よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~



「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~①」

(1)素朴なギリシア神話と星座の世界:神話学

①宇宙にはロマンとドラマがある

②天文暦学は「帝王の学」

③「宇宙論」とは「世界観」に他ならない

(2)天動説から地動説への「コペルニクス的転回」:神学・哲学・科学

①ダンテ『神曲』に見る「世界の構造」

②「スコラ神学」と「ヒューマニズム」を脱却したコペルニクスの「地動説」

③「客観的法則の発見」という「パラダイム・シフト」

(3)「宇宙に始まりがある」ことの衝撃:天文学・数学

①「宇宙の果てはどうなっている?」「宇宙の外には何がある?」という積年の疑問

②「定常宇宙論」にトドメを刺した「ビッグバン宇宙論」の進展

③「複素数」の概念が「時間・空間」の観念を大きく変えた

(4)相対性理論と量子力学が統一される初期宇宙:物理学

①マクロな重力理論である「相対性理論」の登場

②ミクロな確率理論である「量子力学」の登場

③宇宙の「根源」は「一即多、多即一」「ゼロ論と無限論」の場

(5)「人間」の存在が「宇宙」創成の前提なのか?:人間学

①「主観主義」の復権と「人間原理宇宙論」

②「認識論」と「存在論」が攻めしのぎ合う場

③「人間」、この摩訶不思議なるもの

(6)実は宇宙の構造はナゾだらけ:自然学

①「Why」どころか「How」も分からない「宇宙の構造」

②「神の領域」に挑み続ける学者達

③「宇宙」は人間にとって「永遠のフィールド」である



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「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~①」

(1)素朴なギリシア神話と星座の世界:神話学

宇宙にはロマンとドラマがある

「星座」の誕生と「ギリシア神話」との結合~約6000年の昔、古代オリエント時代、メソポタミア地方のカルデア人が「星座」の概念を作ったということが文献的に定説になっています。その後、バビロニア地方のシュメール人が紀元前3000年~紀元前2000年頃までが今日の星座を「天の羊達」、惑星を「年老いた羊の星」と呼んでいたという記録が遺跡に残されています。

 その後、地中海沿岸に住み、レバノン杉の巨木で建造した外洋船を走らせて地中海貿易を盛んに行っていた海洋民族であるフェニキア人は、航海の方法として星の動きを重要視し、メソポタミアに起こった「星座」を受け継ぎ、彼らの貿易の中で徐々に広まっていくようになりました。

 そして、フェニキア人との貿易を行ったギリシア人達が、船員達から聞いた星座を自分達の間に広く信仰していた「神話」「伝説」に登場する人物や獣達と結びつけることによって、自国の中で容易に広めることに成功したのです。ギリシア神話はホメロスヘシオドスらによる古代ギリシア及び周辺地域の伝承の集大成であり、アイスキュロスソポクレスエウリピデス「三大悲劇作家」に代表されるギリシア悲劇の詩人達によって奥行と人間的な深みがもたらされ、ヘレニズム期のアレクサンドリア図書館での整理を経て、1世紀頃にアポロドーロス『ビブリオテーケー』(ギリシア神話)によって今日のような形となりました。ヨーロッパの教養の源泉にして、今なお造語・造話の源泉として人々にインスピレーションを与え続けています。そして、そうしたイメージを強化するのに主たる役割を演じたのは「占星術」であり、何世紀にもわたって用いられ続けた結果、それは不動の存在となり、天文学もそこから誕生しました。

ギリシア哲学の出発点は「根元」(アルケー)~神話世界からの脱却は宇宙・万物の「根元」の追求(「存在論」「本体論」)から始まりました。

タレス「哲学の祖」「最初の哲学者」(アリストテレス)。万物の根源は「水」

アナクシマンドロス:万物の根源は「限定されないもの」ト・アペイロン)。

ヘラクレイトス:万物の根源は「火」「万物は流転する。」生成変化そのものが宇宙の実相であると説きました。

ピタゴラス:万物の根源は「数」ピタゴラスの定理三平方の定理)で知られます。ピュタゴラス派(教団)は天体の運行をはじめ、一切の自然現象が織り成す「調和」ハルモニア)を数学・幾何学のロゴスに求め、音楽理論もこの延長に打ち出しました。さらに「大宇宙」マクロコスモス)と「小宇宙」ミクロコスモス)としての人間を対比させ、新しい医学を切り開くと共に、死と再生を繰り返すディオニュソス信仰に基づくオルペウス教「輪廻転生説」を引き継ぐ「霊魂(プシュケー)論」も持っていました。

パルメニデス:南イタリアのエレアを拠点とするエレア学派で、万物の根源は「有るもの」「有るものは有る、有らぬものは有らぬ」「有るものはただ一にして一切の存在である」として、一切の運動変化を否定しました。プラトンの「イデア」論の原型とされますが、生成流転する自然に関する認識は一切虚妄というパルメニデスの呪縛を克服するためには、レウキッポスデモクリトスによる原子論の登場を待たなければなりませんでした。弟子のゼノン「アキレウスは亀に追いつくことができない」という逆説ゼノンのパラドックス)で有名です。

エンペドクレス:自然哲学者。火・土・空気・水の四元素で世界が成り立っているとしました。これは中国の五行木・火・土・金・水)論と通じる考えで、後に西洋占星術に取り込まれ、牡羊座・獅子座・射手座は火の星座、牡牛座・乙女座・山羊座は土の星座、双子座・天秤座・水瓶座は風の星座、蟹座・蠍座・魚座は水の星座といったカテゴリー化がなされたりしています。

デモクリトス:万物の根源は「原子」アトム)。原子の離合集散の物理的運動として、自然現象の一切を首尾一貫した理論に構成した原子論により、自然哲学は完成したとされます。

「宇宙論」から「宇宙科学」へ「宇宙論」という言葉が使われるのは、人間の体験できる範囲をはるかに超えた世界を扱うからで、宇宙に関して実験することも、再現することも、観察することも出来ないからです。これは生物の進化を扱う学問領域が進化学ではなく、「進化論」であるのと同じですが、最近では総合的・包括的な「宇宙科学」という言葉が一般的になってきました。

【参考文献】

『物理学の歴史』(竹内均、講談社学術文庫)

『宇宙像の変遷』(村上陽一郎、講談社学術文庫)

『神さまはサイコロ遊びをしたか 宇宙論の歴史』(小山慶太、講談社学術文庫)

『99.9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方』(竹内薫、光文社新書)

『宇宙の迷宮への挑戦 般若心経と最新宇宙論』(糸川英夫、青春出版社)



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「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~②」

(1)素朴なギリシア神話と星座の世界:神話学

天文暦学は「帝王の学」

「天文暦学(数)」「天命」を受けて、地上で政治を治める者を「天子」と呼び、天の変化を地上の人々に教える「天文暦学(数)」「天子の学」「帝王の学」「君主の学」でした。

「陰陽五行説」五行思想木・火・土・金・水の五元素で存在・生成・変化などを説明する理論で、エンペドクレスの火・土・空気・水からなる四元素論より緻密なものです。木生火(もくしょうか)、火生土、土生金、金生水、水生木という相生(そうしょう)理論と、木剋土(もくこくど)、土剋水、水剋火、火剋金、金剋木の相剋理論とがあります。さらに殷の甲骨文にも干支十干十二支)が見られますが、五行に陰陽を当てはめれば十干になり、甲(きのえ、陽木)・乙(きのと、陰木)・丙(ひのえ、陽火)・丁(ひのと、陰火)・戊(つちのえ、陽土)・己(つちのと、陰土)・庚(かのえ、陽金)・辛(かのと、陰金)・壬(みずのえ、陽水)・癸(みずのと、陰水)が出てきて、十二支(子・丑・寅・卯・辰・巳・午・未・申・酉・戌・亥)と合わせれば六十干支論となり、「丙午(ひのえうま)」という年号表記や60歳を還暦という概念はここから来ます。そして、『易経』に見られる太極両儀陰陽)→四象八卦の理論と合わせて、東洋運命学の根幹五行断易)を形成しますが、東洋運命学とは、天文暦学兵法学風水地理学などを含み、帝王学の一環とされてきたもので、東アジア世界全体に多大な影響を及ぼしてきました。

「兵法学」~単なる戦争技術ではなく、人間の本性に対する鋭い洞察に基づいて、勝負に関する行動の原則を探り出す学問であり、伝統的に帝王学の1つとされてきて、春秋戦国の諸子百家の時代には兵家思想として現れました。周王朝建国の功臣にして斉の地に封ぜられた太公望呂尚(りょしょう)の『六韜(りくとう)』、春秋時代斉の大司馬(だいしば、将軍)田穣苴(でんじょうしょ)の『司馬法』孫武『孫子』呉起『呉子』、秦の始皇帝に仕えた尉繚(うつりょう)の『尉繚子』、漢の高祖劉邦に仕えた軍師張良『三略』、唐の太宗李世民に仕えた名将李衛李靖)の『李衛公問対(りえいこうもんたい)』を特に「武経七書」兵法七書)と言います。

「諸葛亮、字は孔明、また道号を臥龍(がりょう)先生と称して、上は天文に通じ、下は地理民情をよくさとり、六韜(りくとう)をそらんじ、三略を胸にたたみ、神算鬼謀、実に世のつねの学徒や兵家ではありません。」(吉川英治『三国志』)

「『赤壁の戦い』は孔明側の圧勝であった。ここで関羽(劉備の義兄弟)を出陣させれば、主君・劉備は宿敵・曹操を葬ることができる。ところが、かつて関羽は、曹操に命を助けてもらった恩義があった。劉備は義に厚い関羽を出陣させるか否か大いに迷ったのである。もし、関羽が曹操を逃がしてしまうと兵たちの士気、処罰問題など難問が出てくるからだ。

 そのとき孔明は、劉備にこう進言した。

『なぜならば―です。私が天文を観じ人命を相するに、このたびの大戦に、曹操の隆運とその軍力の滅散するは必定でありますが、なおまだ、曹操個人の命数はここで絶息するとは思われません。彼にはなお天寿がある―故に関羽の心根に、むかし受けた曹操の恩に対して、今でもまだ報じたい情があるなら、その人情を尽くさせてやるもよいではありませんか』。」(吉川英治『三国志』)

【参考文献】

『物理学の歴史』(竹内均、講談社学術文庫)

『宇宙像の変遷』(村上陽一郎、講談社学術文庫)

『神さまはサイコロ遊びをしたか 宇宙論の歴史』(小山慶太、講談社学術文庫)

『99.9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方』(竹内薫、光文社新書)

『宇宙の迷宮への挑戦 般若心経と最新宇宙論』(糸川英夫、青春出版社)

『三国志』(吉川英治、六興出版)



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「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~③」

(1)素朴なギリシア神話と星座の世界:神話学

「宇宙論」とは「世界観」に他ならない

「渾天(こんてん)説」~古代中国天文学における宇宙構造論の1つです。天は鶏の卵殻のように球形であり、地は卵黄のようにその内部に位置し、天は大きく、地は小さいとします。天の表面・裏面には水があり、天と地は気に支えられて定立し、水にのって運行している。天の半分は地上を覆い、半分は地下を囲んでいます。このため二十八宿は半分が見え、半分が隠れて見えません。天の両端には南極北極の両極があり、天は極を軸として車のこしき(轂)のようにぐるぐる回転して端がありません。天体はこの天に付随して日周運動をしています。渾天説は赤道環・地平環・子午環といった環を組み合わせて天体を観測する渾天儀と呼ばれる観測器に基づいているのです。

「蓋天説」~古代中国天文学における宇宙構造論の1つです。大きく2通りの考え方があり、初めは天は円く広げられた傘のようであり、地は方形の碁盤のようであるとされ、後には天はドーム状(蓋笠)で、地はひっくり返した皿(覆槃)の形をしているとされました。天は石臼を挽くように北極を中心に左回転しており、太陽は右へ向かっていますが、天の回転に引っぱられて左回転します。蓋天説はノーモン(髀)による日影の観察に基づいたもので、周髀説(しゅうひせつ)ということもあります。数学書の『周髀算経』にも収められています。蓋天説では、天と地は平行しており、太陽や月が地下へ潜ったりする考え方はなく、南極という考え方もありません。このためが生じるのは、太陽が観察者の視界から遠く離れるためなどと説明されるのです。

「天円地方説」~天球は椀をかぶせたような構造であり、星はそこからぶら下がっています。地は東西南北の四方を持ち、その向こうには大海があって、果ては滝となっていて、そこへ行った者は誰も戻ってくることが出来ません。朱子学大義名分論はこれに基づき、江戸時代に南蛮文化として入ってきた「地球体説」がこれを突き崩していきました。山鹿素行「古学」三浦梅園らの「実学」も「地球体説」に立ちます。すなわち、中国を中心とした中華思想天命思想)・夷蛮思想東夷・西戎・南蛮・北狄)・冊封体制天円地方説が根拠になっているのに対し、地球体説に立てばどこが中心になってもよく、日本を中心とした独自の思想が発展してきたわけです。

「須弥山(しゅみせん)説」~『倶舎(くしゃ)論』世間品(せけんぼん)に出てくる仏教的宇宙観です。虚空の中に風輪が浮かび、その上に水輪、さらに金輪(こんりん)が乗っていて、金輪上の表面に山、海、島などが乗っています。水輪と金輪の境目は金輪際(こんりんざい)と呼ばれ、「もう金輪際いたしません」というような表現に使われます。ちなみに「金輪際」とは、「真底」「徹底的」を意味しています。そして、金輪の上には須弥山(梵語ではスメール、玄奘三蔵法師は妙高山と訳しました)を中心として9つの山と、その間に海があります。内側の7つは淡水の海で、外の大きなのが塩水の海で、この塩水の海の中に4つの島が浮かんでおり、東の島は半月形、南の島は台形、西の島は円形、北の島は正方形です。南の島が人間の住む世界で「閻浮提(えんぶだい)」「贍部州(せんぶしゅう)」と呼ばれ、これは「中国四大奇書」の1つである『西遊記』などにも出てきます。

