「逆境の哲学」~様々な事例に学ぶ「運」と「ツキ」と「節目」の研究~



(1)「運がいい人」と「運が悪い人」は確かにいる

①「運がいい人」の中には「財物に恵まれる人」と「人物に恵まれる人」がいる

②「運が悪い人」の中には「性格に現れる人」と「環境に遭遇する人」がいる


(2)「逆境」の時にこそ、その人の真価が問われる

①春夏秋冬があるように、「順境」も「逆境」も1つのサイクルの中にある

②「逆境の処し方」が「人間的成長」「飛躍」の土台となる


(3)「ツキ」をもたらす「性格転換」と「人間関係転換」

①「性格転換」の基本技術に習熟すると「ツキ」を呼び込める

②「人間関係転換」の基本技術に習熟すると「ツキ」を呼び込める


(4)人生の「節目」となる進学・就職・結婚という「選択」

①人生は「選択」の連続である

②「進学」「就職」「結婚」は人生を大きく左右する「節目」となる


(5)「時」を見抜く目と忍耐力・吸収力・向上心がカギとなる

①「時」の訪れは常にさりげないものである

②「忍耐力」「吸収力」「向上心」さえあれば、最終的には必ず発展する




(1)「運がいい人」と「運が悪い人」は確かにいる

「運がいい人」の中には「財物に恵まれる人」と「人物に恵まれる人」がいる

「財物に恵まれる人」「金運のある人」「物運のある人」に分かれます。結果としての因果応報もあれば、原因としての因果応報もあります。

「人物に恵まれる人」「友人に恵まれる人」「引き立てを受ける人」などがいます。結果としての因果応報もあれば、原因としての因果応報もあります。

●市区町村議会議員・都道府県議会議員までは「能力」が問題ですが、国会議員は「運」「器」が問題です。国会議員はどんなに「能力」があっても、その時々の「国運」を受け止める「器」のようなものがないとなれません。これは必ずしも「器」が大きいかどうかということより、その「時」をつかめるかどうかが大きいようです。

●豊臣秀吉が徳川家康と共に最も恐れていた稀代の軍師黒田官兵衛は「小事をなすのは力量、大事をなすのは天運である」として、秀吉の「強運」を認め、自らが「天下人」を目指すのを諦めました。「生まれてくるのが20年遅かった」と周囲を嘆かせた伊達政宗も「運」で秀吉・家康に及びませんでした。秀吉・家康も範とした「不倒翁」「西国随一の戦国大名」毛利元就(もとなり)も、55年間、226戦を戦って生涯不敗でしたが、天下を狙うことを戒める遺訓を残しています。実際、軍事力なら織田信長よりも武田信玄の方が上でしたし、戦略なら秀吉よりも元就、持久力でも家康より元就の方が上だったとされます。

●日露戦争でロシアのバルチック艦隊を破り、西洋のジャーナリスト達から「東洋のネルソン」と称された東郷平八郎が連合艦隊総司令官に抜擢された時、その理由は「東郷は運の強い男です」(山本権兵衛海軍大臣)というものでした。東郷は「この海戦は戦闘開始30分で決まった。我に天運あり、勝利したのだ」と語っていますが、後年、日本海海戦の勝因を聞かれて、「7分は運であった」「では、残り3分は?」「やはり、運だった。ただし、7分の運は努力の結果、引き寄せた運で、3分の運は天佑としか言いようがない」と答えたと言います。

●大学院入試で前日に先輩から渡された本より5問中3問出題されて合格した人もいます。この人は日頃から国際交流プロジェクトのために自腹で東奔西走する人でした。

●資産1,000億ドルを超えるビル・ゲイツやウォーレン・バフェットなども子供に莫大な遺産を残す気はなく、社会に還元する予定であると言いますが、「経営の神様」松下幸之助なども死ぬ前に慈善事業へ500億円寄付したことで知られます。松下幸之助は人相は決していい方ではありませんが、「自分はとても運がいい」と確信し、「経営者が単に自分の会社の利益だけを考える態度は本来的に間違っている。企業の存在する社会や国家、国際社会との共存共栄を抜きにして企業の繁栄はありえない。ビジネス活動を通じて社会の平和と幸福を実現しよう」と事業を進めたことに特徴があります。ちなみに松下幸之助は採用面接試験時に「あなたは運がいい方ですか?悪い方ですか?」と訊ね、「運はいい方です」と答えた人を優先的に採用したことがあると言います。萩本欽一も弟子を採用する時にやはり「自分は運がいいと思うか、悪いと思うか」と聞き、「運がいいと思う」と答えた人を採ったそうです。なぜなら、「運が悪い」と思っている人はせっかくチャンスがめぐってきても、それをモノにすることができないからであるというのです。「運も実力のうち」ということですね。


