読み、月300枚の原稿を書くことで知られています(ちなみに福田氏によれば、職業的物書きで月300枚書いている人はせいぜい20人だと言います)。ただ、ここで重要なことはこれらの人々はこのレベルを「目標」としていたというよりは、「結果」としてそうなっていたということです。実際、新規情報をこのレベルで処理することは大変なことですが、例えば、「マンガ100冊」(小学生でもトイレや寝る前などに1~2冊読んでしまいます)とか「雑誌100冊」(女性なら美容院で4~5冊でも目を通すでしょう)とか「何度も読んだことのある本100冊」であれば、ごく普通の人でも1ヶ月で読みこなすことはそれほど難しいことではないのです。

【ポイント】「絶対に出来っこない」という思い込みを崩せれば、「情報処理」は格段に進む。

●「既知情報」の活用がカギ=「何度も読んだことのある本」「よく知っている作家」「得意な分野」に目を通す場合、「既知情報」がベースとなります。既に知っていることを今さら丁寧に読み込む必要はないわけですから、そこはさっさと読み飛ばし、「新規情報」のみ探すこととなるため、「初めて読む本」「全く知らない作家」「苦手な分野」を相手にする場合に比べて、読書スピードは相当速くなるのです。これは「逐語読み」「理解読み」ではなく、「探し読み」「調べ読み」となるからです。また、「あれ、あの話どこにあったかな?あの本のどっかで読んだ気がするんだけど・・・」といった場合や裏を取る場合、論拠・具体例を探す場合なども、対象が「既知情報」であれ「新規情報」であれ、ターゲットを絞り込んだ読書となりますので、自然と「高速リーディング」となっていきます。

【ポイント】「サーチ・モード」が自然に「高速リーディング」を生み出す。

●「作家・分野」の集中=好きな作家の本は全部集めると、その作家の経歴、知識、考え、作風から文体に至るまで、一通りのことを吸収することになり、一番手っ取り早く「知識ベース」「情報ベース」を構築することが出来ます。また、興味・関心のある分野(「深層心理学」とか「経済学史」とか「数論」とか)に関して、最初に4~5冊読めば、引用や参考文献などから「次に何を読めばいいか」「この分野なら何を読まないといけないか」がおぼろげながら分かるようになり、10~20冊も読めば「その分野の全体像」が大体分かるようになり、ちょっとしたレポートや論文ならそれなりに(場合によってはいくらでも)書けるようになるものです。さらに自分なりの問題意識から「テーマ」を持ち、ここから40~50冊読んでいけば、もうそれなりの「論客」「専門家」の誕生です。こういった「知識ベース」「情報ベース」や「テーマ」がいくつもある人は、「情報の相乗効果」が起こり、「情報ネットワーク」を持つこととなります。

【ポイント】複数・多数の「ベース構築」「テーマ追究」は「情報処理」を多重化・加速化させる。



2、「問題意識」を持てば、「本主体」ではなく、「読み手主体」になる

●「全体構造」の把握=本を読む際、いきなり本文から読み始めるのではなく、まず、オビ、表紙、裏表紙(これらにはこの本を手に取った人に購買意欲を持たせるため、内容の中でも魅力的な部分を端的に紹介していることが多いものです)から目を通し、その後、序文、後書き、解説(これらはいずれも本文を書き終わった後、全体を見渡した上で書かれるものであるから、全体を貫く問題意識やこの本の特色、到達点などについて触れられており、全体像をつかみやすくなります)などを見た上で、目次(これは「全体構造」に他ならない)を把握して、本文に入るのです。

【ポイント】仕事も勉強も「段取り」が肝心だが、本を読む際の「段取り」は「全体構造の把握」に他ならない。

●「本主体」だと労多くして実り少なし=「読書」と言えば、「本に書いてあることを正しく理解すること」「作者の言わんとすることを客観的論理的に把握すること」などと思いがちですが、そうである限り、「読書」は「受動的」な行為となり、理解出来ないこと、思うように読み進まないこともしばしば生じることとなります。実は「1冊の書物から1つの貴重な情報が得られれば良しとすべし」で、作者の意見や思想を100%理解する必要などどこにも無いのです。もしも「書いてある内容がさっぱり分からない」とすれば、「作者が誰にでも分かる表現で書ける能力が無い(実はこのことについて作者も本当は分かっていない)」か、あるいは「今の自分ではここに書いてある内容を理解する能力が無い(従って、時が熟すまでは見たって時間の無駄)」ということになり、そこにいつまでもこだわる必要が無いのです。

【ポイント】「読書」は本に合わせた受動的行為ではなく、読み手の「問題意識」に合わせた能動的行為である。

●「読み手主体」だとギア・チェンジも思いのまま=例えば、1読目に「お、これは」という所やこれは引用・資料に使える」という所があればポストイットを貼れば(「書くために読む」場合はこの作業が必要になります)、2読目は折った場所だけ読めばよく、スピードは格段に速くなります。1読目に「読んで理解しなければ」と思うとスピードが鈍りますが(「ペースの固定化」が起きやすいのです)、「2読目以降のために作業をしておこう」と切り換えるとスイスイ進むものです。

【ポイント】1読目は2読目以降のための作業をする場と考えれば、簡単にスピードアップする。



3、「捨てる技術」を身に付けると、「精読」「多読」「速読」の三段階で発展する。

●「こだわり」を捨てて「多読」に至る=受験などでは「精読」の訓練(「読解の技術」「論理的把握の方法」を身につけること)は絶対不可欠ですが、いつまでもここに留まると、「完全主義」「完璧主義」の落とし穴にはまってしまいます。「精読」が出来るようになれば(ゆっくり時間をかければ確実に理解することが出来るということを意味します)、早く「多読」の訓練に移行すべきであり、そのために必要な「こだわりを捨てる」ためには一般書籍よりも月刊誌、月刊誌よりも週刊誌、週刊誌よりも新聞の方が適当です。新聞は1日で捨てないとたまってしまうため、さっさと読み切ってしまわなければならず、見出しだけ読んで関心があるものだけ本文記事に目を通すという習慣や、「1媒体1情報」という原則をつかむのに便利なのです。

【ポイント】英語メディアでも月刊誌・週刊誌より新聞の方が「捨てる技術」を身につけやすい。





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