 この須弥山の上に天上界があり、下から順に下天忉利天(とうりてん)となっており、ここまでの2つを地居天(じごてん)と言い、下天は四天王が住む所で、織田信長が出陣前に謡いながら舞った「人間五十年 下天(げてん)の内をくらぶれば 夢まぼろしの如くなり」の中にも出てきます。忉利天は帝釈天をはじめとする三十三天が住む所です。これより上を空居天(くうごてん)と言います。閻魔大王の拠点であった夜摩天弥勒菩薩が住む兜率天(とそつてん)、楽変化天他化自在天となっており、ここまでを六欲天と言い、欲界と言います。、さらにこの上に色界無色界と諸天が続きますが、いわゆる「三界に家なし」とはこの欲界、色界、無色界を指し、「この世界のどこにも身を落ち着ける場所がない」ことを言います。

「宇宙樹」「世界樹」「ユグドラシル」古ノルド語: Yggdrasill)とも呼ばれ、北欧神話に登場する「世界」を体現する巨大なであり、アイスランド語ではイグドラシル(イッグドラシル)と言います。その姿はトネリコの木を想起させますが、アースガルズミズガルズウートガルズヘルなどの異なる世界(9つの世界)を全て含んでいると考えられています。

 「ユグドラシル」という名前の由来には諸説あります。最も有力なものは「恐ろしい者の馬」すなわち「オーディンの馬」を意味しているという説で、Yggrはオーディンが持つ名前の1つです。3つの根が幹を支えており、それぞれアースガルド、ミッドガルド、ヘルに通じていて、アースガルドに向かう根のすぐ下に神聖なウルドの泉があり、ミッドガルドに向かう根のすぐ下にはミミルの泉があります。この木に住むリスラタトスクが、それぞれの世界の間に情報を伝えるメッセンジャーとなっている。ちなみに、ザクセン人がイルミンスール(ザクセン人の祖神イルミンの柱)という、同じような「世界樹」を崇拝していたことが、772にその木を切り倒したカール大帝の記録などから分かっています。

「天人相関説」マクロコスモスたる「宇宙」ミクロコスモスたる「人体」相関関係にあり、「占星学」などもこの原理に立ちます。東洋では儒教を国教・官学にした前漢の儒学者董仲舒が体系化しています。董仲舒は天地も人も共に陰陽に支配されており、人君の政治が乱れると天地の陰陽も乱れて災異が生じる、という理論を唱えたのですが、善政主義に立つ儒教においてこの災異説は有力で、「天意は民意に現われる」民の声は天の声)という理論と共に「天命思想」を支えました。

「創世記」は現代宇宙論・地球物理学と合致する

(1)第1日「光あれ」→昼、夜~ビッグバン、太陽系の形成

(2)第2日大空の上の水(天)、大空の下の水~原始地球は火の玉状態でしたが、やがて水蒸気が噴出して降雨時代が何億年も続き、海が形成されます。

(3)第3日海、地植物~海に原始生命体が出現し、造山活動によって陸地も形成されます。

(4)第4日大きい光る物(昼)、小さい光る物(夜)+星~植物が光合成を開始したことで大気圏が形成され、地上から星が見えるようになります。

(5)第5日魚類(両生類・は虫類)、鳥類~海の中に動物(魚類)が出現し、陸地に上陸するもの(両生類)も現われ、やがて多種多様な生物(は虫類、鳥類)が出現します。

(6)第6日獣・家畜、人間~哺乳類が現われ、後に家畜となる動物も出てきて、人間の誕生です。

(7)第7日休息、聖日~「安息日」の起源です。

【参考文献】

『物理学の歴史』(竹内均、講談社学術文庫)

『宇宙像の変遷』(村上陽一郎、講談社学術文庫)

『神さまはサイコロ遊びをしたか 宇宙論の歴史』(小山慶太、講談社学術文庫)

『99.9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方』(竹内薫、光文社新書)

『宇宙の迷宮への挑戦 般若心経と最新宇宙論』(糸川英夫、青春出版社)

『三国志』(吉川英治、六興出版)

『死後の世界の観光案内』(ひろさちや、ごま書房)

『聖書 新改訳』(日本聖書刊行会)



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「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~④」

(2)天動説から地動説への「コペルニクス的転回」:神学・哲学・科学

ダンテ『神曲』に見る「世界の構造」

アリストテレスの宇宙論~地球が中心にあって、月、水星、金星、太陽、火星、木星、土星、恒星群が同心球状に配置されます。

四原因論アリストテレスは、「可能態」デュミナス)が「現実態」エネルゲイア)へ変化するという「運動」キネシス)には、「質料因」「形相因」「始動因」「目的因」という4つの原因があるとします。石像製作を例にすると、「質料因」が石、「形相因」が像、「始動因」が彫刻家、「目的因」が石像を制作する意図にそれぞれ該当します。さらに「運動」の原因をさかのぼっていくと、その果てには「他を動かしても自らは決して動かないたった1つのもの」がいることになり、アリストテレスはこの存在を「不動の動者」「第一動者」と呼び、と見なしました

可能態デュナミス)~質料の中に形相が可能性として潜んでいる状態、潜勢

現実態エネルゲイア)~可能性が実現した状態、顕勢。可能態が十全に実現されるに至り、目的のうちにあるような有様が「完全現実態」エンテレケイア)と呼ばれます。アリストテレス哲学によってスコラ哲学(神学)を完成したトマス・アクィナスは、「自存する存在そのもの」としてのを、いかなる可能態も含まない「純粋現実態」として規定しました。

目的論的自然観~自然界の事象は一定の目的によって規定されているという見方。全ての運動は形相の実現を目的としているというアリストテレスの自然観が代表的です。

プトレマイオスの『アルマゲスト』(数学的集大成)『アルマゲスト』の宇宙論は大枠においてアリストテレスの宇宙論を継承しており、地球から観察される天体の様々な運動や現象を記述するために精巧極まりない数学的モデルを提案しています。このモデルに従う限り、天体の現象は非常に正確に再現出来たのです。このプトレマイオスによる数理天文学の包括的な専門書書で展開された天動説円運動に基づく天体の運行の理論は、それ以前のギリシア天文学書のほとんどに取って代わるものとなり、1000年以上にわたって数理天文学の基礎として中東およびヨーロッパで受け入れられました。内容としては天体の運行の幾何学的なモデルを中心に、観測や天体の位置の計算、必要とされる数学や簡単な宇宙論まで、天文学を運用するのに必要な知識を広く網羅し、体系的に解説しています。

 メソポタミアの天文学では日月食に関しては400年以上にわたるデータの蓄積があり、周期が詳しく調べられていました。また、新月の見える日の予測などと関係して、月と太陽の位置を計算する理論も作られています。プトレマイオスは、太陽と月の位置の理論の精度を上げ、日月食の予測もその理論の応用として導くことに成功したのです。

ダンテ『神曲』天国篇

(1)第一天月天)=誓願を全うしなかった魂が住む。

(2)第二天水星天)=活動的に善行をした魂が住む。

(3)第三天金星天)=恋に燃えた魂が住む。

(4)第四天太陽天)=知識人の魂が住む。トマス・アクィナスやボナヴェントゥラなど。

トマス・アクィナスドミニコ会修道士、パリ大学教授、スコラ哲学(神学)最大の神学者、『神学大全』。アリストテレス哲学を取り入れて教義を体系化し、信仰と理性の調和を図ろうとしました。「天使的博士」

ボナヴェントゥラ~トマス・アクィナスと同時代の人物で、フランシスコ会学派を代表する人物の一人とされ、当代の二大神学者と並び称されました。「熾天使的博士」

  1. 第五天火星天)=信仰のために戦った者の魂が住む。ヨシュアなど。

ヨシュア~ヘブライ人の指導者でモーセの後継者。モーセがカナーンを目前に没した後、人々を率いてヨルダン川を渡りイェリコを占領、ついで一帯の地を征服して12部族を定住させました。

  1. 第六天木星天)=地上で正義を行った者の魂が住む。ダヴィデなど。

ダヴィデ~羊飼いから身をおこして初代イスラエル王サウルに仕え、サウルがペリシテ人と戦って戦死した後にユダで王位に就くと、ペリシテ人を撃破し、要害の地エルサレムに都を置いて全イスラエルの王となり、40年間、王として君臨しました。伝統的に『詩篇』の作者の一人とされ、イスラーム教においてもノアアブラハムモーセダヴィデイエスムハンマド六大預言者として位置づけられています。

(7)第七天土星天)=地上で黙想を行なった者の魂が住む。ベネディクトゥスなど。

ベネディクトゥス~モンテ=カシノに修道院を建設し、ベネディクト派修道会を興した「西欧修道制の父」。ベネディクトゥスが定めた戒律はその後の修道会の規範として大きな影響を与え、7世紀頃には、全ての修道院においてベネディクトゥス戒律を準拠することが定められました。

(8)第八天恒星天双子宮)=勝利に輝く魂が住む。ペテロなど。

ペテロ~元漁師で、イエスを洗礼した洗礼ヨハネの弟子だったのが、弟アンデレと共にイエスに「人を取る漁師にしてあげよう」と声をかけられ、イエスの第一弟子となります。イエスは「あなたはペテロ(石)である。そして、私はこの岩の上に私の教会を建てよう。…私は、あなたに天国の鍵を授けよう」と述べており、天国の鍵を授けられた人物として、後に初代ローマ教皇と仰がれます。ゲッセマネの園での祈りでは、同じ三弟子であるヤコブヨハネと共にイエスに同行しますが、眠りに落ちてしまい、イエスが捕まった時には、イエスが最後の晩餐で「鶏が鳴く前に三度、私を知らないと言うであろう」と予言したごとく、イエスを三度否認して、その場を逃れます。イエスの十字架後、故郷のガリラヤ湖に戻って再び漁師になりますが、復活したイエスが湖面を歩いて来るのを見て、悔い改め、イエスのもとに馳せ参じます。後に皇帝ネロによりローマでの迫害が厳しくなった時、ローマから逃れてきたペテロが霊的イエスと出会い、「ドミネ・クォ・ヴァディス?」(主よ、いずこへ?)と問いかけますが、イエスが迫害のローマを逃れようとするペテロに代わってローマに行き、再び十字架にかかろうとするのを聞いて、ローマにそのまま戻り、殉教します。イエスと同じ十字架にかかっては申し訳ないからと、逆さはりつけになりました。

(9)第九天原動天)=神と天使達が住む。

(10)第十天至高天)=神と天使達と聖徒達が住む。

【参考文献】

『コペルニクス革命 科学思想史序説』(トーマス・クーン、講談社学術文庫)

『科学者とキリスト教 ガリレイから現代まで』(渡辺正雄、講談社BLUE BACKS)

『近代科学を超えて』(村上陽一郎、講談社学術文庫)

『世界文学大6 ダンテ』(野上素一訳、筑摩書房)

『ダンテ神曲物語』(野上素一訳著、現代教養文庫)

『キリスト教思想史入門』(金子晴勇、日本基督教団出版局)



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「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~⑤」

(2)天動説から地動説への「コペルニクス的転回」:神学・哲学・科学

「スコラ神学」と「ヒューマニズム」を脱却したコペルニクスの「地動説」

「スコラ神学」~神は2つの書物を書いたと考え、1つは「聖書」、1つは「自然」であるとしました。自然の中に神の合理性を読み取っていく行為と、聖書を読んで、そこに神の意志や計画を学ぶ行為とは結局同じものであり、宇宙の秘密を解き明かすことは聖書を読むのと同じだけの重要さを持つようになったのです。

「自由七科」「三学」「聖書」に関する基礎知識=文法・論理・修辞学)、「四科」「自然」に関する学問=天文学・算術・幾何学・音楽)→「教養」の中心。

「ヒューマニズム」「人文主義」「人間中心主義」「人道主義」はhumanitarianism)→ 「現実主義」「自然主義」

「近代科学」中世神学神本主義教会中心主義)→近世哲学人本主義人間中心主義)→近代科学物本主義物質中心主義

「地動説」~古くアリストテレスの時代から16世紀まで、地球は宇宙の中心にあり、周りの天体が動いているという「天動説が信じられてきました。もちろん、コペルニクス以前にも地球が動いていると考えた者はおり、例えばピロラオスは宇宙の中心に中心火があり、地球や太陽を含めて全ての天体がその周りを公転すると考えました。アリスタルコスは地球は自転していて、太陽が中心にあり、5つの惑星がその周りを公転するという、コペルニクスに近い説を唱えました。プラトン善のイデアである太陽宇宙の中心にあると考えていました。広い意味ではこれらも「地動説」太陽中心説)に入りますが、これらのどれでもなく、コペルニクスが「地動説」(太陽中心説)の創始者とされるのには理由があるのです。

まず第1には、コペルニクス以前の「地動説論者」が明確な軌道計算をしなかったこと、つまり、その説に従って未来や過去の惑星の位置を正確に予言できなかったことがあります。第2に、地球が動くのなら、鳥や雲が何故取り残されないのか、誰も地球を押していないのに、どうして止まらずに動き続けられるのか、というような多くの疑問に答えることができなかったことがあります。地球が動いているという明確な証拠を見つけ、他者を説得できない限り、現在の科学体系の上では説を立てたとはなかなか認められません。

こうした理由で16世紀に至るまでずっと、2世紀プトレマイオスが体系化した「天動説」が支持されてきました。プトレマイオスの体系ならば、多少の誤差はあっても惑星の動きを計算することができたし、地球は止まっているのだから、鳥が取り残されることも考えずに済んだのです。もちろん、「天動説」は当時からおかしな所はかなり多く含んでいました。例えば、5つの惑星の全ての軌道計算に必ず「1年」という単位が出てくること、惑星の順序が何故その順であるかという根拠の提示が不明瞭であること、などがあり、惑星の位置予報にも誤差がありました。しかし、さらにそれらの説明までし尽くし、精密な惑星の位置予報のできる新説はなかなか現れなかったのです。

