「教育心理学と学習心理学の応用編」

1、「心のバリアフリー」と「潜在意識の活用法」が欠かせない

●「心のバリアフリー」とは、どうせやるなら「出来ると思え!」から始まる

「頑張る」のは当たり前、「出来る」と思え =試験勉強・受験勉強において、「頑張る」のは当然ですが、「頑張っているのに、いつまで経ってもそれほど出来るようにならない」ということは往々にしてあります。これは頑張り方が足りない場合(「絶対量の不足」)もありますが、いつも同じような所で留まっていて抜け出せないでいるケースも多く、頑張っていないからというより「ただ一生懸命やっている」ことに問題があるのです。したがって、ただ「頑張るぞ、頑張るぞ」と自分に言い聞かせるより(そのうち「頑張る気力」が薄れてきます)、「出来る」と思ってやるという「取り組み方」「心の持ち方・基本姿勢」と、ただ「一生懸命やる」というより、「結果の出る効率的なやり方」の2つを知る必要があるのです。

【ここに注目!】

金持ちになるための教えに関する本を何冊も書いて有名なあるコンサルタントは、セミ・リタイアした時の収入が7億円だったと言われますが、「自分の娘は何でも出来ると思いますよ。なぜなら、成功する秘訣を僕が教えたから」と言っています。それは「何でも出来ると思ってやる」ことであり、何となく出来たらいいなというあいまいな願望でもなく、こうならないかなという淡い期待でもないというのです。

あるいは語学の天才を何人も育ててきたあるインターナショナル・スクールの園長先生も、「語学上達の秘訣は簡単。心の壁を壊すだけ。自分は全然出来ないんだとか、苦手だとか、そういう心の壁がなくなった途端、語学は確実に上達する」と言っています。


●「潜在意識の活用法」とは、「プラス言葉」「願望・目標のノート記入」から始まる

「潜在意識」の活用 =あらゆる成功術の基本原則(「マーフィーの法則」とも言います)。多大な成功を収めた人で、「潜在意識にまいた種が時間と共に結実する」という法則を活用していない人はいないでしょう(ビジネスの世界では、年収2,000万円以上の人でマーフィーの法則を実践していない人はいないと言われます)。したがって、どうせ勉強をするなら、「自分は必ず出来るようになる。絶対得意になれる!」という「プラス言葉」の種をまいてやるべきです(何となく「出来たらいいな」とか、漠然と「出来るようにならないかな~」ではありません)。これには元手ゼロで済む。間違っても「自分は勉強が苦手だ、何年やっても出来なかった、果たしてこれから何とかなるだろうか?」という諦め・不安の種や、「負けないぞ、落ち込まないぞ、メゲないぞ」といった一見ポジティブ・本質ネガティヴ(負ける+でもそうしないぞ、落ち込む+でもそうしないぞ、メゲる+でもそうしないぞ)な種をまいてはいけません。それらも時間と共に結実するからです(潜在意識は善悪を選ばないのです)。

そして、「潜在意識」にまく「種」の「結実」を強化するのが「ノートに書くこと」です(「カタチ化する」「表現する」ということです)。脳科学的にはこの作業によって、脳が検索エンジンのように始動し、「必要な情報」を集めてくると説明されます。したがって、「目標」「計画」は紙に書け、ノートに書けということになります(何度も修正しながらです)。

【ここに注目!】

「僕の夢は一流のプロ野球選手になることです。そしてその球団は、中日ドラゴンズか、西武ライオンズです。ドラフト入団で、契約金は、1億円以上が目標です。」(イチローが小学6年生の時に書いた日記)


2、「ニーズの把握」と「ウォンツの増幅」が欠かせない

●「ニーズの把握」とは、「なぜこれをやらなければならないか」(やらねばならない)という意義の明確化である

「ニーズ」とは必要性・必然性 =同じ勉強をするにしても、なぜこの試験を受けなければならないのか、なぜこの勉強をしなければならないのか、という意義を分かってやっているのか、ただやみくもにやっているのかで大きな違いで出てきます。長丁場になればなるほど、あるいは難関試験であればあるほど、中だるみやスランプに陥るものですが、そうした際に必要なのは「原点に返る」ことであり、こうした意義の再自覚、ニーズの再確認が欠かせないものとなってくるのです。

