科目別本格的勉強法:理科編

【物理】

 「力学」「熱力学」「波動」「電磁気」「原子物理」の5つの分野からなります。中学物理では「原子物理」を除く4分野について学び、高校物理では中学校で学んだ内容を一通りおさらいしつつ、範囲と内容が拡大・発展・深化していく所に特徴があります。ちなみに「力学」と「電磁気」が物理学の基本であるのに対し、「熱力学」「波動」「原子物理」は応用的な要素が強く、苦手になりがちです。

(1)中学物理
 「波動」では特に「光」と「音」にスポットを当て、「光の反射・屈折」「凸レンズと像」「音の三要素(高さ、強さ、音色)」を学びます。
 「力学」では「力の働き(物体を変形させる、物体を支える、物体の運動状態を変える)」「力の三要素(力の大きさ、力の向き、力の作用点)」「力の合成と分解」「力のつり合い」といった基本事項から、「質量と重さ」「重力」「垂直抗力」「摩擦力(静止摩擦力、動摩擦力)」「潮力」「弾性力」「圧力(水圧、大気圧)」「浮力」などの様々な力、及びそれに関連して「作用・反作用の法則」「フックの法則」「パスカルの原理」「アルキメデスの原理」などの法則・原理を押さえていきます。そして、物体の運動と力との関係から、「等速直線運動」「慣性の法則」「等加速度直線運動」「運動の法則」「運動方程式」などを学び、さらに「仕事とエネルギー」という観点から「仕事の原理」「仕事率」「運動エネルギー」「位置エネルギー」「力学的エネルギー」「力学的エネルギー保存の法則」などの基礎概念を学びます。
 「熱力学」は「仕事とエネルギー」の延長にあり、「熱と温度」「熱平衡」「熱量」「ジュールの仕事当量」「熱容量」「比熱」「熱量保存の法則」などの基礎概念を学んでいきます。
 「電磁気」では電気と磁気の性質を解明し、電気では「電流」「回路(直列回路、並列回路)」「電気抵抗」「オームの法則」「ジュールの法則」「(消費)電力」「電力量」などの基礎概念・法則を学び、磁気では「磁極」「磁力」「磁界(磁場)」「磁力線」「右ねじの法則」「フレミングの左手の法則」「モーターの原理」「電磁誘導」「発電機の原理」「直流と交流」などの基礎概念・法則を学びます。

(2)力学
 物理学はそもそも「力学」を基礎として組み立てられており、「力学」とは「物体がいつ、どこにあるかを予測する」「力とは何かを知る」ことを目的としています。したがって、ここで「等加速度運動の基本公式(位置の公式、速度の公式、位置と速度の関係)」「フックの法則」「力のモーメントの公式」「ニュートンの運動の3法則(慣性の法則、運動の法則、作用・反作用の法則)」「運動方程式」「ケプラーの法則(第1法則、第2法則、第3法則)」などを押さえ、さらに「重力」「垂直抗力」「張力」「摩擦力」「圧力」「浮力」「弾性力」「向心力」「慣性力」「遠心力」「万有引力」などの諸力の定義を確認していくことになります。そして、「仕事とエネルギー」「仕事の原理」「仕事率」「運動エネルギー」「位置エネルギー」「弾性エネルギー」「力学的エネルギー保存の法則」「運動量と力積」「運動量保存の法則」「反発係数」「等速円運動」「単振動」「単振り子」などへと、扱う対象と概念が発展・拡大していくわけです。 

(3)熱力学
 「熱力学」は「気体」を主に対象とし、熱と温度を力学的に説明するものです。「気体」が主役となるのは、産業革命以来、「理想のエンジン(熱機関)」を追求する中で「熱力学」が発達してきたという経緯によります。そこで、「熱量」「熱容量」「比熱」「熱平衡」「定積モル比熱」「定圧モル比熱」などの基礎概念を押さえ、「ボイル・シャルルの法則」「理想気体の状態方程式」「熱力学第1法則」「熱力学第2法則」「マイヤーの関係式」などを確認していきます。

(4)波動
 ここで「三角関数」を駆使することになるので、数学Ⅱで「三角関数」を学んでいることが前提になります。「周期」「振動数」「振幅」「波長」などを基本として、「波の重ね合わせ」「波の干渉」「波の反射(固定端反射、自由端反射)」「ホイヘンスの原理」「反射の法則」「屈折の法則」「波の回折」へと発展していきます。さらに音波の性質として、「音の三要素」「音の速さ」「音波の反射・屈折・回折・干渉」「うなり」「ドップラー効果」「固有振動」「共振と共鳴」などについて学び、光波の性質として、「物体の色」「光の速さ」「光の反射・屈折」「光の散乱・分散」「凸レンズと凹レンズ」「光の回折・干渉」などを学んでいきます。