「天動説」の体系の様々なほころびが明確化するのは大航海時代 です。この時代、航海術が大きく変わりましたた。それまでの航海は沿岸航海で、陸地の見える場所しか船を運航しませんでした。したがって、何も目印のない大海原では行き先が分からず、航海もできなかったのです。やがて、羅針盤がそれを可能にし、磁石と正確な星図があれば遠洋でも自分の緯度が正確に把握できるようになりました。しかし、当時の星表には問題がかなりあり、特に惑星の位置は数度単位での誤差が常にあったのです。

さらにもう1つの問題が生じつつあり、1年の長さが当時使用されていたユリウス暦の1年よりわずかに短かったのです。この結果、暦の上の季節と実際の季節に約10日のずれが生じていました。キリスト教では春分の日が移動祝祭日の計算基準日になっており、10日もずれているのは問題がありました。この問題はロジャー・ベーコンによって提起されていましたが、1年の正確な長さが分からず、300年間放置されていたのです。当時使われていた「1年」(回帰年)の定義は、メソポタミア時代から現代に至るまでも根本的には変わらないものですが、「分点」または「至点」(春分、秋分、冬至、夏至のいずれか)から次の同じ「分点」または「至点」までの時間です。しかし、16世紀当時に信じられていたプトレマイオス体系では、「1年」という値は他の天文学的な値からは孤立した独立の量で、太陽の位置を数十年から数百年以上かけて測定する以外に、「1年」の値を決定する方法がありませんでした。クーンによれば、この観測には大変な困難が伴い、改暦問題は16世紀以前の天文学者たちを常に悩ませることになったのです。

カトリック の司祭であったコペルニクスにとって、正確でない「1年」の長さが使われ続けることは重大な問題でしたが、それは主に宗教的な理由からでした。コペルニクスは「地動説」を新プラトン主義の太陽信仰として捉えていたとも言われています。コペルニクスはアリスタルコスの説を参考にして太陽を中心に置き、地球がその周りを1年かけて公転するものとして、1恒星年を365.25671日、1回帰年を365.2425日と算出しました。ここで1年の値が2種類あるのは、1年の基準を太陽の位置にとるか、他の恒星の位置にとるかの違いによります。1543、その測定方法や計算方法を全て記した著書『天体の回転について』を刊行したのですが、誰でも同じ方法で「1年」の長さや各惑星の公転半径を測定し直せるようにしたことが、コペルニクスを「地動説」の創始者とする理由なのです。

この後、ローマ教皇グレゴリオ13世によって1582グレゴリオ暦が作成されますが、改暦の理論にはコペルニクスの「地動説」は利用されていません(ただし、プトレマイオスの「天動説」も使われていません)。しかし、コペルニクスが著書で初めてラテン語で紹介したアラビア天文学の月の運行の理論や算出した1年の値は、改暦の際に参考にされています。ちなみにコペルニクスの月の運行理論は、アラビアとは独立に再発見したという説もあります。

コペルニクスの「地動説」は、単に「天動説」の中心を地球から太陽に位置的な変換をしただけのものではありません。「地動説」では、1つの惑星の軌道が他の惑星の軌道を固定しています。また、全惑星(地球を含む)の公転半径と公転周期の値が互いに関連しあっています。各惑星の公転半径は、地球の公転半径との比で決定されるのです(実際の距離は、この時代にはまだ分からないのですが)。同様に、地球と各惑星の距離も算出できます。これがプトレマイオスの「天動説」との大きな違いであり、プトレマイオスの「天動説」ではどんな形でも惑星間の距離を測定することは出来なかったのです。また、「地動説」では各惑星の公転半径、公転周期は全惑星の値がそれぞれの値と関連しているため、どこかの値が少しでも変わると、全体の体系が全て崩れてしまいます。これもプトレマイオスの「天動説」にはない大きな特徴であり、一部分でもわずかな変更を認めない体系が出来上がったことが、コペルニクスにこの説が真実だと確信させた理由だと考える研究者も多いのです。

コペルニクスの「地動説」では、惑星は太陽を中心とする円軌道上を公転し、惑星は太陽から近い順に水星、金星、地球、火星、木星、土星の順です(この時代、天王星や小惑星はまだ発見されていません)。公転周期の短い惑星は太陽から近くなっています。ただし、実際には単純な円軌道だけでは各惑星の細かい動きの説明がつかず、コペルニクスの著書では、プトレマイオス説でも使われていた離心円が運動の説明に使われました。天動説では、月や惑星の運動の不規則性を説明するため、それらの円軌道の中心は地球中心から少し離れたところにあると考えました。この円を離心円と言い、ヒッパルコスが惑星の運動の説明に用い、プトレマイオスの宇宙体系にも採用されたのです。実際には惑星の軌道が真円ではなく楕円であるため、単純な円では運動の説明がつかなかったためですが、コペルニクスは惑星の運動がいくつかの円運動の合成で説明できると信じていたため、楕円軌道に気付くことはありませんでした(実際にはコペルニクスの使った値の精度は悪く、どちらにしても楕円軌道を発見することは困難でした)。

コペルニクスの時代、「天動説」で説明し切れないような天文現象はほとんど存在しませんでした(ときおり観測された彗星を除きます)。現代科学では主に説明のしきれない現象を説明するために新たに学説が登場するのですが、コペルニクスの説の登場の仕方は明らかにその後の科学体系の構築の手順とは異なっているのです。

【参考文献】

『コペルニクス革命 科学思想史序説』(トーマス・クーン、講談社学術文庫)

『科学者とキリスト教 ガリレイから現代まで』(渡辺正雄、講談社BLUE BACKS)

『近代科学を超えて』(村上陽一郎、講談社学術文庫)

『世界文学大6 ダンテ』(野上素一訳、筑摩書房)

『ダンテ神曲物語』(野上素一訳著、現代教養文庫)

『キリスト教思想史入門』(金子晴勇、日本基督教団出版局)



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「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~⑥」

(2)天動説から地動説への「コペルニクス的転回」:神学・哲学・科学

「客観的法則の発見」という「パラダイム・シフト」

神の「完全性」「全知全能性」にこだわったスコラ神学の矛盾「信仰的実存」(初期教会次代)から理性主義的傾向が強まっていき(ハルナック「福音のヘレニズム化」)、「三位一体論」「キリスト論」論争でその傾向が決定的になった上で(「公会議」による「ニカイア・コンスタンティノポリス信条」「カルケドン信条」の決定→「正統」と「異端」の分岐点になりました)、「信仰と理性の調和」(中世スコラ神学)に至りました。こうした「神中心的理性主義」(本質的には「神」の名を掲げた「人間中心主義」です)は「良心」「直観」「常識」「愛」「情緒」といったものを圧するほどの力を持ち、これは中世カトリック時代のみならず、プロテスタント以後も再三現われたのです(魔女狩り、ファンダメンタリズムなど)。

三位一体論~父なる神・子なるイエス・聖霊は一体であるという考え。アタナシウス派が唱え、325年のニカイア公会議で正統な教義と認められました。これに疑義を唱えたアリウス派は異端とされ、ローマ帝国周辺のゲルマン民族に布教していきました。三位一体説には、イエス自身がゲッセマネの祈りで神に痛切祈祷を捧げているように、「神が自分自身に祈るのか」といった問題や、神が十字架につくという「天父受苦説」といった問題がありますが、これは「罪人を救えるのは全知全能である神のみ」という贖罪論的要請から生まれたもので、イエス自身の言説にあるものではありません。ニカイア公会議で採択され、コンスタンティノポリス公会議で修正されたものをニカイア・コンスタンティノポリス信条と言います。これによってイエス=神という図式が確立され、さらにイエスにおいて神性と人性はどのように統合されているのかというキリスト論の問題が起こり、カルケドン公会議において、イエスにおいて神性と人性は一体不可分というカルケドン信条が採択されました。ちなみに、エフェソス公会議でもキリスト論が問題となり、イエスにおける神性と人性を分離し、マリア「神の母」ではなく、「人の母」としたネストリウス派が異端とされたので、ネストリウス派はシリアから東方に伝わり、唐代中国に至って景教(秦教)と呼ばれるようになり、大秦景教流行中国碑(大秦=ローマ)に記録されているように、祆教(けんきょう、ゾロアスター教拝火教)、摩尼教マニ教明教)と共に西方伝来の三夷教として栄えます。かくして、このニカイア・コンスタンティノポリス信条とカルケドン信条を受け入れるものが正統、疑義をさしはさむのが異端とされてきました。キリスト教における正統か異端かは、実はイエスの言説に合致するかどうかではなく、宗教会議で神学的に決定されてきたのです。

「理性的自律」を中核にすえた近世・近代哲学ヒューマニズム神と人を「分離」し、人間を「自立」させました。これは「神」の名・飾りも取り払った「人間中心的理性主義」と言ってもよいでしょう。ティリッヒは中世「他律」の時代、近代「自律」の時代と位置付けています。

神学・哲学を脱却した近代科学神からも人からも独立した宇宙・自然の「客観的法則」の発見がテーマとなりました。神中心の神学とも、人間の主観とも無関係な、物自体の客観的法則(自然法則。再現性予測性があり、実験観察によって「仮説」が検証出来ます)を追求する「自然中心的理性主義」「自然科学」が成立しました。これは「社会科学」「社会中心的理性主義」)にも応用され、「社会的事実」フェー・ソシアール。デュルケームによる)の探究・解明が進められたのです。

コペルニクス~ポーランドの天文学者、『天球の回転について』。中世を通じて、アリストテレス、プトレマイオスの天動説がキリスト教の宇宙観になっていたのに対し、ピタゴラス派の主張を受けて地動説を完成させました。

ガリレイ~イタリアの数学者・物理学者、『天文対話』。宇宙や自然を「第二の聖書」と考え、仮説を実験によって実証し、数学的に論証することで近代科学の方法を創始し、宗教と科学を分離します。天文学・力学分野で実験をもとに慣性の法則自由落下の法則落体の法則)を発見し、近代物理学の基礎を築きました。また、『天文対話』で地動説を支持しましたが、宗教裁判にかけられて自説を撤回しました。

ケプラー~ドイツの天文学者。ティコ=ブラーエの天体観測によって得られた精密な観測値に基づき、惑星が楕円軌道を描くという法則を発見して、伝統的な宇宙観に変更を迫りました。

ケプラーの3法則~①第一法則楕円軌道の法則)~惑星は太陽を1焦点とする楕円軌道を描く。

第二法則面積速度の一定の法則)~惑星と太陽を結ぶ直線は等しい時間に等しい面積を描く。

第三法則調和の法則)~任意の2惑星の公転周期の2乗は太陽からの平均距離の3乗に比例する。

ニュートン~イギリスの数学者・物理学者・天文学者、『プリンピキア(自然哲学の数学的諸原理)』。地上から天体までのあらゆる自然現象の運動を統一的に説明し得る根本原理(運動の法則万有引力の法則)を発見することで古典力学を確立し、近代的な自然哲学を構築機械論的自然観(⇔目的論的自然観)に道を開きました。

ニュートンの運動の3法則~①運動の第一法則慣性の法則)~物体に外部から力が働かない時、またはいくつかの力が働いてもそれらの力がつりあっている時は、止まっている物体はいつまでも静止を続け、動いている物体は等速直線運動を続ける。

運動の第二法則運動方程式)~物体に力が働くと、力の向きに、力の大きさに比例した速度の変化である加速度を生じる。

運動の第三法則作用反作用の法則)~物体Aから物体Bに力を働かせると、物体Bから物体Aに、同じ作用線上で、大きさが等しく、向きが反対の力が働く。

目的論的自然観~自然界の現象は一定の法則によって規定されているという見方。

機械論的自然観~自然を機械のような存在としてとらえ、自然界の事象を物理的な因果関係のみによって説明する見方。デカルトの物心二元論やニュートンの力学はこの立場に立ち、ここから自然の支配・利用が進みました。

【参考文献】

『コペルニクス革命 科学思想史序説』(トーマス・クーン、講談社学術文庫)

『科学者とキリスト教 ガリレイから現代まで』(渡辺正雄、講談社BLUE BACKS)

『近代科学を超えて』(村上陽一郎、講談社学術文庫)

『キリスト教思想史入門』(金子晴勇、日本基督教団出版局)



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「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~⑦」

(3)「宇宙に始まりがある」ことの衝撃:天文学・数学

「宇宙の果てはどうなっている?」「宇宙の外には何がある?」という積年の疑問

等級~恒星の明るさを示す。基準となるベガを0等星とし、光の強さが0等星の100分の1となる星を5等星とします。また、地球上から見た時の天体の明るさを見かけの等級と言い、全ての星を我々から同じ距離10パーセク(=32.6光年、1光年は光が1年間に進む距離)に置き直した時の明るさを絶対等級と言います。

ヘルツシュプルング・ラッセル図HR図)~多くの恒星を記入した図です。

主系列星~HR図の左上から右下に走る線上に並ぶ多くの星です。核融合反応でヘリウムが中心部にたまり、ヘリウム中心核が形成されていきます。

巨星~HR図で、主系列から外れて図の右上に集まる一群の星です。太陽質量程度の星です。

白色わい星~HR図で、主系列の左下に位置する星を言います。太陽質量の半分以下の星です。

連星~2つの恒星が互いの引力で引き合い、その共通重心の周りに公転している2つの星です。明るく見える方を主星、暗く見える方を伴星(ばんせい)と言い、地球から見て、一方の星が他方を隠す食現象が起き、明るさが周期的に変化するような連星を食変光星と言います。

質量光度関係~質量の分かった主系列星について、質量を横軸に、絶対等級を縦軸に取って、点を記入したものです。

星間物質星間ガス星間塵(じん)。

星間雲~粒子密度が周りより20~1000倍高いガスの塊。さらに分子を形成している星間雲を分子雲と言います。星間雲が明るい恒星を光を受けて照らされると散光青雲として見られ、散光青雲の手前に星間雲があって散光青雲の光を隠すと、暗黒星雲として見られます。