【ポイント】

 「自分は運がいい」と思っている人(好運体質・気質、強運体質・気質)とは友達になるべきです。また、自らも「自分は運がいい」と思うべきです。



「運が悪い人」の中には「性格に現れる人」と「環境に遭遇する人」がいる

「中途挫折する人」でも、「性格的に意志が弱い、優柔不断な人」もいれば、「そういう環境にばかりめぐり合わせる人」もいます。意志はむしろ強かったりするのに、誰が行っても倒産するような会社に不思議と出向する破目になったりするのです。

●トンネルの岩盤崩落事故のように、わざわざ車を飛ばして乗り遅れたバスに乗り込み、事故に遭遇した人もいれば、たまたまいつも乗っているバスにその日だけ遅刻して事故を免れた人もいます。あるいはジェットコースターでわざわざ席を譲ってあげて、事故に巻き込まれた人もいます。さらに予定していた飛行機に乗れなかったところ、その飛行機が墜落して助かったという人もいれば、ほぼ全員即死のような飛行機事故なのに命が助かった人もいます。

「試験時期に運が下がるサイクルの人」は練習に強く、本番に弱い人の典型となります。毎年のように1月の旧共通一次試験(現共通テスト)で1000点満点中920点前後(東大、国公立大医学部レベル)を取りながら、3月の2次試験の時に体調を崩して、惨敗し続けた人もいます。

「分かっちゃいるけど、やめられない」と言うように、「分かっていないから出来ない」場合よりも、「分かっているけど出来ない」場合の方が深刻です。「分かっていないから出来ない」なら、仕組み・理屈・筋道が分かればよいということになりますが、「分かっているけど出来ない」場合、例えば、中毒患者などもその害毒は分かっているわけで、単なる理解だけではどうしようもなく、現状分析、経緯分析、臨床事例、経過分析などによる「治療」が必要になるからです。


【ポイント】

 「運が悪い」「このままじゃ自分はダメだ」と感じたら、徹底した「自己分析」を開始する必要があります。




(2)「逆境」の時にこそ、その人の真価が問われる

春夏秋冬があるように、「順境」も「逆境」も1つのサイクルの中にある

●ビジネス・サイクルでも「導入期」「発展期」「成熟期」「衰退期」の4つがあることを知ることがカギです。「不動産で成功するカギは1にロケーション、2にロケーション、3にロケーション」と言われ、マクドナルドのビジネスですら、実は「ハンバーガーのビジネス」ではなく、「不動産のビジネス」「ロケーションのビジネス」と言われますが、一般的には「ビジネスで成功するカギは1にタイミング、2にタイミング、3にタイミング」とされます。かつて中国でエアコンを販売して億万長者になった人がいますが、今の日本やアメリカでエアコンを販売して大成功することは考えにくいでしょう。

●ライフ・サイクルでも春夏秋冬のリズムがあり、何やってもうまくいく「順境」もあれば、何やってもうまくいかない「逆境」があります。したがって、「順境」の時は自分の能力以上の結果が出やすいため、「謙虚」にならなければならず、逆に「逆境」の時は愚痴をこぼしたり、自暴自棄になってしまうことなく、積善の時、陰徳を積む時と悟って、むしろ「自己投資」に充てるべきです。間違っても、「新規拡大」的行動は取らないことです。それをやると、今度は「順境」が巡ってきた時に、使うべき「運の貯金」が無くなってしまいます。

●どんなに「運が悪い人」でも3度はチャンスがあり、どんなに「運がいい人」でも3度以上、そう何度もチャンスがあるわけではありません。したがって、ビッグ・ウェーブを逃すと大変なことになります。