(5)電磁気
 「電気」はきわめて身近な、生活に欠かせない存在であり、「磁気」と兄弟関係にあるので、セットで学んでいくことになります。まず、「電気」の基本として、「電流と電圧」「電気の仕事(消費電力)」「電気抵抗」「オームの法則」「電熱器の原理」などについて学び、さらに「電荷保存の法則」「クーロンの法則」「静電誘導」「電界」「電気力線」「ガウスの法則」「電位」「誘電分極」「コンデンサー」「電気容量」「誘電率」「直流回路」「キルヒホッフの法則」「ホイートストンブリッジ」「非線形抵抗」などへと、扱う対象と概念が発展・拡大していきます。また、「磁気」の基本として、「アンペールの右ねじの法則」「フレミングの左手の法則」「誘導電流」「モーターの原理」「発電機の原理」「変圧器の原理」などについて学び、さらに「磁気量」「磁界」「磁力線」「磁束密度」「透磁率」「ローレンツ力」「サイクロトロン運動」「ホール効果」「レンツの法則」「電磁誘導の法則」「渦電流」「自己誘導と相互誘導」「交流と交流回路」「共振回路」「振動回路」「電磁波の発生・伝播・反射・屈折・干渉」などへと、扱う対象と概念が発展・拡大していきます。

(6)原子物理
 「20世紀は物理学の世紀」と言われていましたが、それはこの「原子物理」分野の驚異的な進展によります。ここで「量子論」「光の粒子性と光電効果」「光量子」「仕事関数」「X線の波動性とブラッグ反射」「X線の粒子性とコンプトン効果」「物質波と電子線回折」「原子模型」「水素原子のスペクトル」「波動関数」「不確定性原理」「原子核の構造」「核力」「質量とエネルギーの等価性」「放射線と原子核の崩壊」「放射能と放射線の単位」「原子核反応」「核分裂と核融合」「素粒子」「4つの基本的な力」「宇宙論」といったテーマを学んでいきますが、これが大学での物理学に直結していきます。

【化学】

 「化学」は大きく「理論化学」「無機化学」「有機化学」の3つの分野からなります。基本概念としては「分子・原子の構造」「物質量」「化学反応式」「熱化学方程式」「酸と塩基」「酸化還元反応」などを最低限理解する必要があり、後は「個々の元素の単体及び化合物の性質」「有機化合物の特徴と構造」をメジャーなものから押さえていくことになります。特に炭素を中心とする有機化合物は、構造が知られているものだけで3,000万種以上あるとされ、炭素以外の100種ほどの元素の化合物をはるかにしのぐ多様性を持っており(人間も「炭素型生命体」です)、19世紀後半以降、隆盛となった化学工業も有機化学の発達がもたらしたものです。化学肥料、農薬、化学療法、化学繊維、プラスチックなど、「現代文明の豊かさを支えているものはまさに化学技術である」と言われており、物質の性質や変化の仕組みを解明してさらなる応用の道を開こうとするのが「化学」なる学問というわけです。元々、化学の母体は「錬金術」でしたが、現代化学の成果を見ると、これはまさに「現代の錬金術」と言ってもいいかもしれません。ちなみに日本は「化学」研究大国の1つであり、ここからまだまだノーベル賞が出て来るだろうと予想されています。  化学の本質はまさに「応用」にあるので、現実的生活・利用に結び付けて理解するのが近道です。また、化学は物理とも生物とも「相性」がいいため、総合的に学ぶと理解が深まりやすいメリットがあります。

(1)中学化学
 「実験器具の使い方」から始まって、「物質の三態」「代表的な気体(空気、酸素、二酸化炭素、水素、アンモニア、二酸化硫黄、硫化水素、塩素、塩化水素、二酸化窒素、一酸化窒素など)とその性質」「水溶液の性質(溶媒、溶質、濃度など)」「酸とアルカリ」「指示薬の変色」「中和と塩」「物質の分解」「元素・原子・分子」「化合物と単体」「同素体」「原子の構造」「イオン」「化合」「化学反応式」「中和反応と塩」「質量保存の法則」「定比例の法則」「倍数比例の法則」「酸化と還元」「化学変化とエネルギー」「イオン化傾向」「電池」「原子の電子配置と周期表」「イオン結合」「金属と反応」といった基礎事項を学んでいきます。