原始星~可視光では見えませんが、赤外線では見ることができる赤外線星です。

変光星~進化の途中段階で脈動的に膨張と収縮を繰り返し、明るさが時間と共に変わる星です。変光周期が1~50日のセファイド型変光星や1日以下のこと座RR星型変光星などがあります。

新星白色わい星がわずか数日で1万倍も明るくなり、絶対等級が-5~-8等に達した後、ゆるやかに減光して元に戻ります。

超新星~質量が太陽の約10倍もある重い恒星の最終段階です。新星よりも激しく急に1億倍以上に明るくなり、絶対等級が-14~-19等にも達します。

中性子星超新星爆発により中心部が超高密度となって誕生します。パルス状の光や電波を放射する星をパルサーと言う。

ブラックホール~質量が太陽の30倍以上ある恒星の場合、収縮が続いて重力はますます大きくなり、ついには自身の光さえも外部空間に出られなくなります。

散開星団天の川に沿って見られ、星間雲と共存していることが多いです。若い星で種族Ⅰ第一種族と言います。

球状星団~直径約100光年の球状の空間に、10万~1000万個の星が密集した集団。老齢の星で種族Ⅱ第二種族と言います。

ハロー~銀河系全体をほぼ球状に包む直径15万光年の領域です。

バルジ~銀河系の中心部にある直径約2万光年の球状の部分です。

円盤部~直径約10万光年、太陽系はここにあります。

クェーサー~見かけ上はほとんど恒星としか見えませんが、そのスペクトルの吸収線が赤の方に大きくずれている(赤方偏移している)天体です。

局部銀河群~より大きな銀河の集団としては銀河団があります。

泡構造~銀河の分布構造です。

ハッブル・ルメートルの法則~遠くの天体ほど,その距離に比例して早く遠ざかっているという法則です。銀河の後退速度vH0-rH0は宇宙の膨張率を表す比例定数で、ハッブル定数と言います。rは銀河までの距離です。

ビッグバン膨張宇宙の最初期は超高温、高密度で、そこから大爆発が起きて、今日の宇宙が出発したと考えられています。

「閉じた宇宙」と「開いた宇宙」~結果としてこうなのか、最初からこうなのか。

膨張する我々の宇宙がこの先どのような運命をたどるかは、アインシュタイン方程式の解である宇宙モデルによって異なります。一般に、一様等方という宇宙原理を満たすような宇宙モデルには、空間の曲率が0の「平坦な宇宙」、曲率が正の「閉じた宇宙」、曲率が負の「開いた宇宙」の3通りが可能です。

「平坦な宇宙」か「開いた宇宙」であれば宇宙は永遠に膨張を続けますが、「閉じた宇宙」であればある時点で膨張が収縮に転じ、やがて大きさ0につぶれます(ビッグクランチ)。2005時点での最新の観測結果によれば、宇宙は平坦な時空であり、このまま引き続き広がり続け、止まることはないと考えられています。宇宙が平坦であり、永遠に膨張を続けるということは、最終的に宇宙は絶対零度に向かって永遠に冷却し続けることを意味します(現在は3K、-270℃程度だと言われています)。

時間・空間が誕生する以前に「時系列」を適用してしまうという過ち~「宇宙」創成以前は「有りて有る」世界としか言いようがないのです。このため、時間・空間が誕生する以前に「時系列」を適用することはできないわけですが、いわゆる「輪廻宇宙論」はこの過ちをおかしています。聖書に神は「有りて有る者」として出てきますが、時間・空間も全てそこから出発したとしたら、まさにそのような表現をするしかないでしょう。

【参考文献】

『よくわかる宇宙論 ニュートンの無限宇宙からホーキングの最新理論まで』(金子隆一、日本文芸社)

『相対論的宇宙論 ブラックホール・宇宙・超宇宙』(佐藤文隆・松田卓也、講談社BLUE BACKS)

『「量子論」を楽しむ本 ミクロの世界から宇宙まで最先端物理学が図解でわかる!』(佐藤勝彦監修、PHP文庫)

『ノーベル賞で語る20世紀物理学 極微の世界から宇宙まで』(小山慶太、講談社BLUE BACKS)

『光で語る現代物理学 光速Cの謎を追う』(小山慶太、講談社BLUE BACKS)

『超光速粒子タキオン 未来を見る粒子を求めて』(本間三郎、講談社BLUE BACKS)



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「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~⑧」

(3)「宇宙に始まりがある」ことの衝撃:天文学・数学

「定常宇宙論」にトドメを刺した「ビッグバン宇宙論」の進展

「膨張宇宙論」→「ビッグバン宇宙論」→「インフレーション宇宙論」~仏教的「輪廻宇宙論」「定常宇宙論」は成立しない。

「ビッグバン理論」は観測と理論の両面の動機から生まれました。観測的には、多くの渦巻星雲が地球から遠ざかっていることが知られていましたが、当初これらの観測を行った研究者たちはその宇宙論的な意味に気づいておらず、これらの星雲が実際に我々の天の川銀河の外にある銀河であるということも分かっていませんでした。1927にベルギーのローマ・カトリック教会の司祭であったジョルジュ・ルメートルは一般相対論のフリードマン・ロバートソン・ウォーカー計量に従う方程式を独自に導き出し、渦巻銀河が後退しているという観測結果に基づいて、宇宙は原始的原子(primeval atom)の「爆発」から始まったというモデルを提唱しました。これが後に「ビッグバン」と呼ばれるようになったのです。

1929エドウィン・ハッブルがルメートルの理論に対する観測的な基礎付けを与えました。彼は地球に対して銀河があらゆる方向に遠ざかっており、その速度は地球から各銀河までの距離に比例していることを発見しました。この事実は現在、「ハッブル・ルメートルの法則として知られています。ここで、宇宙は十分に大きな距離スケールで見れば特別な方向や特別な場所を持たないという宇宙原理を仮定すると、「ハッブル・ルメートルの法則」は我々の宇宙が膨張していることを示唆していることになります。

このアイデアを説明するモデルとして、対立する二つの可能性が考えられました。一つはルメートルの「ビッグバン理論」で、ジョージ・ガモフがその説を支持し、発展させました。もう一つの可能性はフレッド・ホイル「定常モデルです。このモデルでは銀河が互いに遠ざかるに従って新しい物質が生まれ、これにより宇宙の物質密度が一定に保たれるとします。このモデルでは宇宙はどの時刻でも大まかには同じように見えることになります。ルメートルの理論にビッグバン(Big Bang)という名前を付けたのはホイルで、1949 BBC のラジオ番組 The Nature of Things の中で彼がルメートルのモデルを "this 'big bang' idea" とからかうように呼んだのが始まりであるとされています。

長年にわたって、これら両理論に対する支持は真っ二つに割れていました。しかし、やがて、宇宙が高温高密度の状態から進化したというアイデアを支持する観測的な証拠が挙がってきました。1965宇宙マイクロ波背景放射の発見以降は、「ビッグバン理論」は宇宙の起源と進化を説明する最も良い理論であると考えられており、現在の宇宙論の研究はそのほとんど全てが基本的な「ビッグバン理論」の拡張や改良を含むものです。現在行なわれているほとんどの宇宙論の研究には、ビッグバンの文脈で銀河がどのように作られたかを理解することや、ビッグバンの時点で何が起きたかを明らかにすること、観測結果を基本的な理論と整合させることなどが含まれています。

「ビッグバン宇宙論」の分野では1990年代の終わりから21世紀初めにかけて、望遠鏡技術の大発展とCOBEハッブル宇宙望遠鏡WMAPといった衛星から得られた膨大な量の観測データとが相まって、非常に大きな進展が見られました。これらのデータによって、宇宙論研究者は「ビッグバン理論」のパラメータを今までにない高い精度で計算することが可能になり、これによって宇宙が加速膨張しているらしいという予想外の発見がもたらされました。

ビッグバン理論では、宇宙は極端な高温高密度の状態で生まれたとされます。その後、空間自体が時間の経過とともに膨張し、銀河はそれに乗って互いに離れていきます。

COBE(コービー)~1989年に打ち上げられたアメリカの人工衛星で、宇宙背景放射探査機(Cosmic Background Explorer)の頭文字を取ってCOBE衛星と呼ばれました。COBEの成果によって、宇宙論は頭のなかで考えるものから観測データを基に議論する「精密科学」に変わったとされ、宇宙の進化を研究するスティーブン・ホーキング博士は、COBEの成果を「20世紀最大の発見」と呼んでいます。

 宇宙は高温の火の玉で始まったというのがビッグバン理論によれば、その時に宇宙に満ちていた電磁波は宇宙の膨張と共に変化し、今は波長の長い電波になっており、これを宇宙背景放射と呼びます。これは光で見える宇宙最古の姿「宇宙最古の写真」と呼ばれ、1964年に電波雑音として発見されましたが、大気に吸収されるため、地上での観測には限界がありました。米航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙飛行センターのジョン・マザー上席研究員と米カリフォルニア大バークリー校のジョージ・スムート教授は、1989年に打ち上げられた宇宙背景放射観測衛星「COBE(コービー)」を使って、あらゆる方向からやってくる宇宙の電波を詳細にとらえました。その結果、宇宙背景放射が絶対温度約3度(零下約270度)であることや、この温度は方向によりわずかにゆらぎがある(異方性温度ゆらぎ)ことを明らかにし、これでビッグバン理論は揺るぎないものとなり、火の玉から現在の宇宙に進化してきた過程の理解が大きく進んだのです。初期の温度ゆらぎがあったから宇宙の物質密度が不均一になり、星や銀河が生まれたと考えられています。2人はこの成果から2006年にノーベル物理学賞を受賞しています。

ハッブル宇宙望遠鏡 ~1990年にスペースシャトル・ディスカバリー号によって打ち上げられた、地上約600km上空の軌道上を周回する宇宙望遠鏡で、地球の周回軌道にのせられた望遠鏡の中では一番成功を収めたものだとされ、現代の天文学に革命をもたらし続けていると言われています。ハッブル宇宙望遠鏡によって得られた重要な科学成果としては以下のようなものが挙げられます。

①宇宙膨張とその加速の度合いを測定。

②超大質量ブラックホールがほぼ全ての銀河中心に存在することを発見。

③太陽系外惑星の大気の特徴を解明。

④太陽系の様々な惑星で生じる気象現象を観測。

⑤宇宙年齢の97%もの時間をさかのぼり、恒星と銀河の誕生・進化の年代を調査。

WMAP~2001年にアメリカ航空宇宙局 (NASA) が COBE の後継機として打ち上げた宇宙探査機ウィルキンソン・マイクロ波異方性探査機(Wilkinson Microwave Anisotropy Probe、「ウィルキンソン」「宇宙背景放射観測の父」と呼べる人物の名前)で、その任務はビッグバンの名残の熱放射である宇宙マイクロ波背景放射 (CMB) の温度を全天にわたってサーベイ観測することです。こうしたWMAPの観測データにより、宇宙年齢が137億歳と精度良く求まり、さらに光子が電子に邪魔されずに進めるようになった「宇宙の晴れ上がり」の時点である宇宙年齢38万歳の宇宙の姿が明らかになってきました。また、現在の宇宙の大半を占めているダークマターダークエネルギーの正体を解き明かす上で貴重な鍵となるとされています。

宇宙年齢38万歳の時点において、宇宙ニュートリノが宇宙の組成の10%を占めており、他に原子12%、光子15%、ダークマター暗黒物質)63%だったということが示されました。

宇宙の暗黒時代が終わった時期が示唆されました。電子が自由を奪われ、光子が直進できるようになった「宇宙の晴れ上がり」の時点から、宇宙最初の世代の星が誕生し、その放射により周囲の原子から電子が再び自由になって「宇宙の霧」となるまでには、4~5億年はかかったとされます。

③急激な加速膨張で宇宙の平坦性などを説明するインフレーション宇宙モデルに関して、観測データから制約条件を課すことができることです。現在仮説として乱立している様々理論は淘汰が進み、整理されていくと見られています。

【参考文献】

『よくわかる宇宙論 ニュートンの無限宇宙からホーキングの最新理論まで』(金子隆一、日本文芸社)

『相対論的宇宙論 ブラックホール・宇宙・超宇宙』(佐藤文隆・松田卓也、講談社BLUE BACKS)

『「量子論」を楽しむ本 ミクロの世界から宇宙まで最先端物理学が図解でわかる!』(佐藤勝彦監修、PHP文庫)

『ノーベル賞で語る20世紀物理学 極微の世界から宇宙まで』(小山慶太、講談社BLUE BACKS)

『光で語る現代物理学 光速Cの謎を追う』(小山慶太、講談社BLUE BACKS)

『超光速粒子タキオン 未来を見る粒子を求めて』(本間三郎、講談社BLUE BACKS)



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「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~⑨」

(3)「宇宙に始まりがある」ことの衝撃:天文学・数学

「複素数」の概念が「時間・空間」の観念を大きく変えた

「虚数時間」「虚数空間」とは何か~アインシュタイン的「時空」論から「複素数時空」論へ。

かつてニュートンは時間と空間は絶対的なものであるとしました。物理現象が起きる入れ物と考えたのです。しかし、アインシュタイン相対性理論の中で時空とは入れ物ではなく物理的な対象である、と考えました。具体的には、以前は独立に存在すると考えられていた時間と空間が実際はローレンツ変換によって入り混じることが分かり(「特殊相対性理論)、これによって物理学の扱う空間は3次元から4次元の時空となり、物理法則も修正を受けたのです。さらに「一般相対性理論によって、時空は物質の存在によって歪むことが指摘されました。理論物理学的立場からすれば、「時空」は「重力」であり、「事象同士の関係」ということなのです。