●サイクルには3年・7年・10年などいろいろあり、「自己分析」によって「自分のサイクル」を見つけ出す必要です。船酔いしない人は甲板に立って、次に来る波を意識し、立ち向かう人だとされ、逆に船室に閉じこもっていると、波に対して受け身になるので、一発で悪酔いしてしまうものですが、同じように「来年は逆境だ。心してかからねば」と分かって臨む人は逆境を乗り切りやすいのです。「今年は逆境だ。あれもこれも集中して頭がちぎれそうだが、1年辛抱すれば、考えられないような展開で環境が一新される」「今は順調すぎて怖いぐらいだが、これがいつまでも続くわけがない。次に向けての布石をもう打ち始めよう」といった心構えも、「自分のサイクル」「自分のリズム」を知り、「順境」「逆境」の特徴を知っていれば自ずと身についてくるものです。


【ポイント】

「自分のタイプ」「自分のサイクル」を知ることが、「セルフ・マネジメント」「セルフ・プロデュース」の第一歩です。



「逆境の処し方」が「人間的成長」「飛躍」の土台となる

●健康で人間関係も順調、勉強も仕事もうまくいっているなら、頑張れない人はいません。したがって、目に見える「実績」だけで、その人の「人間性」「器量」を見ることは出来ないのです。

●病気でゴタゴタ続き、何をやっても裏目に出る時は、優秀な人であっても気持ちが折れやすくなります。したがって、「逆境」に対する免疫が無い人は「初めての挫折」「致命的挫折」になることすら起きるのです。

「電力の鬼」と呼ばれた松永安左エ門は、「ひとかどの人間になろうと思ったら、次の3つの経験をすることだ。それは、第1に、死ぬような大病をすること。第2に、浪人してその悲哀を身にしみて知ること。第3に、監獄のクサイ飯を食うこと、この3つだ」と言いました。

●昔は、一流企業のトップになる人ほど、「左遷」の経験者が少なくありませんでした。中国でも昔から、将来有望な人材はいったん地方に「左遷」して、さんざん苦労させた挙句、中央に呼び戻して抜擢するのが定石でした。

「逆境」の時は結果を求めてあせってあれこれ手を出したくなりますが、「逆境」の特徴は「非常にあせること」です。しかし、すぐに結果が出ないとしても、「やれる限りのことをやり尽くす」「最善を尽くす」という基本姿勢を貫かなければなりません。

「逆境」の時はやらなければいけないこと、課題、トラブルなどが殺到・集中しやすい時期でもあります。「何から手をつけたらいいのか分からない」「頭がパンクしそう、胃が痛い」といった状況になりやすいものですが、これは視点を変えれば、一気に多くの課題を乗り越えられる時でもあるので、基本姿勢としては「全部やる、片付ける、やり遂げる!」ということになります。そもそも、1つ1つ課題が起こってくれば、ちんたらちんたら乗り越えることになって、時間がかかります。そして、「優先順位」のつけ方は、「最低限絶対必要なもの」から手をつける場合と、「片付け易いもの」を片っ端から片付けていって、時間をかけて取り組むべきものにたっぷり時間をかける場合と2通り考えられます。


【ポイント】

 逆境の只中では結果や見返りを求めず、最善を尽くし続けることが必要です。試練が集中することは一気に局面を打開するチャンスでもあるので、「極は極に通ずる」という現象も起きる時期となります。




(3)「ツキ」をもたらす「性格転換」と「人間関係転換」

「性格転換」の基本技術に習熟すると「ツキ」を呼び込める

「性格」「言動」(言葉と行動)→「生活」「運命」というパターンが「人」を作ります。「固有の運命」には「固有の生活パターン」が伴っていることが多く、金持ちには金持ちの生活パターンが、貧乏人には貧乏人の生活パターンが、人から好かれやすい人には好かれやすい人の生活パターンが、孤独になりやすい人には孤独になりやすい人の生活パターンがそれぞれあるものです。例えば、「金持ちはケチ」なのではなく、「ケチだから金持ちになれる」のです。そして、「生活パターン」「特有の言動」を伴いやすく、「言動」には「性格傾向」が反映されやすいのです。したがって、端的に言えば、「運命とは性格である」「性格を変えれば運命を変えることが出来る」とも言えるのです。