(2)理論化学
 「混合物の分離」「同素体」「炎色反応」「原子の電子配置と価電子」「イオン化エネルギーと電子親和力」「イオン結合・共有結合・金属結合」「元素の周期表と元素の性質」「典型元素・遷移元素」「アルカリ金属・アルカリ土類金属・ハロゲン・希ガス元素」「金属元素・非金属元素」といった基礎概念を学んでいきますが、中でも「原子量・分子量・式量」という「物質量」の概念を理解する上で欠かせない「モル(mol)」の概念だけは絶対にガッチリ押さえなければなりません。ここから「化学反応式と量的関係」が出てきて、「熱化学方程式」「ヘスの法則」「酸と塩基」「電離度」「水素イオン濃度とpH」「中和反応と塩」「中和滴定」「酸化還元反応」「酸化剤と還元剤」「金属のイオン化傾向」「電池の原理」「電気分解」といった内容を学んでいきますが、全て「モル(mol)」の概念が基本となっていることが中学化学との大きな違いです。さらに「化学結合(イオン結合・共有結合・配位結合・金属結合)」「分子間力(ファンデルワールス力・水素結合)」「物質の状態変化」「気体の圧力」「気液平衡と蒸気圧」「ボイル・シャルルの法則」「気体の状態方程式」「ドルトンの分圧の法則」「理想気体と実在気体」「溶解(溶解度・濃度)」「浸透圧とファントホッフの法則」「コロイド」「化学反応の速さ」「活性化エネルギー」「化学平衡の法則(質量作用の法則)」「平衡移動の原理(ルシャトリエの原理)」「電離平衡」「塩の加水分解」「緩衝作用」「溶解平衡と共通イオン効果」などへと、扱う対象と概念が発展・拡大していき、大学化学へとつながっていきます。

(3)無機化学
 元素は「典型元素」と「遷移元素」に分けられ、また「金属元素」と「非金属元素」に分けられます。「典型元素」では原子番号の増加と共に価電子の増加と共に価電子数が周期的に変化するので、周期表で横に並んだ元素の性質は規則的に変化し、また縦に並んだ元素(「同族元素」)は価電子数が等しいためによく似た性質を示します。「非金属元素」は全て「典型元素」です。また、「遷移元素は」原子番号が変わっても価電子数があまり変化せず、隣り合う元素の性質も似ているものが多くなります。こういった周期表に基づく元素の性質の説明が「無機化学」の主眼となります。
 具体的には「水素(1族)と希ガス(18族)」「ハロゲン(17族)とその化合物」「酸素・硫黄(16族)とその化合物」「窒素・リン(15族)とその化合物」「炭素・ケイ素(14族)とその化合物」「アルカリ金属(1族)とその化合物」「2族元素(アルカリ土類金属)とその化合物」「1、2族意外の典型元素(アルミニウム、亜鉛、スズ、鉛など)とその化合物」「遷移元素(3~11族、全て金属元素。鉄、銅、銀、クロム、マンガンなど)とその化合物」「水溶液中のイオン(塩化物イオン、硫化物イオン、水酸化物イオン、炭酸イオン、硫酸イオン、金属イオンなど)の反応」などが対象となります。

(4)有機化学
 構成元素として炭素を含む化合物を「有機化合物」として総称され(一酸化炭素や二酸化炭素、炭酸カルシウムなどの炭酸塩、シアン化カリウムのようなシアン化物は炭素を含みますが、「無機化合物」として扱われます)、構成元素の種類は少ないにもかかわらず、有機化合物はきわめて多様で、食品・医療品・医薬品の大部分も有機化合物でできています。
 ここで「炭化水素」(炭素と水素だけからできている有機化合物)を「飽和炭化水素」(炭素原子間の全ての結合が単結合)と「不飽和炭化水素」(炭素原子間に二重結合や三重結合を含むもの)、「鎖式炭化水素」(炭素原子が鎖状に結合。脂肪族炭化水素)と「環式炭化水素」(環状につながっている部分を含む)とに分け、「鎖式炭化水素」のうち飽和炭化水素を「アルカン」、二重結合を1つ含むものを「アルケン」、三重結合を1つ含むものを「アルキン」と呼びます。また、環式炭化水素のうち、飽和炭化水素を「シクロアルカン」、二重結合を1つ含むものを「シクロアルケン」と言い、これをまとめて「脂環式炭化水素」と言います。そして、「ベンゼン環」を含む炭化水素は特有の性質を示すので、「芳香族炭化水素」として別に分類されています。さらに「炭化水素基」(炭化水素からH原子が取れた原子団)にくっついた「置換基」として「メチル基」「アルキル基」などが挙げられますが、その中には「ヒドロキシ基」「エーテル結合」「カルボニル基」「カルボキシ基」「エステル結合」「ニトロ基」「アミノ基」「スルホ基」などのように、それらを含む有機化合物を特徴づける「官能基」と呼ばれるものがあります。こうして見ると、有機化学の特徴は如何に物質を「分類」し、その「構造」と「性質」を系統的に説明していくかという点にあると言ってもよさそうです。
 そして、「異性体」「構造式の決定」「付加反応」「重合」「高分子化合物」「アルコール」「アルデヒドとケトン」「カルボン酸」「エステルと油脂」「フェノール類」「芳香族アルデヒドとケトン」「芳香族カルボン酸」「芳香族ニトロ化合物」「芳香族アミン」などの個々の概念を押さえた上で、プラスチックの化学、食品の化学、衣料の化学、生命の化学、薬品の化学などへと応用されていきます。