また、現代物理学における最大の焦点の一つとして「時空の量子化がありますが、不確定性原理によると、短い時間であれば真空からエネルギーを借りることが出来ます。そのエネルギーが十分大きければ、ブラックホールを形成し、時空は穴だらけになってしまいます。この描像を「時空泡」(space-time foam)と呼びます。この穴の大きさは「プランク長程度、存在時間は「プランク時間程度になります。このぐらいのスケールでは、一般相対論的効果と量子効果が共に大きくなり、時空の量子化の問題は避けられません。このエネルギーがアインシュタイン方程式「宇宙項そのものであると考えられていますが、値を評価すると観測値と120桁ほどずれてしまいます。これは現代宇宙論・素粒子論をとりまく最大の謎の1つなのです。

「プランク時間」~測定することのできる最小の時間で、光子が光速度でプランク長に等しい距離を通過するのに必要な時間です。プランク時間は物理的に何らかの意味のあるものとして計測することのできる最小の時間であり、いわば「時間の量子です。

無境界仮説 ~ビッグバン宇宙提唱後も,宇宙は収縮と膨張を繰り返してきたのではないかと考えられてきましたが、ホーキングペンローズが1970年に、「現在の宇宙膨張の事実を認める限りにおいては、宇宙は必ず特異点からはじまらなければならない」という「特異点定理」を数学的に証明し、それによって「宇宙の始まり」が科学によって議論されることになりました。

量子力学によると、「無」の状態においてもエネルギーは揺らいでおり、そのエネルギーの揺らぎにより、宇宙は創生されたとされます。この時の宇宙の生成は「量子力学的トンネル効果」によって説明されますが、ファインマンの経路積分法によれば、トンネル効果において(今我々が感じている時間を「実数時間」としたならば)時間は虚数になっており、ホーキングはこのことから「無境界仮説」を唱えました。

これは「時間は宇宙の始まりにおいては虚数であった」とする仮説であり、時間が虚数ならば相対論的には時間と空間の区別がなくなり、それゆえ、時空を閉じたものとして考えることが出来るため、3次元球上の2次元曲面(たとえば地球表面)のように端が無い(すなわち、境界が無い)時空を考えることが出来るというのです。そうすると、地球上において「北極より北」というものを考えることが無意味なように、時空においても「時間が始まる前」というものを考えることが無意味となります。ホーキングはそのような「虚数時間」こそが「真の時間」だと言い、こうしてホーキングは自ら証明した特異点定理をうまく避けるようにして時間の始まりを議論することに成功したのです。

【参考文献】

『よくわかる宇宙論 ニュートンの無限宇宙からホーキングの最新理論まで』(金子隆一、日本文芸社)

『相対論的宇宙論 ブラックホール・宇宙・超宇宙』(佐藤文隆・松田卓也、講談社BLUE BACKS)

『「量子論」を楽しむ本 ミクロの世界から宇宙まで最先端物理学が図解でわかる!』(佐藤勝彦監修、PHP文庫)

『ノーベル賞で語る20世紀物理学 極微の世界から宇宙まで』(小山慶太、講談社BLUE BACKS)

『光で語る現代物理学 光速Cの謎を追う』(小山慶太、講談社BLUE BACKS)

『超光速粒子タキオン 未来を見る粒子を求めて』(本間三郎、講談社BLUE BACKS)



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「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~⑩」

(4)相対性理論と量子力学が統一される初期宇宙:物理学

マクロな重力理論である「相対性理論」の登場

ニュートンの「無限宇宙論」~時間・空間は宇宙のどこでも均一で、伸び縮みしないという「絶対時間」「絶対空間」と宇宙のどこにも特別な立場を認めない「相対性の原理」が前提となっています。かくして宇宙は無限の彼方にまで広がり、その全ては「万有引力」「ニュートン力学の法則」「慣性の法則」「加速度の法則」「作用・反作用の法則」)によって支配されていることになります。

アインシュタインの「重力場理論」「相対性の原理」「光速度不変の原理」を前提とした4次元「時空」論です。「一般相対性原理「一般共変性原理「等価原理を理論的な柱とし、「リーマン幾何学数学的土台として構築された、古典論的な重力場の理論であり、古典物理学の金字塔です。測地線の方程式アインシュタイン方程式重力場の方程式)が帰結です。この理論では、アイザック・ニュートンが発見した万有引力はもはやニュートン力学的な意味でのではなく、時空連続体歪みとして説明されます。

相対論によれば空間は時空連続体であり、「一般相対性理論」では、その時空連続体が均質でなく歪んだものになります。つまり、質量が時空間を歪ませることによって、重力が生じると考えるのです。そうだとすれば、大質量の周囲の時空間は歪んでいるために、光は直進せず、また、時間の流れも影響を受けます。これが重力レンズ時間の遅れといった現象となって観測されることになるわけです。また、質量が移動する場合、その移動にそって時空間の歪みが移動・伝播していくために重力波が生じることも予測されます。

光速度不変の原理光の速度は等速度運動をする全ての観測者(慣性系)に対して一定の値を持つという原理です。特殊相対性理論の基本原理です。「止まっている人から見ても、光速に近い速さで移動している人から見ても、光の速さは等しく秒速30万kmで進んでいる」ということであり、1887年のマイケルソンとモーリーの実験で確かめられていました。、これで時間と空間とを区別して考えることはできなくなり、時間と空間を一緒にした時空を考える必要が出てきました。また、運動する物体の速さの上限が光の速さであることが分かりました。

一般相対性原理全ての座標系において物理法則は同じ形で表現されるという原理です。慣性系間の座標変換に関する命題である特殊相対性原理を、一般相対性理論の対象である重力場を含む加速度系についても適用できるように拡張したものとして提案されました。

一般共変性原理一般相対性原理をより数学的に具体的に拡張した主張で、物理法則は、全ての座標系において同じ形式でなければならない、あるいは一般座標変換によって物理法則は不変であるという原理です。

等価原理~外部を観測出来ない箱の中の観測者は、自らにかかる力が箱が一様に加速されるために生じている慣性力なのか、箱の外部にある質量により生じている重力なのか、を区別することできないという主張です。「一般相対性理論」慣性質量と重力質量は同じであるとする等価原理のアイデアに基づいています。

リーマン幾何学非ユークリッド幾何学の一つで、リーマンにより創始された多次元の幾何学です。曲面を二次元の変形と見なし、曲面上の幾何学を多次元に拡張したものです。アインシュタインは、重力、すなわち一様ではなく湾曲した時空を記述するのにリーマン幾何学の枠組みが有効であることを見い出し、リーマン幾何学を数学的核心とした一般相対性理論を構築しました。

測地線の方程式測地線とは、微分幾何学において曲面(より一般的にはリーマン多様体)上の曲線であって、その上の十分近い2つの離れた点が最短線で結ばれた曲線を言います。ユークリッド空間における直線の概念を曲がった空間において一般化したものです。一般相対性理論では、光は曲がった空間での測地線を進むという原理に基づいて構築されています。

アインシュタイン方程式ニュートンが導いた万有引力の法則を強い重力場に対して適用できるように拡張した方程式であり、中性子星やブラックホールなどの高密度・大質量天体や宇宙全体の幾何学などを扱えます。

  アインシュタイン方程式から得られる時空は、ブラックホールの存在膨張宇宙モデルなど、アインシュタイン自身さえそれらの解釈を拒むほどの驚くべき描像です。しかし、「ブラックホール」初期宇宙の「特異点の存在も理論として内包しており、「特異点」の発生は一般相対性理論そのものを破綻させてしまいます。将来的には量子重力理論が完成することにより、この困難は解決されるものと期待されています。

「一般相対性理論」による予測~

重力レンズ効果・・・重力場中では光が曲がって進むことです。アーサー・エディントンは、1919日食太陽の近傍を通る星の光が曲がることを観測で確かめ、一般相対性理論が正しいことを示しました。

水星近日点の移動・・・ニュートン力学では説明不能だった水星軌道のずれが、太陽の質量による時空軸連続体の歪みが原因であることを示しました。

重力波・・・時空のゆらぎが光速で伝播する現象です。

膨張宇宙・・・時空は膨張または収縮し、定常にとどまることがないことです。ビッグバン宇宙を導きます。

ブラックホール・・・限られた空間に大きな質量が集中すると、光さえ脱出できないブラックホールが形成されます。

重力による赤方偏移・・・強い重力場から放出される光の波長は元の波長より引き延ばされる現象です。

時間の遅れ・・・重力場中で測る時間の進み(固有時間)が、弱い重力場中で測る時間の進みより遅いことです。

量子重力理論重力を量子論(量子物理学)で基礎づける理論です。重力の理論である一般相対性理論は枠組みとしては古典物理学ですが、電磁気力や核力などが根本的には量子論の枠組みで構成されるならば、重力も同様でなければならず、そのため早くから一般相対性理論を量子論の枠組みで作り直す量子重力論の構築が試みられていました。実際には重力を量子化する際の発散(無限大)が大きな困難になり、まだ完成していません。これまでに超重力理論ループ量子重力理論超ひも理論超弦理論)などの理論が提出されています。

【参考文献】

『物質をめぐる冒険 万有引力からホーキングまで』(竹内薫、NHKブックス)

『アインシュタイン・ロマン4 悪魔の方程式 宇宙創成への問い』(NHKアインシュタイン・プロジェクト、日本法放送出版協会)

『図形雑学 相対性理論』(佐藤健二監修、ナツメ社)

『図形雑学 量子力学』(佐藤健二監修、ナツメ社)

『ハイゼンベルク 二十世紀の物理学革命』(村上陽一郎)

『量子力学の世界 はじめて学ぶ人のために』(片山泰久、講談社BLUE BACKS)

『10歳からの量子論 現代物理をつくった巨人たち』(都筑卓司、講談社BLUE BACKS)

『量子の謎をとく アインシュタインも悩んだ・・・』(F.A.ウルフ、講談社BLUE BACKS)

『量子力学が語る世界像 重なり合う複数の過去と未来』(和田純夫、講談社BLUE BACKS)

『超ひも理論と「影の世界」 見えない!さわれない!謎の世界』(広瀬立成、講談社BLUE BACKS)

『超ひも理論とは何か 究極の理論が描く物質・重力・宇宙』(竹内薫、講談社BLUE BACKS)

『はじめての<超ひも理論> 宇宙・力・時間の謎を解く』(川合光、講談社現代新書)

『イラスト「超ひも」理論 図解でいっきにわかる!宇宙論の最先端』(白石拓解説、宝島社)

『入門超ひも理論』(広瀬立成、PHP)

『エレガントな宇宙 趙ひも理論がすべてを解明する』(ブライアン・グリーン、草思社)

『ゼロから学ぶ物理の1、2、3』(竹内薫、講談社)

『現代物理の世界がわかる アリストテレスの自然哲学から超弦理論まで』(和田純夫、ベレ出版)



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「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~⑪」

(4)相対性理論と量子力学が統一される初期宇宙:物理学

ミクロな確率理論である「量子力学」の登場

「物質波」の二重性~「粒子性」と「波動性」はあらゆる存在に共通する不可分な要素です。

不確定性原理「認識」「存在」も不可分な関係にあります。量子力学で記述される粒子の位置と運動量について考えてみると、ある粒子の位置を正確に測ろうとするほど対象の運動量が正確に測れなくなり、運動量を正確に測ろうとすれば逆に位置があいまいになってしまい、両者を完全に正確に測る事は絶対に出来ないのです。なぜなら、位置をより正確に観測するためにはより正確に「見る」必要がありますが、極微の世界でより正確に見るためには波長の短いが必要であり、波長の短い光はエネルギーが大きいので観測対象へ与える影響が大きくなり、観測対象の運動量へ影響を与えてしまうからです。

  古典力学では物の状態は客観的に定まっていることが想定されており、「在る」か「無い」かの二値論理に従います。ところが、量子力学の枠組みにおいては物の状態は客観的に定まっているものではなく、観測して初めて定まるというのです。従って物の状態は、「在る」「無い」「どちらとも決まっていない」(まだ観測していない)かの三つの状態に区分できるわけです。このような状態を三値で記述する論理(三値論理)を採用することによって、ハンス・ライヘンバッハは量子力学の枠組みの論理的基礎付けを行いました。

大数の法則ある試行を何回も行えば、確率は一定値に近づくという法則です。例えば、サイコロを振ったときに出る目は回数が少ない時にはどれかの目に偏る可能性がありますが、数多く振ればどの目が出る確率も6分の1に近づきます。ミクロ的には「確率論」だが、マクロ的には「法則性」を持つというこの現象は、経済学や保険の分野にも適用されています。、保険のように契約者数が多数の場合には、何歳で死亡する割合は何%かとか、何歳でガンにかかる可能性は何%かなどはほぼ一定の水準に収斂するので、それに基づい、保険料などを計算することができ、保険会社の経営を安定して成り立たせることができるわけです。

ビレンキンの量子宇宙論(1982年)~

「無」~時間も空間も無い状態です。

「量子的なゆらぎ」~エネルギーが絶えず生成消滅する状態です。量子論特殊相対性理論を結び付けようとした「ディラックの方程式」により、反物質の存在が導き出されましたたが、粒子と反粒子のペアが出現することを「対生成」と言い、粒子と反粒子が出会って消滅することを「対消滅」と言います。

「トンネル効果」~そのうちの1つがたまたまエネルギーの壁を乗り越えることによって、宇宙が発生しました。

「インフレーション」~一度発生した宇宙は光速をはるかに超える急激な膨張(インフレーション)を行いながら、ポテンシャル・エネルギーの安定な状態へ向かいます。

「相転移」~十分に大きくなった宇宙の内部では、高いエネルギーを持った真空の状態が、低いエネルギーの真空へと変わります。「対称性の自発的破れ」と言います。

「ビッグバン」~相転移によるエネルギーの差が一挙に開放されます。

物理学の統一理論~あらゆる物理現象をたった1つの理論体系で記述できる「究極理論」(TOE=Theory of Everything)で、「天地創造の物理学」とも言います。自然界の「4つの力」を統一すること、現代物理学の2大柱である「相対性理論」と「量子論」を包括した「量子重力理論」であることなどが要請されます。