「運命は性格の中にある。」(芥川龍之介)

「人間の運命はその性格の結果である。」(エマーソン)

「心が変われば、行動が変わる。行動が変われば、習慣が変わる。習慣が変われば、人格が変われば、運命が変わる。」(松井秀喜を生んだ石川県星陵高校野球部部室の壁に掲げられている言葉)

「性格」の3要素は「知」「情」「意」であり、それぞれの特質や比重の違いが「個性」として現われるので、「性格分析」「タイプ論」から始まり、「性格転換」「知的アプローチ」「情的アプローチ」「意的アプローチ」の3つを駆使することとなります。

「知的アプローチ」のキーワードは「意識」であり、「マイナス言葉」を絶対に口にしない、「プラス言葉」を意識的に使うといった「言葉のコントロール」による「発想の転換」から始まります。「マイナス言葉」には不安、自信の無さ、優柔不断、責任転嫁、恨み、嫉妬などの「マイナス情念」が、「プラス言葉」には感謝、やる気、喜びなどの「プラス情念」が背景にあるので、元々そういう感情を持っていなくても、「マイナス言葉」を使っていれば「マイナス情念」が知らず知らずのうちに引き出されるようになり、「プラス言葉」を使っていれば「プラス情念」が引き出されるようになるのです。さらに「希望(現実的可能性、実現可能性)を見つけ出す訓練」によって、「やっぱり希望だ(実現できるんだ)、プラスだ(いい方向に向かっているんだ)」ということを確認することを重ねていけば、結果として「プラス情念」が定着することとなります。

「情的アプローチ」のキーワードは「人間関係」であり、「家庭」における父と私、母と私、兄と私、姉と私、私の弟、私と妹という6種類の基本的関係」の修復・充実がカギとなります。実際の関係で親や兄弟が存在していても、本来的ではなく歪んでいたり、傷を負う原因になったりすることもあり、欠落している場合ともども、「社会的関係」の中で修復・充足することが必要になってきます。すなわち、「お父さん的存在」「お母さん的存在」「お兄さん的存在」「お姉さん的存在」「弟的存在」「妹的存在」が重要であるということです。

「意的アプローチ」のキーワードは「経験」であり、「取り柄を伸ばすこと」「苦手をつぶすこと」の両立が肝心です。「好きなこと」「やりたいこと」ばかりやっていると性格的にはいびつになります。20代まではむしろ訓練として「苦手なこと」「やったことのないこと」に積極的に取り組むべきです。

「生活パターン」でさらに見逃せないのが、規則性、運動の有無、柔軟性、食生活、環境などの「生活習慣」です。


【ポイント】

 「性格転換」に必要なのは「プラス言葉の使用→希望の発見→確信の強化」「家庭的基本関係の充実(修復・充足)」「苦手なこと・やったことのないことに取り組む」の 3 つです。



「人間関係転換」の基本技術に習熟すると「ツキ」を呼び込める

「人から学ぶ」気持ちがあれば誰とでも合うもので、「聞き上手」「質問上手」「議論上手」という3段階になります。「話し上手」になるより、「聞き上手」になる方が簡単で、誰にでも出来る方法です。そして、一方的、聞きっ放しになるのではなく、「ピンポイント」で質問をする「質問上手」になることが出来れば、聞く立場でありながら、相手にもプラスを与えることが出来るようになります。そして、継続的に「ピンポイント質問」を発することが出来るようになれば、それほどしゃべらなくても、「議論上手」になる道が開かれてくるわけです。

「運命の反復」(離婚、自殺など)や「トラウマ」(精神的外傷、心の傷)を解決するためには、「同じ立場」を再現して、「逆の立場」で引っくり返す「やり直し」「元返し」が必要です。

 例えば、「殺人者の心理」を迫真の筆で描いたドストエフスキーは、先祖に多数の殺人者と聖職者がいたことが知られています。ドストエフスキー自身は実際に殺人を犯したことはありませんが、いくつもの小説の中で「殺人者」「心の清い信仰者」が登場して激しい葛藤を演じているのは、「運命の反復」現象と見られています。ドストエフスキーはここで「昇華」することが出来たがゆえに、実際に殺人を犯すことはありませんでしたが、「昇華」出来なければ、先祖と同じことを繰り返した可能性があります。また、両親が離婚していると、子供が離婚するリスクも高くなりますが、子供は両親が陥った状況・心情を通過する可能性があることを熟知して、意識的努力をしないと、「運命の反復」が起き得るのです。