【生物】

 「細胞の構造と働き」「生殖と発生の仕組み」「遺伝の法則と仕組み」「刺激の受容と行動」「恒常性維持のシステム」「植物と環境要因」などに関してポイントを押さえていくことになりますが、最大のポイントは「実験考察」でしょう。生物学的な発見の基となった歴史的実験について理解しておくのみならず、初見の実験に関しても「条件の制御」「実験目的」「検証結果」などについて見抜いていく必要があります。

(1)中学生物
 顕微鏡などの「観察器具の使い方」から始まって、「植物の構造・機能・分類」では「蒸散」「光合成と呼吸の仕組み」などを、「動物の構造・機能・分類」では「感覚器官と運動器官」「神経系」「消化と吸収」「呼吸」「血液の循環」「排出」などを特に重点的に押さえていく必要があります。 さらに「細胞の構造と機能」「生殖と遺伝」「食物連鎖と生物濃縮」「生態系と環境問題」といった基礎事項を学んでいきます。

(2)細胞
 「細胞の構造・機能」では「動物細胞と植物細胞の違い」「各細胞小器官の機能」「原核生物と真核生物」「酵素の働き」「細胞膜と浸透圧」、「細胞の増殖」では「細胞分裂」「染色体」、「細胞と生物の構造」では「単細胞生物と多細胞生物」「動物の構造・機能」「植物の構造・機能」などの基礎事項について押さえていきます。ところで、旧課程から現行課程に移行する時、この分野の難しい内容がほぼ生物Ⅱに移されたのですが、今回の新課程で戻ってきたり、さらに付加されているので、要注意の分野と言えるでしょう。具体的には「呼吸」「光合成」「窒素同化」などの「代謝」のメカニズムと、最新のバイオテクノロジーの内容をふまえた「遺伝情報の発現」です。

(2)生殖と発生
 「生殖の方法」では「無性生殖と有性生殖」「減数分裂の仕組み」、「動物の生殖と発生」では「配偶子の形成」「受精」「卵割」「胞胚の形成」といった各段階を押さえ、「モザイク卵と調節卵」「局所生体染色法と原基分布図(予定運命図)」「形成体と誘導」などの基礎概念を学んでいきます。「植物の生殖と発生」では「被子植物の生殖細胞の形成と重複受精」を重点的に扱い、「植物の器官の分化」まで押さえていきます。「核相とDNA量の変化」「外胚葉・中胚葉・内胚葉の形成と移動」「基礎概念が確立されるに至った歴史的実験」などはとまどいがちなので、よくよく理解してかかる必要があります。

(3)遺伝
 生物における最重要分野であり、この分野での質問が出たら、その人の生物の勉強は仕上がりに近づきつつあると言ってもよいでしょう。
 「遺伝の法則」では「メンデルの法則」(優性の法則、分離の法則、独立の法則)が出発点にあり、ここで「自家受精」「交配」「交雑」「純系」「対立形質」「遺伝子型と表現型」「一遺伝子雑種」「優勢形質と劣性形質」「対立遺伝子」「ホモ接合体とヘテロ接合体」「検定交雑」「二遺伝子雑種」といった基礎概念を押さえていきます。これによって「不完全優性」「複対立遺伝子」「致死遺伝子」「補足遺伝子」「抑制遺伝子」「条件遺伝子」といった所まで説明が可能になります。特に重要なのが「遺伝子型と表現型」の認識で、交雑の結果を表に書いて、その意味する所を見抜けるかどうかがカギとなります。
 「遺伝子と染色体」では「遺伝子の連鎖と組換え」「組換え価」「三点交雑」「染色体地図」「性染色体と伴性遺伝」などの基礎概念を押さえていきます。ここまで来ると、「遺伝子」の考え方では説明できず、「染色体」という考え方が必要になってくるわけです。
 「遺伝子の本体」では「DNA(デオキシリボ核酸)の発見」「形質転換」「DNAの構造」といった重要概念を学んでいきます。こうした重要発見はいずれも実験によるものなので、歴史的実験の意味を理解することが欠かせません。そして、さらに「DNAの複製」「RNAへの転写」「RNAの加工」「遺伝情報の翻訳」などへと発展していきます。