4つの力重力電磁力強い力核力)、弱い力。重力と電磁力は日常生活にも直接関係していますが、強い力と弱い力は原子核の内部など、ミクロの世界でしか働きません。

素粒子物質を構成する基本単位であり、レプトンクォークゲージ粒子などの基本粒子があります。

レプトン(軽粒子)クォークと共に物質そのものを形作る、物質の素材となる素粒子です。電子各種ニュートリノなどがあります。

①第一世代~電子(電荷量-1)、電子ニュートリノ(電荷量0)

②第二世代~ミュー粒子(電荷量-1)、ミュー・ニュートリノ(電荷量0)

③第三世代~タウ粒子(電荷量-1)、タウ・ニュートリノ(電荷量0)

クォーク~単独では存在できず、複数のクォークが結合してハドロン重粒子)を形成します。ハドロンには、3個のクォークによって構成される陽子中性子などのバリオンや、クォーク反クォークによって構成されるメソン中間子)があります。クォークとレプトンはそれぞれ6種類の「フレーバー」(香り)に分かれ、さらに各々のクォークには3種類の「カラー」(色)が存在します。

①第一世代~アップ・クォーク(電荷量+2/3)、ダウン・クォーク(電荷量-1/3)

②第二世代~チャーム・クォーク(電荷量+2/3)、ストレンジ・クォーク(電荷量-1/3)

③第三世代~トップ・クォーク(電荷量+2/3)、ボトム・クォーク(電荷量-1/3)

ゲージ粒子光子ウィークボソングルーオン重力子の4種類あって、それぞれが「4つの力」に対応しています。したがって、「4つの力」とは物質がゲージ粒子をあたかもキャッチボールのようにやり取りすることによって発生すると考えられ、その場を扱うものが「場の量子論」なのですが、「4つの力の統一」とは「4種類のゲージ粒子が本質的に同じであること」を示せばよいことが分かります。

電磁力電気力と磁力の総称で、この2つは本質的に同じものです。荷電粒子が光子フォトン)を出し入れすることによって発生します。

弱い力原子核崩壊の1つであるベータ崩壊などを引き起こす力です。クォークやレプトンがウィークボソンを出し入れすることによって発生します。電磁力と弱い力の統一「電弱統一理論」ワインバーグ=サラム理論、1967年)によって達成されました。

強い力(核力)クォークを結合させて陽子や中性子を作り、さらにそれらを結び付けて原子核を形成する力です。電磁力、弱い力に強い力も加えた3つの力を統一する理論としては「大統一理論」(GUT=Grand Unification Theory、1974年)が提唱されていますが、まだ実験的に検証されるに至っていません。この理論の予言として、「モノポール(磁気単極子)の存在」「陽子崩壊」が挙げられており、スーパー・カミオカンデはこの陽子崩壊を検証するための検知器です。

重力(万有引力)~質量を持った粒子が重力子グラビトン)をやり取りすることで生まれますが、この重力子だけはまだ実際に検出されていません。この重力まで統一する理論「超大統一理論」と言います。つまり、「究極理論」とは「超大統一理論」と「量子重力理論」の統合理論であるということになります。

宇宙誕生後の宇宙創成のプロセス

①10の-44乗秒後~「重力」が他の力から分かれました。これ以前が「超大統一理論」の世界で、「プランク期」と言います。「超弦理論」はこの時期を扱います。

②10の-36乗秒後~「強い力」が分かれました。ここまでが「大統一理論」の世界で、「GUT期」と言います。「インフレーション・モデル」がこの時期を扱います。GUT期が終わる10の-33乗秒後あたりを「ビッグバン」と呼びます。

③10の-11乗秒後~「弱い力」「電磁力」が分かれました。ここまでが「電弱統一理論」の世界です。

④10のマイナス4乗秒後~クォークが結合して陽子中性子ができました。

⑤3分後~軽い原子の原子核ができました。

⑥30万年後~原子ができました。

【参考文献】

『物質をめぐる冒険 万有引力からホーキングまで』(竹内薫、NHKブックス)

『アインシュタイン・ロマン4 悪魔の方程式 宇宙創成への問い』(NHKアインシュタイン・プロジェクト、日本法放送出版協会)

『図形雑学 相対性理論』(佐藤健二監修、ナツメ社)

『図形雑学 量子力学』(佐藤健二監修、ナツメ社)

『ハイゼンベルク 二十世紀の物理学革命』(村上陽一郎)

『量子力学の世界 はじめて学ぶ人のために』(片山泰久、講談社BLUE BACKS)

『10歳からの量子論 現代物理をつくった巨人たち』(都筑卓司、講談社BLUE BACKS)

『量子の謎をとく アインシュタインも悩んだ・・・』(F.A.ウルフ、講談社BLUE BACKS)

『量子力学が語る世界像 重なり合う複数の過去と未来』(和田純夫、講談社BLUE BACKS)

『超ひも理論と「影の世界」 見えない!さわれない!謎の世界』(広瀬立成、講談社BLUE BACKS)

『超ひも理論とは何か 究極の理論が描く物質・重力・宇宙』(竹内薫、講談社BLUE BACKS)

『はじめての<超ひも理論> 宇宙・力・時間の謎を解く』(川合光、講談社現代新書)

『イラスト「超ひも」理論 図解でいっきにわかる!宇宙論の最先端』(白石拓解説、宝島社)

『入門超ひも理論』(広瀬立成、PHP)

『エレガントな宇宙 趙ひも理論がすべてを解明する』(ブライアン・グリーン、草思社)

『ゼロから学ぶ物理の1、2、3』(竹内薫、講談社)

『現代物理の世界がわかる アリストテレスの自然哲学から超弦理論まで』(和田純夫、ベレ出版)



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「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~⑫」

(4)相対性理論と量子力学が統一される初期宇宙:物理学

宇宙の「根源」は「一即多、多即一」「ゼロ論と無限論」の場

「特異点」のジレンマ~自然は「質量」がゼロや無限大になることを嫌います。科学は「始まりの問い」を避けてきましたが、なぜでしょうか。
  「アインシュタイン方程式」を解けば、時空が200億年前(現在ではおよそ140億年前と言われています)に始まったという年代まで出てきます。つまり、200億年さかのぼれば、始まりの瞬間を見ることができるということになります。ところが、残念ながら、時刻ゼロの瞬間は、「アインシュタイン方程式」でも分かりません。なぜなら、時刻ゼロの瞬間においては物理法則が破綻してしまい、物理法則が役に立たなくなってしまうからです。「宇宙の体積」「宇宙にあるエネルギーと物質の密度」「宇宙の年齢」の関係で言えば、「宇宙の年齢」を時刻ゼロに近づけていくと、「宇宙の体積」は小さくなってゼロに近づき、逆に「宇宙にあるエネルギーと物質の密度」は大きくなって、無限大に近づいていきます。そして、最後に時刻ゼロになると、不思議な矛盾にぶつかるのです。「何もないところから、無限大のエネルギーが出てきた」ということ、つまり、ゼロと無限大が同居しているというわけです。これを「始まりの特異点」と言い、現在の科学者を悩ませる最大の難問なのです。
 「アインシュタイン方程式」が出来てから、半世紀の間、「特異点」の問題は誰も研究の対象として取り上げませんでした。「特異点」は単なる数学上のパラドックスで、現実には存在しないと思われていたのです。しかし、1965年になって、そうした定説はくつがえされ、オックスフォード大学のロジャー・ペンローズは、「特異点」の問題こそ、現代の科学にとって最も深刻な課題であることを主張したのです。ペンローズが突きつけた問題は、科学にとって極めて深刻なもので、「特異点」から逃れることができないことを、ペンローズは完璧に証明してしまったです。「特異点」の問題が解明されない限り、「始まりの問い」はもはや科学者には絶対に解けないのです。アインシュタインも「特異点」のことは知っており、「特異点」には問題があると言って、悩んでいました。

「宇宙は、いわゆる『特異点』からスタートしました。もしも、宇宙が数学的に単純で、なめらかな形をしていると仮定すれば、過去にさかのぼると、『特異点』が出てきてしまいます。『特異点』では、時空のゆがみが無限大となり、方程式はだめになります。そこから先は、科学では分かりません。でも、実際の宇宙は、複雑で、でこぼこしているかも知れません。だから、『特異点』など存在しないだろうと、みんなが考えていました。でも、実は違うのです。私とホーキングが見つけた『特異点』の定理では、宇宙がどんな形をしていようが、絶対に『特異点』を避けることはできないのです。」(ペンローズ)

超ひも(弦)理論「特異点」を回避するための理論です。重力を記述する一般相対性理論と物質のミクロな振る舞いを記述する量子力学の折り合いをつけるというのは物理学者を悩ませていた大問題ですが、「超弦理論」はそれを解決する可能性をもった理論です。「超弦理論」には5つの種類があり、それぞれI型、IIA、IIB、ヘテロSO32、ヘテロE8×E8と呼ばれています。この5つの「超弦理論」は理論の整合性のため、10次元時空が必要です。通常の3次元に時間を加えた4次元に加えて、残りの6次元は量子レベルで巻き上げられていて小さなエネルギーでは観測できないとされます。また、11次元超重力理論をその極限に含んだM理論は、さらに1次元を加えて合計11次元を必要とする。これら6つの理論は様々な双対性によって互いに繋がっています。弦の振動は、量子レベルで巻き上げられていている6次元により制約を受け、その振動の形により、特定の量子を形作っています。「超弦理論」では基本的物体は1次元の弦でしたが、M理論では加えられたもう1次元によって、基本的物体は2次元の膜であると提唱されています。

また、「超弦理論」で表記される10次元中にはDブレーンと呼ばれる様々な次元のソリトンが存在します。Dブレーンは元々一次元の弦が端点を持ちうる空間として定義されているですが、重力子グラビトン)等の閉じた弦はこの超空間に依存せずにブレーン間を往来します。この描像を宇宙論に適用した理論は、「ブレーン・ワールドと呼ばれ、典型的な模型では我々はこのDブレーンの上に住んでいることになります。また、このモデルでは、量子力学で使われる3つの力に対して、何故重力が極端に弱いのかを説明がつけられるとしています。つまり、本来他の3つの力(電磁気力弱い力強い力)に比較して弱いのは、他の次元にその大半が逃げてしまっているためと考えられるのです。

これに関連して、例えば宇宙論のインフレーションをブレーンの運動で捉えるなど、様々な研究がなされています。なお、ビッグバンは我々の存在する宇宙が所属する膜と他の膜の接触によるエネルギーが原因で起こったとするモデルもあり、エキピロティック宇宙と呼ばれています。通常のインフレーションを導出しようとする試みも進行中です。

「超弦理論」は重力の量子論であるため、ブラックホールのエントロピーに関する問題にも答えています。ブラックホールのエントロピーは表面積に比例していますが、この事実をDブレーンに張り付いた弦の状態を数え上げる、という方法で導き出しているのです。これは熱力学のエントロピーを統計熱力学の手法で導き出すことに対応しています。

「ゼロ論」と「無限論」を組み込んだ理論でなければ宇宙の「根源」は扱えない~物理学的難問である「特異点」を回避するのではなく、組み込んだ理論が出来ない限り、宇宙の「根源」を説明することは出来ません。既存の理論は全て結果としてそこにある宇宙の「法則」を説明せんがためのものであり、howに属する議論ですが、「なぜそこにあるのか」といったwhyに属する議論は数学的には「ゼロ論」と「無限論」を包括するものとなるのです。

「華厳経において法蔵は相入と相即についてこう述べている。

相入とは一の中に多があり、他の中に一があるということをいい、相即とは一即多、多即一のことをいう。普通の常識では、一に一を加えると二ができるように考えられるが、それは間違いであり、そんなことはありえない。と言うのは、一に一を加えると、一つが二つ集まったものに過ぎないもので、一つが増えたというだけであり、二という一つの自然数にはならない。

新しい自然数は一を足すことによって出来るが、単に一を足したばかりでなく、一を足した全体を同時に直感することによって、二という自然数が生まれるのである。それではそのような直感はどのようにして可能となるのか?それは一の中には二ないし十の意義を具有しているから、一がよく二ないし十を成ずることができる。一の中には二・三・四・五が備わっているのである。そこで一といっても、それは二以下と切り離されて単独に存在しているものではなくて、二以下と相対することによって一であるのである。法蔵はこれを「縁成によるが故の一」であるというが、一という自然数、二という自然数が成り立つためには、他の自然数との関係において成り立つのである。しかも一という時には、一の中に他の自然数全体が内包されている。これを相入というのである。

つぎに任意の自然数の一つを取り出すと、その任意の自然数が自然数全体をあらわし、任意の自然数と自然数全体が相即することを明らかにする。一をたてると、一は絶対の主体となり、二以下は依存従属の関係に入らなければならない。一は有力となり、二以下は無力となる。それによって一即二。一即三。・・・一即無限数が可能となる。次に二を主体として考えると、一および三以下は二に従属する関係になる。二が有力のとき、一および三以下は無力となり、二の中に吸収される。そして二即一、二即三、・・・二即無限数が可能となる。このような関係を一即十、十即一、というようにあらわすのが相即ということである。ちなみに華厳では十を円満完全な数、無限数とみなして十銭の喩えを説いたのである。」

(鎌田茂雄『華厳経物語』)

【参考文献】

『物質をめぐる冒険 万有引力からホーキングまで』(竹内薫、NHKブックス)

『アインシュタイン・ロマン4 悪魔の方程式 宇宙創成への問い』(NHKアインシュタイン・プロジェクト、日本法放送出版協会)

『図形雑学 相対性理論』(佐藤健二監修、ナツメ社)

『図形雑学 量子力学』(佐藤健二監修、ナツメ社)

『ハイゼンベルク 二十世紀の物理学革命』(村上陽一郎)

『量子力学の世界 はじめて学ぶ人のために』(片山泰久、講談社BLUE BACKS)

『10歳からの量子論 現代物理をつくった巨人たち』(都筑卓司、講談社BLUE BACKS)

『量子の謎をとく アインシュタインも悩んだ・・・』(F.A.ウルフ、講談社BLUE BACKS)