 また、「人間関係は人間関係でしか買えない」と言われるように、親子関係や友達関係、男女関係などで傷を負った場合には、同じように親子関係・友達関係・男女関係で修復・充実をする以外に道がありません。ただ、不思議なことに、父親との関係が悪い人なら「父親的存在」「父親との関係を修復するための人物」というように、「必要な時に必要な人」と出会っていることが多くあり、こうした「出会いの意味」「出会いの必然性」(これがすなわち「縁」です)を見抜けないと、チャンスを流してしまうことになってしまうのです。

「自分よりもっと悲惨な立場から這い上がってきた人」「メンター」(指導教師)になります。そして、「メンター」に恵まれた人は自分自身も「メンター」にならなければなりません。親やメンターへの「恩返し」は不可能であり、「恩返し」は子や次の人へするものだと考えるべきです。

「してもらってうれしかったこと」はプラスα(自分なりの工夫)を加えて人にもしてあげる、「してもらえなくて(されてしまって)悲しかったこと」は絶対に人にしない(自分の所で終わらせる)という2大原則が「人間関係」を劇的に変えていきます。


【ポイント】

 「人間関係転換」に必要なのは「聞き上手→質問上手→議論上手」「やり直し・元返し」「恩返し+悲劇の連鎖の断ち切り」の3 つです。




(4)人生の「節目」となる進学・就職・結婚という「選択」

人生は「選択」の連続である

「選択」「被選択」「不可選択」の3つがあり、能動的・意識的に変えられるのは「選択」です。「選択」には「能力」が大きく作用し、「被選択」には「徳」「縁」が関与し、「不可選択」「宿命」「受容」しかありません)としか言いようがないのです。

「選択」には、なぜこっちにするかという根拠である「選択基準」が前提にあり、「選択基準」は何となくか、必然的にこうかの違いである「絶対観念の有無」によって左右されます。

「成功者」ほど「決断に至る時間」が短いものです。同じ判断材料を使って、同じ結論に到るならば、それに要する時間は短ければ短いほどいいというわけです。

「進学」「就職」「結婚」などは「選択」のみならず、「被選択」も重要であり、両者の根底にはやはり 「運

が存在・介在しています。実は「選択」といっても「能力」一辺倒ではなく、例えば「夫婦運」が悪い人はよりによって、そういう相手・そうなる相手をわざわざ選んでしまうのです。客観的に見て「いい人」ではなく、逆にそういう人は「何となくムシが好かない」といって選ぶことが出来ず、自分の「夫婦運」に沿った相手を選んでしまうのです。これが、「自己分析」のメスが「潜在意識」「深層意識」にまで向けられなければならない理由であり、「我知らず、何となくそうなる」「なぜだか特定の人に惹かれる」ということに対しても、「それが自分なんだ、自分らしさなんだ」と受け止める前に、「なぜ、そうなのか、なぜそういう特定の傾向を持つのか」と意識的・自覚的努力をする必要があるのです。

●マリリン・モンローは男性遍歴が激しかったことで知られていますが、実は彼女が無意識のうちに求めていたのは「男性」でも「恋人」でも「夫」でもなく、「父親」だったと言われています。彼女も相手もそれに気付くことなく、ただ、パートナーの「男性」「恋人」「夫」は知らず知らずのうちに「父親」たることを要求されており、いつしかその重荷や食い違いに耐え切れなくなって、別れてしまったのです。マリリン・モンローも「この人かも、今度こそこの人かも、この人に違いない」と毎回信じ、期待しながら失望していったわけですから、「意識的・自覚的に求めているもの」「無意識的・無自覚的に求めているもの」が食い違った所(「代償」)に悲劇があったと言えるでしょう。