(4)動物の環境応答
 「刺激の受容と応答」では「受容器(感覚器)と効果器(作動体)」「神経系」「適刺激」「興奮」「閾値」といった基礎概念を学びますが、特に重要なのが「目」と「耳」という「光を受容する仕組み」「音を受容する仕組み」の理解です。「情報の伝達」では「神経細胞の構造」「静止電位と活動電位」「全か無の法則」「興奮の伝導」「神経伝達物質」「中枢神経系」「末梢神経系」「反射」「筋肉の構造」「筋収縮」といった基礎概念を学んでいきます。
 「動物の行動」では「生得的な行動」「習得された行動」「刷込み」「慣れ」「試行錯誤による学習」「条件づけ」といった基礎概念を学んでいきます。
 また、「内部環境の調節」では「恒常性(ホメオスタシス)」「体液循環」「血液の組成」「免役」「腎臓の構造・機能」「水星動物の浸透圧調節」「自律神経系による調節」「ホルモンによる調節」といった重要概念を学んでいきます。

(5)植物の環境応答
 「水の吸収と蒸散」「光合成と環境要因」「陽生植物と陰生植物」「発芽の調節」「屈性と傾性」「植物ホルモン」「頂芽優性」「花芽形成と日長」「果実の成熟」「落葉」などの基礎概念を押さえていきます。特に「植物ホルモン」の実験や「花芽形成」の実験は要注意です。

(6)生態系
 ここでは「生命の誕生と初期の生物界の変遷」「細胞の起源」「生物の出現と地球環境の変化」「真核生物の誕生と共生説」「地質時代と生物変遷」「植物の変遷」「動物の変遷」「人類の変遷」「生物の分類と系統」「個体群の構造と維持」「生物群集と生態系」「生態系の遷移と平衡」「生物多様性の保全」といった発展的内容を学んでいきます。

(7)生物から生物学へ
 生物学の源流は「博物学」と「生命論」にあるとされます。前者は「進化論」を生み出し、後者は医学の土台たる「解剖学」「生理学」にもつながっていくものですが、この2つが融合して近代生物学が誕生したというわけです。こうした経緯をふまえると、生物学の本質、特徴が浮かび上がってくると言えます。
 例えば、生命史的な観点で言えば、「生命の誕生」と「人類の誕生」という2大エポックの解明こそが生物学最大のロマンと言えるかもしれません。
 生物学史的に言えば、第2次世界大戦中に物理学と化学が高度に発達し、それまで未開の分野といわれていた生物学に、戦後、多くの物理学者が取り組むようになり、20世紀後半において「分子生物学」という驚くべき分野が開拓されていきました。実際、「20世紀前半の量子物理学の時代、後半は分子生物学の時代である」と言われており、さらに21世紀は「量子生物学」の時代であるとも見られています。これは「量子物理学」を化学の分野に適応して成立した「量子化学」と、メンデル以来の「遺伝学」を飛躍的に発展させたワトソン、クリック(彼らはDNAが二重らせん構造であることを突き止め、ノーベル医学・生理学賞を受賞しました。この二重らせん構造理論は分子生物学における「セントラル・ドグマ」〔中心教義〕と呼ばれます)に始まる「分子生物学」が融合する所に成立するものです。
 この「分子生物学」の爆風はすさまじいものがあり、ダーウィニズムからネオ・ダーウィニズム(総合進化説)に至っていた「進化論」にも影響を与え、集団遺伝学と分子生物学をドッキングさせた独創的理論である「中立進化説」(国立遺伝学研究所の木村資生によって提唱されました)はダーウィン理論を根底から覆すような成果を生み出しています。あるいは「母系遺伝であるミトコンドリアDNA」に着目したアラン・ウイルソン、レベッカ・キャン、マーク・ストーンキングらは、現生人類のルーツは20万年前にアフリカにいた1人の女性(「ミトコンドリア・イブ」と名付けられました)に行き着くという論文(「エデンの園仮説」「イブ理論」と呼ばれます)を発表して、世界中をアッと言わせました。これも分子生物学の応用です。最近では「ヒトゲノム解読」が記憶に新しく、ここから「バイオ・インフォマティクス」(生命情報工学)「バイオ・エレクトロニクス」(生命電子工学)が誕生し、「比較ゲノム学」「ゲノム疫学」「ゲノム創薬」「ゲノム薬理学」といった「ゲノム・サイエンス」が次々と生まれてきました。
 こうして見ると、生物学を学ぶ上で、「生命史」(遺伝子レベルでとらえる場合、「バイオ・ヒストリー」と呼ばれます)と「生物学史」をふまえ、「分子生物学」の成果に着目すると、その理解が格段に深まると言ってもいいでしょう。