『量子力学が語る世界像 重なり合う複数の過去と未来』(和田純夫、講談社BLUE BACKS)

『超ひも理論と「影の世界」 見えない!さわれない!謎の世界』(広瀬立成、講談社BLUE BACKS)

『超ひも理論とは何か 究極の理論が描く物質・重力・宇宙』(竹内薫、講談社BLUE BACKS)

『はじめての<超ひも理論> 宇宙・力・時間の謎を解く』(川合光、講談社現代新書)

『イラスト「超ひも」理論 図解でいっきにわかる!宇宙論の最先端』(白石拓解説、宝島社)

『入門超ひも理論』(広瀬立成、PHP)

『エレガントな宇宙 趙ひも理論がすべてを解明する』(ブライアン・グリーン、草思社)

『ゼロから学ぶ物理の1、2、3』(竹内薫、講談社)

『現代物理の世界がわかる アリストテレスの自然哲学から超弦理論まで』(和田純夫、ベレ出版)

『華厳経物語』(鎌田茂雄、大法輪閣)



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「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~⑬」

(5)「人間」の存在が「宇宙」創成の前提なのか?:人間学

「主観主義」の復権と「人間原理宇宙論」

客観主義人間の「主観」を離れて「客観的真理」が存在すると考える危険性があります。すなわち、「主観」を無視した「客観的真理」の強制が起き得ます。

主観主義「真理」は自分にとって意味があってこそ「真理」であり、そういう観点からすれば「真理」の本義は「主観的真理」にあることになります。

人間原理宇宙論「宇宙」の「存在」はそれを「認識」する「人間」の存在が前提になっていると考えます。「人間原理」とは物理学、特に宇宙論において、宇宙の構造の理由を人間の存在に求める考え方「宇宙が人間に適しているのは、そうでなければ人間は宇宙を観測し得ないから」という論理を用いています。これをどの範囲まで適用するかによって、幾つかの種類があります。「人間原理」を用いると、宇宙の構造が現在のようである理由の一部を解釈できますが、これを自然科学的な説明に用いることについては混乱と論争があり、未だ多数には認められていません。「この宇宙は奇跡的にバランスよく作られている」「物理定数がわずかでも違えば生命はもとより、原子恒星さえ存在できない」「自然法則が違っていたら、3次元でなかったら、多くの可能性の中で、宇宙はなぜこのように人間のような高度な生命を生み出すのに適した構造をしているのか?それは偶然なのか?」といった疑問に応えるために「人間原理」は利用されています。


大数仮説ポール・ディラック1937、以下のように幾つかの基礎的な物理定数から求められる無次元数10の40乗(またはその2乗)という値が現れることに気づきました。

陽子-電子間の電磁気力と重力の強さの比

●宇宙の年齢と光が陽子の半径を進む時間の比

●宇宙に存在する陽子と中性子の数

これに対してディラックは、これらは偶然成り立っているのではなく、常に成り立っていると考えました。しかし、この考えに従えば、時間の経過につれて物理定数さえ変化していることになります。そのため、「大数仮説」は広く受け入れられることはありませんでした。現在でも物理定数が変化する可能性は残されていますが、実証は困難です。


弱い人間原理「大数仮説」が成立する時に人間が存在している不思議さを、人間の存在による必然と考えたのがロバート・H・ディッケです。ディッケは宇宙の年齢が偶然ではなく、人間の存在によって縛られていることを示しました。それによれば、宇宙の年齢は現在のようなある範囲になければならないと言います。なぜなら、宇宙が若すぎれば、恒星内での核融合によって生成される炭素などの重元素は星間に十分な量が存在できないし、逆に年を取りすぎていれば、主系列星による安定した惑星系は無くなってしまっているからです。このように宇宙の構造を考える時、人間の存在という偏った条件を考慮しなければならないという考え方を「弱い人間原理」と呼びます。


「強い人間原理」ブランドン・カーターはこれをさらに進めて、「生命が存在し得ないような宇宙は観測され得ず、よって存在しない。宇宙は生命が存在するような構造をしていなければならない」という「強い人間原理」を示しました。

【参考文献】

『易経の謎 2000年目に解けた「八卦」の謎』(今泉久雄、光文社)

『超常現象には”法則”があった!』(猪股修二、KKロングセラーズ)

『超常現象には”絶対法則”があった!』(猪股修二、KKロングセラーズ)

『宇宙には意志がある ついに現代物理学は、ここまで解明した』(桜井邦朋、クレスト選書)

『宇宙は自ら進化した ダーウィンから量子重力理論まで』(リー・スモーリン、NHK出版)



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「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~⑭」

(5)「人間」の存在が「宇宙」創成の前提なのか?:人間学

「認識論」と「存在論」が攻めしのぎ合う場

「認識」が「存在」を生み、「存在」が「認識」を生む~「有りて有る」から「有る」「分かる」へ。

「認識論」の議論の例としてしばしば挙げられるものに、カントによる「合理主義」「経験論」の統合があります。デカルトスピノザライプニッツなどに代表される大陸合理主義者は、人間の思考には経験内容から独立した概念が用いられていると考えました。

ロック ヒュームなどに代表されるイギリス経験論者は、経験に先立って何かの概念が存在することはなく、人間は「白紙状態」タブラ・ラサ)として生まれてくるものと考えました。この立場からは、全ての知識や概念は人間が経験を通じて形成するものだということになります。数学の定理は、こうした経験論の立場に立つ者にとっては少し厄介な問題を引き起こします。定理の真偽は人間の経験に依存せず、経験論の立場に対する反証となります。経験論者の典型的な議論は、このような定理はそもそもそれに対応する認識内容を欠いており、単に諸概念の間の関係を扱っているだけだというものですが、合理主義者は、定理にもそれに対応する認識内容の一種があると考えます。

カントはこのような二派の対立を決着したとする見方が今日広く受け入れられており、例えば因果関係」「時間」「空間」など限られた少数の概念は人間の思考にあらかじめ備わったものであるとしました(「先天的形式」)。カントによれば、そうした概念を用いつつ、経験を通じて与えられた認識内容を処理して更に概念や知識を獲得していくのが人間の思考のあり方だということになります。また、カントは、人間は物自体を知り得ず、ただ事物が自分の思惟に与えてくる内容だけを知ることができると考えたことでも知られています。

カント『純粋理性批判』『実践理性批判』『判断力批判』批判哲学の立場から理性を検討し、主観の働きにより対象が構成されるという認識論を展開して、ロックやヒュームなどのイギリス経験論とデカルトを祖とする合理論を総合しました。また、理性を理論理性実践理性に分け、理論理性の領域は経験できるものに限られ、それを超えたものは実践理性が明らかにする領域だと考えて、理性の限界を明らかにしました。

『純粋理性批判』~人間の認識能力(理論理性)の限界を検討しています。概念を形成する悟性は、感性より得た直感的な印象に思考の枠組みを当てはめて対象を構成するとしました。そして、こうした感性と悟性の協働によって認識が成立しますが、事物そのものである「物自体」は認識できないとしました。

感性~認識の素材を受け取る能力です。時間・空間という形式を持ち、感覚を受容します。

悟性(understanding)~素材を整理し、秩序づける能力です。また、感性と悟性をつなぐものをカントは構想力と呼びました。

物自体~現象の背後にある、物そのものを指します。

『実践理性批判』~人間の道徳能力(実践理性)の限界を検討しています。経験を超える事柄(神、霊魂の不滅など)については理論理性では判断できませんが、実践理性が関わる領域であるとしました。自然界を貫く自然法則と同様に普遍性を持つものとして、人間の行為の世界における道徳法則を追求しました。

『判断力批判』~反省的判断力について検討しています。自然美や芸術などの美的対象を考察の対象として取り上げ、それらに関わる想像力構想力)の自由な働きや自然の合目的性を判断する能力を分析しました。

「内容なき思考は空虚であり、概念なき直観は盲目である。」(『純粋理性批判』)

「私の上なる星空と、私の内なる道徳法則」(『実践理性批判』)~「繰り返し長く考えれば考えるほど、常に新たな感嘆と崇敬をもって心を満たすもの」として挙げられたもので、『実践理性批判』の結びの言葉。カントの墓碑銘にもなっています。

コペルニクス的転回~カントが従来の「認識が対象に従う」という理解の仕方を「対象が認識に従う」と180度転換したことを言います。

【参考文献】

『宇宙には意志がある ついに現代物理学は、ここまで解明した』(桜井邦朋、クレスト選書)

『宇宙は自ら進化した ダーウィンから量子重力理論まで』(リー・スモーリン、NHK出版)



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「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~⑮」

(5)「人間」の存在が「宇宙」創成の前提なのか?:人間学

「人間」、この摩訶不思議なるもの

人間学(anthropology)~一般に「人間とは何か?」、「人間の本質とは何か」という問いに哲学的な思考と実証的な調査で答えようとする学問で、通常は哲学の一部門として、哲学的人間学の名で呼ばれることもありますが、文化人類学経済人類学、生物学的人間学など、他の諸科学にもその学問分野での人間論人間学を語る人たちが少なくありません。「人間原理宇宙論」などは「宇宙論的人間学」と言えるでしょう。

インテリジェント・デザイン~知性ある設計者によって生命宇宙の精妙なシステムが設計されたとする説です。しばしば、IDと略されます。聖書信仰を基盤にする宗教的な論説の創造科学から宗教的な表現を無くして、一般社会や学校教育などに広く受け入れられるようにしたもので、近年のアメリカで始まりました。宗教色を抑えるために、宇宙や生命をデザインし創造した存在を「神」ではなく、「偉大なる知性」と記述することが特徴です。これにより、非キリスト教徒に対するアピールを可能にしています。また宗教色を薄めることで、公教育への浸透などにおいて、政教分離原則を回避しやすくなるわけです。

ガイア理論地球生物が相互に関係し合い環境を作り上げていることを、ある種の「巨大な生命体」と見なす仮説です。NASAに勤務していた大気学者であり、化学者でもあるジェームズ・ラブロックによって1960年代に仮説が提唱されました。当初は主に気候を中心とした、生物と環境の相互作用についての理論であり、何らかの恒常性が認められるとした理論であって、ラブロックもこの理論を「自己統制システム」と命名していました。後に作家のウイリアム・ゴールディングの提案により、ギリシア神話の女神ガイアにちなんだ名前へ変更したのです。徐々に賛同者を得て、シンポジウムも開かれ、批判によって理論が鍛えられ緻密化するとともに、さらに多くの賛同者を得て、この理論にかなう多くの具体的・科学的な事例も集まり、豊穣な理論体系となったのです。

ガイア大地)~あらゆるものの母であり、ガイアからエレボス(暗黒、地下世界)とニュクス(夜)の兄妹が生まれ、この2人が夫婦となってからヘーメラー(昼の光)とアイテール(上天の気)とカロン(冥界に至る川の渡し守)が生まれたとされます。『旧約聖書』創世記では、「はじめに神は天と地とを創造された。地は形なく、むなしく、やみが淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてをおおっていた。神は「光あれ」と言われた。すると光があった。神はその光を見て、良しとされた。神はその光とやみとを分けられた。神は光を昼と名づけ、やみを夜と名づけられた。夕となり、また朝となった。第一日である」とありますので、ここに相当する部分かもしれません。アイテールはエーテルのことで、アリストテレスエンペドクレスの四元素説を拡張して天体を構成する第五元素とし、これがスコラ神学にも受け継がれて、中世のキリスト教的宇宙観において天界を構成する物質とされました。カロンはダンテの『神曲』にも登場します。さらにガイアは息子ウラノス天空)を生んで夫婦となりますが、空と大地を原初的な二柱の神と考えることは全てのインド=ヨーロッパ民族に共通しており、インドの『リグ・ヴェーダ』でも空と大地は「不滅の夫婦」と呼ばれています。

ウラノス天空)~ガイアとの間にクロノスレアティターン12神やキュクロープスヘカトンケイルなどの巨人を生みます。ウラノスは天王星ウラノス)の語源であり、ティターン(英語のタイタン)はチタン(元素)、タイタン(土星の衛星)、タイタニック号など様々な名称に使われています。イオニア人・アカイア人・ドーリア人第3派ギリシア人ペロポネソス半島に南下した時、ミュケナイティリュンスアルゴスなどに代表されるミケーネ(ミュケナイ)文明の巨石建造物の数々を巨人キュクロープスの手になるものと考え、「キュクロープスの石造物」と呼びました。これはイギリスのストーンヘンジに代表されるストーンサークルやヨーロッパ各地のメンヒルドルメンといった巨石記念物を巨人の遺物と考えられたことと同様です。

【参考文献】

『超常現象には”法則”があった!』(猪股修二、KKロングセラーズ)

『超常現象には”絶対法則”があった!』(猪股修二、KKロングセラーズ)

『宇宙には意志がある ついに現代物理学は、ここまで解明した』(桜井邦朋、クレスト選書)

『宇宙は自ら進化した ダーウィンから量子重力理論まで』(リー・スモーリン、NHK出版)



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「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~⑯」

(6)実は宇宙の構造はナゾだらけ:自然学

「Why」どころか「How」も分からない「宇宙の構造」

「なぜなのか?」を問う哲学者、「どのようになっているのか?」を問う科学者「宇宙の構造」の研究が進めば進むほど、分からない疑問が増えていくのです。


インフレーション・モデル~1980年以降、佐藤勝彦らによって提唱された、ミクロ的な量子宇宙ビッグバン以後のマクロ的宇宙との橋渡しの理論です。宇宙は誕生直後の10の-36秒後から10の-34秒後までの間に、エネルギーの高い真空(偽の真空)から低い真空(現在の真空)に相転移し、この過程で負の圧力を持つ偽の真空のエネルギー密度によって引き起こされた指数関数的な膨張(インフレーション)の時期を経たとしています。ビッグバン理論が抱える「地平線問題」「平坦性問題」、さらに大統一理論のネックとされる「モノポール問題」の3つが理論的には一気に解決されるとされます。