 あるいは、妻子ある男性とばかり恋に陥る女性もいますが、その男性が本気になって妻子まで捨てて「一緒に暮そう、結婚しよう」と言ってくると、途端に熱が冷めてしまうというケースも実に多く見られます。これはその男性に惹かれていたのではなく、その男性が「父親」であるが故に惹きつけられていたということです。だから、妻子を捨てて「父親」から1人の「男性」になった途端、なぜだか知らないうちに惹かれなくなってしまうのです。ここから男性の側が「オレはここまでやったのに」と深い恨みを抱き、首吊り自殺をしたケースもあります。およそ自殺の中でも首吊り自殺は、第一発見者に対する強い恨みの表示であると言われています。


【ポイント】

 「選択」するための「能力」を高めると共に、「被選択」のための「徳・善を積む」「縁を求める・大切にする」ことが大切です。さらに「自己分析」を「潜在意識」「深層意識」まで掘り下げないと、「自分が選んでいる」ように見えて、「選ばされている自分」がいることに気づくことが出来ません。



「進学」「就職」「結婚」は人生を大きく左右する「節目」となる

「進学」「就職」「結婚」「熟慮断行」すべき3大ケースです。これらは「人生の節目」とも言うべき大事件ですから、逆にこれらをうまくクリアすれば、その人の人生は「順調」と言ってよいでしょう。

 特に「結婚」はその影響力が桁外れに大きく、これは「結婚」が2人の人生の融合のみならず、2つの家庭・一族の接点ともなるため、大変なエネルギーの交差点となりやすいからでもあります。2人の間では単に「好きだから結婚する」ぐらいにしか考えていなくても、実際は全くそうではありません。「恋人」は私的・個人的関係ですが、「夫婦」は公的・社会的関係なのです。ちなみに「愛人」は私的・反社会的関係と言えるかもしれません。

「ある大学に入れるかどうか」は最終的には「運」です。

20代の仕事」は一生の仕事になりにくい、「転職」は30代までにとよく言われます。20代までは基本的に「修行」と考えるべきで、逆に40代以降は「何事も勉強だ」とうそぶいている段階ではないでしょう。もう多方面・多年月にわたって経験を積み、訓練を重ねてきたものを、「専門分野」において集約・結実させなければならないということです。40歳にもなって「専門性=何が出来るのか、何が得意なのか、何なら誰にも負けないのか」が無いということは、「自分の顔に責任を持っていない」のと同じです。

 したがって、大きな方向転換をするとすれば、必然的に30代までとなってくるわけです。「独立起業」の場合であれば、30代までにリスクを取れなかった人は、40代になっておもむろに独立して企業するより、残り10数年をサラリーマンでいた方が「リスク管理」の点からも賢明とされます。もちろん、40代になってもチャレンジ精神・バイタリティ旺盛の人であれば、40代での方向転換もあり得るでしょう。

「天職」「与えられた仕事」をこなしていく中で「出会っていく」ものです。いわゆる「自分探し」も答えは遠い旅先にあるのではなく、むしろ「縁」あって出会った仕事上の要請に答えていくうちに、いつの間にか自分も気付いていなかったような適性や能力を発見していく中で、「これかな、ひょっとして自分のライフワーク、ミッションってやつかな~」と思えてくるのであって、最初からどこかにあるものではないということです。

 すなわち、自分の中にある「原石」を磨いていくことによって、「自己発見」していくものが「天職」と言えるのです。

1人」で成功した一流選手も、2人」で成功するのは簡単ではありません。

「夫婦」「家庭」「共同経営者」で、夫は営業、妻は総務であったり、夫はCEO(最高経営責任者)、妻はCFO(最高財務責任者)であったりするわけですが、「経営」に失敗すれば「家庭」も破綻することははっきりしています。


【ポイント】

 「進学」「就職」「結婚」という「人生の節目」をうまくクリアすれば、その人の人生は「順調」となります。特に重要なのは「結婚」です。




(5)「時」を見抜く目と忍耐力・吸収力・向上心がカギとなる

「時」の訪れは常にさりげないものである。

「決定的な出会い」「飛躍の原点」も、最初は「小さな出会い」「小さな変化」「小さな第一歩」に過ぎません。

 ここで問題なのは、1年後、2年後、3年後には千里の差が生じる違いでも、最初の差はたった一歩に過ぎないのです。カオス理論では「初期条件のわずかな違いが決定的な違いを生む」として、これを「初期値鋭敏性」と呼んでいます。