【地学】

 地学は大きく分けて「地球物理学」(地球科学)と「宇宙物理学」(天文学)の2分野からなり、元々「物理学」の一部であったことが分かります。具体的には、「太陽系の天体」「地球の構造」「火山と地震」「地層と地質」「大気と海洋の構造」「地球と惑星の運動」「太陽の構造と活動」「恒星の性質と進化」「銀河系と宇宙」などに関してポイントを押さえていきます。地学は覚える量が少なくて済むので、コストパフォーマンスのいい穴場(投入した努力の割に得点で報われやすい)とされますが、一部に計算が必須だったり、理解が難しい分野があったりするので、決してナメてかかってはいけません。

(1)中学地学
 「大地の変化」として、「地震」「火山」「地層」の3分野を押さえ、「天気とその変化」では「天気図と気象」「気圧と風」「水蒸気と雲」「気団と前線」の4つを押さえていきます。「地球と宇宙」では「地球」「太陽」「月」「太陽系の天体」を押さえた上で、「天体の位置とその運動」を確認し、さらに「太陽系」を超えて、「恒星」「銀河系」「宇宙の広がり」まで目を向けていきます。

(2)地球物理学
 「地球の概観」では「惑星の内部構造」から「地球型惑星」と「木星型惑星」に分類し、「地球の誕生と特徴」「地球の形状」「地磁気」などについて確認していきます。
 「地球の内部構造」では「地震波」(P波、S波、初期微動継続時間)などの研究から、「上部地殻」(花こう岩質)、「下部地殻」(玄武岩質)、「モホロビチッチ不連続面」(モホ不連続面)、「上部マントル」(かんらん岩質)、「下部マントル」(結晶構造)、「グーテンベルク不連続面」、「外核」(液体)、「レーマン面」、「内核」(固体)といった層構造が明らかになっており、「アイソスタシー」(地殻の均衡)といった考え方も出てきました。
 「地球を構成する岩石」では「火山岩と深成岩」「等粒状組織と斑状組織」「色指数」「マグマの結晶分化作用」などを押さえて、「かんらん石」「輝石」「角閃石」「黒雲母」といった「苦鉄質鉱物」や「ケイ長質鉱物」などの組成から、「苦鉄質岩」である「玄武岩」(火山岩)や「斑れい岩」(深成岩)、「中間質岩」である「安山岩」(火山岩)と「閃緑岩」(深成岩)、「ケイ長質岩」である「流紋岩」(火山岩)と「花こう岩」(深成岩)などの「同定」(生物や鉱物の種類を判定すること)ができるようにならなければなりません。さらに岩石はマグマの貫入や造山運動などに伴う「変成作用」によって、「接触変成岩」「広域変成岩」といった「変成岩」を生じる場合があります。
 「地球の活動」では「プレートテクニクス」に関して、「プレート」「アセノスフェアとリソスフェア」「中央海嶺」「海溝」「トランスフォーム断層」「トラフ」といった基礎概念を押さえ、「火山活動」では「火山前線」(火山フロント)といった基礎概念と共に、「溶岩台地」「楯状火山」「成層火山」「溶岩ドーム」「火山岩塔」といった火山の形の分類と具体例を覚えていく必要があります。そして、「地震活動」では「震度とマグニチュード」「本震と余震」「深発地震」「液状化現象」といった基礎概念を押さえていきますが、時事的にも要注意の分野でしょう。
 「地層の形成」では、「浸食作用」による「V字谷」「海食崖」「海岸段丘」、「堆積作用」による「扇状地」「三日月湖」「三角州」、「カルスト地形」である「鍾乳洞」、「氷河地形」である「U字谷」「カール」(圏谷)、生物が作る海岸地形として「さんご礁」「マングローブ海岸」などを押さえ、さらに地層の形成・変動に関して、「級化層理」「斜交葉理と斜交層理」「層理面」「走向と傾斜」「地層累重の法則」「整合と不整合」「かぎ層」「地層の対比」「褶曲と断層」「土石流と地すべり」といった基礎概念を押さえていく必要があります。また、野外調査に関連して、「クリノメーターによる走向・傾斜の測定」「ルートマップと地質図の読み方」は要注意です。
 「化石と地質時代」では、「先カンブリア時代」「古生代」「中生代」「新生代」の各地質時代の特徴(「エディアカラ化石群」「カンブリア紀の大爆発」「石炭紀」「恐竜の時代」「ほ乳類の発展」「人類の出現」「氷河時代」など)と、その時代を決定する「示準化石」とその地層ができた環境を示す「示相化石」を押さえていきます。こうした化石による地質時代区分が「相対年代」であるのに対し、「放射性同位体」の「半減期」を使った「絶対年代」である「放射年代」の測定も重要です。
 「大気・海洋の構成」では、「大気の構造」「海洋の構造」「太陽放射と地球の熱収支」「転向力(コリオリの力)と気圧傾度力」「地衡風と傾度風」から「大気の大循環」(ハドレー循環、ジェット気流、偏西風波動、ロスビー循環など)、「海水の大循環」(亜熱帯還流、西岸強化、中層循環、深層循環など)、さらに「乾燥断熱減率と湿潤断熱減率」から「雲の発生」、「フェーン現象」などを押さえていきます。また、「寒冷前線と温暖前線」「閉塞前線と停滞前線」「高気圧と低気圧」「春夏秋冬の気象」「梅雨前線」「台風」「海風と陸風」といった「天気」の基礎事項から、「エルニーニョ現象とラニーニャ現象」「地球温暖化」「酸性雨」「ヒートアイランド」「オゾンホール」といった環境問題まで広く扱っていきます。