地平線問題~宇宙はなぜこれほど一様で等方的なのかという問題です。ビッグバン理論では、宇宙の誕生時には物質やエネルギーの密度のゆらぎ(でこぼこ、これが後の銀河の種子になったと考えられます)があったはずですが、宇宙背景放射はきわめてムラの無い一様な状態であることが判明し、これは宇宙がその誕生時には密度が非常に均一であり、銀河の種子が無かったことを意味します。これに対して、インフレーション・モデルでは急膨張以前の段階でこうした均一性がチューニングされていたとしています。ちなみに1989年に打ち上げられた宇宙背景放射探査衛星COBE(コービー)によって、それまで見つからなかった宇宙背景放射の微妙なゆらぎを発見し、宇宙の初めには確かに銀河の種子があったことが証明され、ビッグバン理論に強力な裏付けを与えました。

平坦性問題~観測によれば、宇宙の曲率は限りなくゼロに近い所にあり、宇宙はなぜこんなに平べったいのかという問題です。確率論的にはほとんどゼロに等しい現象とされます。これに対してインフレーション・モデルでは、宇宙も初期には曲って見えたかもしれないが、インフレーションによる急激な膨張でそのゆがみが引き伸ばされ、今、観測できる限りの範囲では平らに見えるようになったとしています。

モノポール問題~大統一理論によれば、真空の相転移の理論的帰結として様々なモノポールが存在し得るとされますが、未だに見つかっていません。これに対して、インフレーション・モデルでは今日の宇宙はたった1つの対称性が破れた場から、言い換えれば、無数にできた真空の泡の1つから急膨張によって生まれたもので、モノポールは存在しないとしています。

宇宙の大規模構造~銀河の密集した部分が数億光年もの長きにわたって延々と並んだ、壁のような大構造「グレート・ウォール」を作っていることが分かりました。

グレート・アトラクター~巨大引力源とも呼ばれ、銀河の大集団と考えられています。近傍宇宙の大規模構造の一つであり、いくつかの銀河および銀河団の特異運動からその存在が予測されている銀河間空間内の重力異常です。さらに局所銀河団を膨大な重力で引っ張る(「ストリーミング運動」超銀河団の存在も知られており、例えばラケニア超銀河団、シャプレー超銀河団、かみのけ座超銀河団、おとめ座超銀河団、へびつかい座超銀河団などがあります。

ボイド(泡、超空洞)~グレート・アトラクター同士の超大構造の間隙に延々と広がる、ほとんど全く物質の存在しない広大な空間です。

ダーク・マター暗黒物質)~宇宙における全物質(銀河や超銀河団)を分布し、集合させているエネルギーを現在の観測事実に矛盾することなく算出すると、宇宙の95%もの未知なる物質の存在を想定しなければならないのです。そのうちの1つががダーク・マター暗黒物質)で、これは宇宙の所々に塊で存在し、見えないのに重力を持つ物質です。最近では、ダーク・マターの重力の影響でその背後にある銀河がゆがんで見える現象「重力レンズ効果」が発見され、ダークマターが宇宙にどのように分布しているのかという地図づくりも進められていますが、その正体はいまだに不明です。

ダーク・エネルギー暗黒エネルギー)~ダーク・マターとともに宇宙全体の95%を占めるとされている物質です。ダークエネルギーは宇宙全体に均等に分布していて、宇宙が膨張するスピードをどんどん速くする力を持っています。かつての宇宙論では、宇宙全体の重力でブレーキがかかり、膨張は遅くなっていくと思われていたのですが、遠くの超新星(ある星の一生の最後に起きる爆発現象)が、これまでの理論で予想される速度よりも速く遠ざかっていることが発見され、宇宙の膨張速度はどんどん速くなっていることが分かったのです。そのため、重力に逆らって加速しながら宇宙を押し広げる未知の力はダーク・エネルギーと名づけられました。この正体もいまだに不明です。

【参考文献】

『異貌の科学者』(小山慶太、丸善ライブラリー)

『ノーベル賞の100年 自然科学三賞でたどる科学史』(馬場錬成、中公新書)

『新しい科学論 「事実」は理論を倒せるか』(村上陽一郎、講談社BLUE BACKS)

『宇宙論の危機 新しい観測事実に揺れる現代宇宙論の最前線』(マイケル・D・ルモニック、講談社BLUE BACKS)

『宇宙を測る 宇宙の果てに挑んだ天才たち』(キティー・ファーガソン、講談社BLUE BACKS)

『よくわかる宇宙論の迷走と過ち ビッグバン理論は間違っていた』(コンノケンイチ、徳間書店)

『超ミクロの空間は<意志>に満ちた<霊界の宇宙>だった 死後の世界を突き止めた量子力学』(コンノケンイチ、徳間書店)



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「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~⑰」

(6)実は宇宙の構造はナゾだらけ:自然学

「神の領域」に挑み続ける学者達

「目に見えない世界」「霊界」「死後の世界」も含めた広汎な「総合的宇宙論」が必要~究極の「本体論」「存在論」「宇宙論」である。

「虚時空」では「実時空」における因果律が適用できません。「無」(全てがある状態)→「複素時空」(広義の宇宙誕生)→「実時空」(狭義の宇宙誕生)という三段階のプロセスをたどったわけですが、結果的宇宙「時間」「空間」「物質」「エネルギー」「意識」「精神」が存在しているということは、原因的無にも原存在があったと考えられます。

よく使われるジョーク~「神が宇宙を創る前は何をしていたか?」「神はそのような質問をする人のために地獄を造っていた。」

「創造の前に何があったか?そのことを問うのは無意味である。なぜなら、神は世界と共に時間を創造したからである。言い換えれば、創造の前に時間は無かったのである。それゆえ、創造の前に何があったかを問うことは無意味なのである。」

(アウグスティヌス『告白』)

「霊界は広大無辺の生動的な異次元宇宙であるが、人類の発生以来、地上で生まれて死んだすべての人間がここに生きている。そこは、地上の世界と同様の法則によって成り立つ世界である。スウェーデンボルグは霊界全体の構造を推理する際、該博な解剖学・生理学の知識を駆使している。

 霊界全体が理想的な形態をとるときには、ひとりの人間の形態になるという。それは「最大にして神的な人間」(Maximus et Divinus Homo)である(『天界と地獄』59)とスウェーデンボルグは言う。霊界における各社会は、ひとりの人間、あるいはひとつの人体のように有機的な全体の一部であり、バラバラな部分ではなく、全体にとって不可欠な部分なのである。

 霊界は、人間の心が成層的な構造を有するように、やはり成層的な構造をしている。死後の世界は、人間の宗教的・道徳的性格(愛や信仰、また善や悪)を縦軸とし、個性や好みを横軸として幾層にも住み分けられている。」

(高橋和夫『スウェーデンボルグの思想』)

「それでは、神と宇宙、あるいは神と被造世界との関係はどうなっているのであろうか。

 前述したように、神の本質は無限の愛である。それゆえ宇宙の万物は神の愛の対象として、神の知恵を通して創造された、とスウェーデンボルグは言う。愛とは、自分の外にいる他者を愛し、他者と一つになることを欲し、他者を幸福にしようと願いことである。そして、愛の自己投影的で自己表象的な機能が知恵であり、知恵の中に愛は自己実現へと向かう自己自身を見るのである。

 神的な知恵とは、神的な愛の活動そのものである。本質的に見れば、宇宙とは、知恵という自己表象・自己実現活動をしている、無限の愛そのものなのである。

 霊界に自由に参入するようになってから、スウェーデンボルグは、自然を超えたインナースペースとでも言うべき領域の実在を確信し、科学的時期とは違う視座から宇宙を見るようになった。

 宇宙はいわば三重構造になっている。宇宙の中心には神的存在と神的生命がある。その周辺部には、神的なものと「照応」しているが、より低次の存在である霊界があり、霊界の周辺、すなわち宇宙の最外部に、霊界に照応する自然界がある。「不連続な階層」によって結びつくこの三重になった宇宙は、無限の愛に由来する自己表象的な機能によって、一つのものとして活動している。

 この宇宙を生気づけるのは、中心の無限の愛である。それゆえ、その宇宙を形づくっている自然とは、神的で霊的なものの表象と映像であり、神的なものが霊的なものを通して生み出し、かつ不断に生気づけているものである。この意味で自然とは、デカルト以来の、精神が分断された機械論的な物体的自然ではなく、生気に満ちた神々しいものである。」

(高橋和夫『スウェーデンボルグの思想』)

【参考文献】

『異貌の科学者』(小山慶太、丸善ライブラリー)

『ノーベル賞の100年 自然科学三賞でたどる科学史』(馬場錬成、中公新書)

『新しい科学論 「事実」は理論を倒せるか』(村上陽一郎、講談社BLUE BACKS)

『宇宙論の危機 新しい観測事実に揺れる現代宇宙論の最前線』(マイケル・D・ルモニック、講談社BLUE BACKS)

『宇宙を測る 宇宙の果てに挑んだ天才たち』(キティー・ファーガソン、講談社BLUE BACKS)

『よくわかる宇宙論の迷走と過ち ビッグバン理論は間違っていた』(コンノケンイチ、徳間書店)

『超ミクロの空間は<意志>に満ちた<霊界の宇宙>だった 死後の世界を突き止めた量子力学』(コンノケンイチ、徳間書店)

『スウェーデンボルグの思想』(高橋和夫、講談社現代新書)



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「よく分かる宇宙論の歴史~人類最大のロマンは宇宙の「根源」にある~⑱」

(6)実は宇宙の構造はナゾだらけ:自然学

「宇宙」は人間にとって「永遠のフィールド」である

「宇宙」を見て考えるのは「人間」だけ~「宇宙」は「人間」を進歩させてきた。

ホモ・サピエンス知恵あるヒト)~知恵を持ち、理性的な思考能力を備えた存在。スウェーデンの植物学者リンネが名付けた人間観です。ラテン語のスキエンティア(英語science)が「(部分的な)知」であるのに対し、サピエンティア全体的な「英知(聡明)」の意です。

ホモ・ファーベル工作するヒト)~道具を使って自然に働きかけ、ものを作り出す存在。フランスの思想家ベルクソンが名付けた人間観です。人間は他の動物と違い、道具を用いて環境に働きかけることができます。

ホモ・ルーデンス遊戯するヒト)~日常から離れて自由に遊び、そこから文化を作り出す存在。オランダの歴史家ホイジンガが名付けた人間観です。

ホモ・レリギオースス宗教人)~自らを超えるものに目を向け、宗教という文化を持つ存在。ルーマニアの宗教学者エリアーデが名付けた人間観です。

アニマル・シンボリクム象徴的動物)~言語などの意味を持つシンボル象徴)によって世界をとらえる存在。ドイツの哲学者カッシーラーが名付けた人間観です。

ホモ・ロクエンス言葉を語るヒト)~言語学領野の実験音声学で活躍したデニス・フライによる人間観。カッシーラーのアニマル・シンボリクム(象徴的動物)の考え方を引き継いでいます。

ゾーン・ポリティコンポリス的動物社会的動物)~共同社会に住み、言語理性を用いて他者と話し合い、正義不正義などについて共に考える時、その本質を十分に発揮する存在。ギリシアの哲学者アリストテレスが名付けた人間観。

ホモ・ポリティクス政治をするヒト)~政治的人間、言語による対話、説得、交渉など政治的才能に優れた人、政治的駆け引きにたけた人。古代ギリシアの哲学者アリストテレスが「人間らしい人間はポリス(都市国家)的動物である」として用いたのが起源です。

ホモ・エコノミクス経済人)~自己の経済利益を極大化させることを唯一の行動基準として行動する人間の類型。経済学が成立するにあたっては一定の成功を収めてきましたが、実際の人間の行動は従来の経済学が想定してきたほどには「経済合理的」ではなく、心理的・情的に選択されているということが明らかになってきました。現在では行動経済学という分野で、実際の観察および心理学や認知科学の知識を基盤として研究されるようになってきています。

ホモ・モーベンス移動するヒト)~建築家黒川紀章が『ホモ・モーベンス 都市と人間の未来』で展開した人間観。都市と建築の設計とは情報の流れにかたちを与えることであり、そのような社会では、定住性よりも自由に動き回れる機動性モビリティ)が必要になると説き、人間の移動性に注目して「道の建築」「ホモ・モーベンス(動民)」なるキーワードを用いて持論を展開しています。

ホモ・イノヴェーティス革新するヒト)~イノべーション(innovation)とは、「新機軸」「革新」を意味し、新たな仕組みや習慣を取り入れて、革新的な価値を創造することを指します。オーストリア出身の経済学者であるヨーゼフ・シュンペーターによって、「経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合すること」初めて定義され、資本主義の本質と考えられるようになりました。

ホモ・コスモロギア宇宙を論ずるヒト)~コスモロジー(宇宙論)とは、ライプニッツからカントへの橋渡し的存在であるドイツの哲学者・近世自然法論者クリスティアン・ヴォルフによって初めて使われた言葉で、宇宙の起源、構造、発展についての神話的、哲学的、あるいは自然科学的な理論の総称です。宇宙を論ずることは人間にしかできないことであり、人間の本質に関わることであるかもしれません。

【参考文献】

『異貌の科学者』(小山慶太、丸善ライブラリー)

『ノーベル賞の100年 自然科学三賞でたどる科学史』(馬場錬成、中公新書)

『新しい科学論 「事実」は理論を倒せるか』(村上陽一郎、講談社BLUE BACKS)

『宇宙論の危機 新しい観測事実に揺れる現代宇宙論の最前線』(マイケル・D・ルモニック、講談社BLUE BACKS)

『宇宙を測る 宇宙の果てに挑んだ天才たち』(キティー・ファーガソン、講談社BLUE BACKS)

『よくわかる宇宙論の迷走と過ち ビッグバン理論は間違っていた』(コンノケンイチ、徳間書店)

『超ミクロの空間は<意志>に満ちた<霊界の宇宙>だった 死後の世界を突き止めた量子力学』(コンノケンイチ、徳間書店)



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