「最初に心に浮かんだこと」「自分の行くべき道」を的確に示しているケースが多いものです。ほぼ8割方、答えは最初に出ているという指摘もあります。実は「内なる声」は最初に叫び、「理性」は後から追いついて、「それが出来ない理由」をいくらでも出してくるものなのです。これが「内なる声」「理性の声」の違いです。

●カウンセリングでもクライアントに「時」が来てしまったら(「機が熟す」ということです)、初対面だろうと2回目だろうと、一気に「真剣勝負」に踏み切らないといけないこともあります。

 ここで重要なのは「啐啄」(そったく)という概念です。卵の中のヒナ鳥が殻を破ってまさに生まれ出ようとする時、卵の殻を内側から雛がつつくことを「啐」といい、それに合わせて親鳥が外から殻をつつくのを「啄」と言うのですが、雛鳥と親鳥が内側と外側からつつくタイミングが一致することで、殻が破れて中から雛鳥が生まれ出てくるわけです。生まれる瞬間が分かるのは親鳥であり、その時に殻のどこが薄くなるかを分かって、そこにヒナ鳥を誘導するのです。これが人生の「節目」であるような「時」が来た時、しかるべき「場」に誘導するのが「天」(神)であり、だからこそ「天運」という言葉が出てくるのです。

●易学の大家で、「名人」と呼ばれた邵康節(しょうこうせつ)は朱子で頂点に達する「宋学」の主要人物の1人ですが、ある晩、門を叩く人があって、物を借りに来たというので、修行のために息子に占わせたと言います。

 後に「達人」と呼ばれるようになった息子は最初に一声があり、次に戸を叩いて五声があったことから卦(け)を取り、「剛金」が3つ、「長木」が3つ、象意として出たことから、「鋤(すき)です」と答えました。ところが、邵康節が息子を諭して言うには、「およそ易占を断ずるのには、数を論ずることも大切であるが、また、それ以上に理を論じ、考え合わせることも大切で、忘れてはならないことだ。今、卦を立てた、その道筋は正しいので、借りに来た物を鋤だと断じたことは誤っているとは言わないが、それだけでは理というものが忘れられていて、十分満足すべき判断とは言えない。今は夜なのであるから、夜に入ってから鋤を借りに来るということは普通にはないことで、今、借りに来た物は必ず斧であろう」というのです。果たして、門戸を叩いて物を借りに来た人は斧を借りに来たのでありました。夜になって寒くなり、薪を切ろうと思ったのですが、あいにく斧が壊れていたため、近くの邵康節の家に借りに来たということです。

 実に「名人」と「達人」の差が「斧」「鋤」の差なのですが、それよりも重要なことは「物事の変化」「機」と言います)の中に端的に「時の変化」(2つ合わせて「時機」と言います)が現われ、それを読み取る「カン」「直感」「直観」が磨かれる必要があるということです。


【ポイント】

 「小さな時の訪れ」を敏感に察知出来るようになると、「大胆な行動」も可能になります。逆に「時の変化」に鈍感なままであれば、「時」が過ぎ去ってみて(チャンスを逃してみて、失敗してみて)初めて悟ることとなるでしょう。



「忍耐力」「吸収力」「向上心」さえあれば、最終的には必ず発展する。

「忍耐力」があれば、1~1.5年(遅くとも3年)で「環境」の方が崩れていきます。

 井原西鶴の『西鶴織留』(さいかくおりどめ)に「石の上にも三年」という言葉が出て来ますが、俗語として伝えられているとありますので、当時の庶民達の経験則として広く理解されていたのでしょう。実際、逆境・逆運にある時ほど、あたかも「この状況が未来永劫にわたってずっと続く」かのような錯覚に陥り、絶望にかられてしまいがちですが、これはまさに人間の弱さであり、簡単にはまってしまう心理上の落とし穴です。

 逆に自分を高めてくれる「縁」を求め、「積善」の道を行き、「最善を尽くす(do one’s best)」ことを心がけていると、間違いなく3年以内に道が開かれるから不思議です。これはいくらそういうもんだと口をすっぱくして説明しても、自分で1度体験してみる以外に無いでしょう。そして、1度そうした体験を持つと、次からは試練・逆境を乗り越えやすくなるのです。