(3)宇宙物理学
 「地球の運動」に関連して、「恒星の日周運動」「フーコーの振り子の実験」「太陽の年周運動」「天球上の黄道、春分点、秋分点、夏至点、冬至点」「光年とパーセク」「年周視差」「年周光行差」「平均太陽時と均時差」「世界時と標準時」などの基礎概念を押さえていきますが、特に「天球」の理解が重要です。
 「惑星の運動」に関連して、「順行と逆行」「外惑星と内惑星」「合と衝」「最大離角」「会合周期」を学び、「ケプラーの法則」(だ円軌道の法則、面積速度一定の法則、調和の法則)を押さえていきますが、特にケプラーの第三法則(調和の法則)「惑星の太陽からの平均距離(=だ円軌道の半長軸)aの3乗は惑星の公転周期Tの2乗に比例する」は実際に応用計算ができなければなりません。
 「太陽の構造と活動」では「黒点」「白斑」「紅炎(プロミネンス)」「コロナ」「太陽スペクトル」「フラウンホーファー線」「核融合反応」「フレアとデリンジャー現象」「太陽風」「磁気圏と磁気あらし」「バンアレン帯」などの基礎概念を押さえていきます。
 「恒星の明るさと性質」では、「見かけの等級と絶対等級」「恒星のスペクトル型と表面温度と色」「ウィーンの変位則」「シュテファン・ボルツマンの法則」「恒星のHR(ヘルツシュプルング・ラッセル)図」「主系列星・巨星・白色わい星」「連星(主星・伴星)」「食変光星」「質量光度関係」などを押さえていきますが、特に「HR図」の理解は絶対に必要です。
 「恒星の誕生と進化」では、「星間物質と星間雲」「散光星雲と暗黒星雲」「原始星と赤外線星」「白色わい星と赤色巨星」「変光星」「新星と超新星」「中性子星とパルサー」「ブラックホール」などの基礎概念を押さえていきます。恒星の質量によって、その終末の姿が変わってくることが要注意です。
 「恒星の種族」では、「散開星団と球状星団」「種族Ⅰ(第一種族)と種族Ⅱ(第二種族)」などの基礎概念を押さえていきます。
 「銀河系の構造」では、「バルジ」「円盤部」「ハロー」「星間ガス」「クェーサー」「泡構造」「赤方偏移」「ハッブルの法則」「ビッグバン」などの基礎概念を学んでいきます。この分野は進展著しい天文学の成果がふんだんに取り入れられている分野です。

(4)地学から宇宙論へ
 地球も宇宙を構成する惑星の1つであり、「宇宙創成」の一部が「地球創成」でもあるわけですから、広い意味で「宇宙論」と位置付けてもいいかもしれません。そうすると、「宇宙論の歴史」を知ることが大きな意味を持ってきますので、次のことぐらいは知っておきたいところです。

①ビッグバン理論
ハッブルの法則(1929年)~「赤方偏移」(変光星のスペクトル分析をすると、どの星も色の成分が赤い方に向かって相対的に同じ大きさだけずれている現象)+「ドップラー効果」(音源や光源が観測者に対して相対的な運動をする時、観測される波の振動数が規則的に変化することを示した物理法則)→全ての星が地球から遠ざかっており、遠くにある星ほど遠ざかるスピードが速い(赤方偏移の割合は銀河までの距離に比例し、銀河の後退速度もその距離に比例する)→膨張宇宙論「宇宙は膨張している」
ビッグバン理論(1948年)~ガモフ(←フリードマン)、宇宙は100~200億年前に超高温、超高密度の火の玉のような状態から爆発してできた⇔定常宇宙論(ホイル、仏教の輪廻宇宙論もこれに通じる)
宇宙背景放射(宇宙黒体放射)の発見(1965年)~ビッグバンの名残としてのマイクロ波の検出→ビッグバン理論がほぼ確定的になりました。

②インフレーション理論
インフレーション・モデル(1980年)~ミクロ的な量子宇宙とビッグバン以後のマクロ的宇宙との橋渡しの理論。ビッグバン理論が抱える「地平線問題」(宇宙はなぜこれほど一様で等方的なのかという問題。ビッグバン理論では、宇宙の誕生時には物質やエネルギーの密度のゆらぎ〔でこぼこ、これが後の銀河の種子になったと考えられます〕があったはずですが、宇宙背景放射はきわめてムラの無い一様な状態であることが判明し、これは宇宙がその誕生時には密度が非常に均一であり、銀河の種子が無かったことを意味します。これに対して、インフレーション・モデルでは急膨張以前の段階でこうした均一性がチューニングされていたとしています。ちなみに1989年に打ち上げられた宇宙背景放射探査衛星COBE〔コービー〕によって、それまで見つからなかった宇宙背景放射の微妙なゆらぎを発見し、宇宙の初めには確かに銀河の種子があったことが証明され、ビッグバン理論に強力な裏付けを与えたのです)と「平坦性問題」(観測によれば、宇宙の曲率は限りなくゼロに近い所にあり、宇宙はなぜこんなに平べったいのかという問題。確率論的にはほとんどゼロに等しい現象とされます。これに対して、インフレーション・モデルでは宇宙も初期には曲って見えたかもしれないが、インフレーションによる急激な膨張でそのゆがみが引き伸ばされ、今、観測できる限りの範囲では平らに見えるようになったとしています)、さらに大統一理論のネックとされる「モノポール問題」(大統一理論によれば、真空の相転移の理論的帰結として様々なモノポール〔磁気単極子〕が存在し得るが、未だに見つかっていません。これに対して、インフレーション・モデルでは今日の宇宙はたった1つの対称性が破れた場から、言い換えれば、無数にできた真空の泡の1つから急膨張によって生まれたもので、モノポールは存在しないとしています)の3つが理論的には一気に解決されたと言われています。

③宇宙誕生後の宇宙創成のプロセス
 (1)10-44秒後 重力が他の力から分かれました(これ以前が「超大統一理論」の世界、プランク期と言います。「超弦〔ひも〕理論」はこの時期を扱っています)。
 (2)10-36秒後 強い力が分かれました(ここまでが「大統一理論」の世界、GUT期と言います。インフレーション・モデルがこの時期を扱っています。GUT期が終わる10-33秒後当たりをビッグバンと呼びます)。
 (3)10-11秒後 弱い力と電磁力が分かれました(ここまでが「電弱統一理論」の世界)。
 (4)10-4秒後 クォークが結合して陽子と中性子ができました。
 (5)3分後 軽い原子の原子核ができました。
 (6)30万年後 原子ができました。

④宇宙論の諸問題
宇宙の大規模構造~グレート・ウォール(銀河の密集した部分が3億光年もの長きにわたって延々と並んだ、壁のような大構造を作っていることが分かりました)
グレート・アトラクター~我々の属している局所銀河団を膨大な重力で引っ張る(「ストリーミング運動」)超銀河団の存在→スーパー・アトラクター(超々銀河団)→スーパー・クラスター複合体
ボイド(泡)~スーパー・クラスター同士の超大構造の間隙に延々と広がる、ほとんど全く物質の存在しない広大な空間。
ダークマター(暗黒物質)~宇宙における全物質(銀河や超銀河団)を分布し、集合させているエネルギーを現在の観測事実に矛盾することなく算出すると、宇宙の90%以上もの未知なる物質の存在を想定しなければなりません。

⑤人間原理宇宙論
基本物理定数~重力定数、光速度、プランク定数、電荷、電子質量、陽子質量、中性子質量など。この中の1つでもわずかでも違っていたら、宇宙も星も生命も人間も存在し得なかったとされます(例えば、重力定数が現在よりわずかでも大きかったら、全ての星は短期間で燃え尽き、惑星上で生命が進化する時間はありませんでした。逆に重力定数がわずかでも小さかったら、宇宙には暗い星しか存在しませんでした。また、原子核の中で陽子や中性子を結び付けている核力が数%でも大きかったら、宇宙には水素原子がほとんど存在せず、生命に必要な水も無かったのです。逆に数%でも小さかったら、宇宙には水素原子しかなかったとされます)。
人間原理~「物理定数が現在あるような値を取っているのは、そうでない限り宇宙に生命が誕生できず、したがってその問いを問うている私達も存在し得なかったからだ」、「宇宙意志」の存在。
弱い人間原理(ディッケ)~「私がいるから宇宙はかくある。」
強い人間原理(カーター)~「私が問うから宇宙はかくある」「我思う、故に宇宙あり。」



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