「吸収力」があれば、どんなに「道」が見えないような状況でも必ず「道」が見つかります。

  「素直」な人は実は「発展型の運」の持ち主と言えます。我が強く、自己主張の強い人は一見すごい実力者のように見えますが、実は吸収力に柔軟性が無く、自分に無いものをどんどん取り入れていく度量に乏しくて、いつしか伸び悩むことが往々にしてあります。これは「実力者が陥りやすい落とし穴」とも言えるでしょう。これに対して、年下からだろうが何だろうが、自分にないもの、必要なものは素直に頭を下げて吸収していく人は、一見柔弱に見えますが、実はそら恐ろしい人です。3年、5年経つと確実に発展・成長していくからです。大体、「人間は口が1つであるのに対し、耳は2つ与えられた」と言われるように、自分のことをペラペラ話す以上に人の話をよく聞いて、そこから多くを学んでいくという姿勢は人間の本性に適っているのです。

「向上心」があれば、自分に必要な情報・出会いと「縁」が生じるものです。

 札幌バンドの原点となり、札幌農学校で近代日本の方向性を左右するような多くの人材を育てたクラーク博士は、その別れ際に「少年よ、大志を抱け!」を青年達に叫びました。実はこうした志、夢、理想、目標を持つことは潜在意識を活用する第一歩であり、あらゆる成功のカギは「潜在意識を如何に有効に活用するか」ということに尽きるとさえ言われるほどです。

 摩訶不思議な「運」なるものが、生きて感情を持ち、言動と行動を通じて日常生活を営んでいる生身の人間の実人生とどこでどう接点を持ってくるかというと、これは潜在意識・深層意識を通じて表面化・顕在化してくると考えられています。具体的には潜在意識・深層意識が検索エンジンのように機能して、自分に必要な情報・出会いを探し求めるのです。かくして、禅の革命児・六祖慧能は「全ての幸福の生じる畑は心の中にある」と喝破しており、シェイクスピアも「全ての用意はできている。もしも心に用意があるなら」と言っています。ナポレオンなども「想像力が世界を支配する」と豪語しています。

「忍耐力」「吸収力」「向上心」の3つが揃えば、「発展型の性格」が生まれます。

 よく現状からの逃避のために未来の自分を過信することがありますが(「今年はもう時間がないから、大学受験は来年に回そう」「2年かけたら出来ると思う」)、「未来の自分の可能性の根拠は今の自分にしかない」という厳然たる事実を心に留めておくべきです。今、確実な一歩を踏み出していない人は、1年後だろうか、2年後だろうが、千里先のゴールには間違いなく到達していないのです。

 今現在の状況をきちんと分析し、限られた時間を有効に使うべく、優先順位をつけ、最大限努力するという「今の自分にできる限りのこと」をできない人が、時間が経てば自然にできるようになることなどあり得ません。「今の自分にできる限りのこと」をしている人であるならば、力及ばず、目標達成ができなかったとしても、それ以上のことはできないので、止むを得ないこととして納得することができます。少なくとも「やれるだけのことはやった」わけですから、「後悔だけはしない」ことになります。そして、こういう人ならさらに時間をかければ、より少ない時間の中ではできなかったことも、達成する可能性があると言えるのです。

  「座して死を待つより、いさぎよく打って出るべし」と兵法学でも言いますが、「やるべきことをやり切ってダメなのか」、それとも「ただ何となく今までの延長でやっぱりダメなのか」は、同じ「ダメ」でも次につながる可能性の有無が違うのです。やるだけやってダメな人なら、別な勉強・仕事・目標なら成功することがいくらでもあるでしょう。やるべきことをやってもみないでダメな人なら、何をやってもダメでしょう。それはやるまでもないことです。


【ポイント】

 孤独でもさえなくても実績ゼロでも耐え抜ける「忍耐力」のある人、「誰からでも学ぶことが出来る吸収力」がある人、今の自分ではダメだと感じていたり、「こうなりたい」という思いが強い「向上心」がある人は、「逆境」の中でも最終的には「発展」していく人達です。






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