【ここに注目!】

「勉強」は教える側から見れば 教育」となり(人を教えるだけに限らず、「自己教育」という視点も重要です)、学ぶ側から見れば「学習」となりますが、ここで必要なのはティーチング・スキル、スタディ・スキル、コミュニケーション・スキルといった3つのスキルです。しかし、「ニーズを把握すること」「ウォンツを増幅すること」を知らなければ、これらは単なる技術論(数学の公式の上手な使い方、英単語の楽な覚え方など)となってしまいます。方法論が分かっていなくて勉強が進まない、学力が伸びないという人に対しては技術論が必要ですが、そもそもやる気が起きない、勉強が続かないという人に対しては、メンタル・マネジメント(心の持ち方、管理の仕方)を教えないとどうしようもないのなのです。いわゆるカリスマ講師とか受験の神様とか呼ばれる人の中には、キラー・コンテンツを駆使する「スーパー・テクニシャン」もいれば、何となく話をしているだけで元気になる「やる気にさせる人」もいますが、前者は技術論に長けた人、後者はメンタル・マネジメントに長けた人と言ってよいでしょう。両方持っている人が理想なのです。


●「ウォンツの増幅」とは、「こうなるとどんなにいいことか」(やりたい)という気持ちの強化である

「ウォンツ」とは欲望・願望 =「ニーズ」を知的側面とすれば、「ウォンツ」は情的側面となります(一般的日本人にとって「米」はニーズ商品ですが、何の役にも立たない「AIBO」などは究極的なウォンツ商品です)。高額商品を買う消費者の心理は、お金があるから買うのではなく、買いたい気持ちが強いから買うのです(お金がなければローンを組んででも)。試験勉強も単に必要性・必然性といった意義のみだと息切れしてきますが、「これに受かったらこんなことが出来るぞ」「合格したら、まずこれをやるんだ」といった「合格後のイメージ」が強い人ほど、願望達成力が強いことはよく知られています。

【ここに注目!】

経営コンサルタントとして著名な神田昌典氏が食器洗い機(見た人は必ず「業務用ですか」と聞くほど巨大で、都市部のたいていの家には入らなかったそうです)を販売していた時、顧客ターゲットを「3~4人以上の家族、オープンキッチンで、少なくとも80平米以上のマンションもしくは一戸建て」と考えていたそうですが、実際に買った人を訪ねてみると、あにはからんや、アパート暮らしでキッチンも狭く、とても食器洗い機を置くスペースもないのに、喜んで使っていたと言います(食器洗い機を接続してスイッチを入れると出口をふさがれ、キッチンから出られなくなるので、いつも食器洗い機を乗り越えてリビングに出るというのです!)。つまり、金があるから、スペースがあるから買ったのではなく、金は無くても、スペースは無くても、欲しいから買ったのです。勉強も学力があるから、能力があるからやれるのではなく、学力がなくとも、能力がなくとも、そうなったらどんなにいいだろうという願望が強いからやれるのです。

あるいは「ドラゴン桜」なども「東大に1年で行ける」「こうすればゼロからスタートしても何とかなる」という方法論を示して、「自分には東大なんて絶対無理」「東大生と自分は別な世界」という先入観を突き崩し、「自分が東大に入れたら何とすごいことだろう」というウォンツをかき立てたわけです(もちろん最初に東大に行く必要性、必然性、ニーズを訴えていますが、ウォンツを増幅させるところまで行った時、初めて多くの人を揺り動かすこととなったのです)。


3、「目標の因数分解」と「報酬効果」は重要なポイント

●「目標の因数分解」とは、「1日の戦い」の具体化であり、妥協するかしないかの一線を決めることである

「現実的ポジティブ」は「今日1日の戦い」を明確にする =ただやみくもに「自分は絶対出来ますから!」と叫ぶのではなく(これを「思い込みポジティブ」「観念的ポジティブ」と言うが、最近増えつつある)、「これが出来るようになるためには、何を、いつまでに、どれくらい出来るようになっていなければならないか」という「目標の具体化」が必要です(「現実的ポジティブ」)。なぜなら、目標が具体的であればあるほど、現実化されやすくなるからです。逆にいつまでも出来ないでいる人、苦手なままでいる人ほど、具体的計画が無く、最終目標⇔長期目標⇔中期目標⇔短期目標が連動(「目標の因数分解」とも言う)していないことがしばしば見受けられます。したがって、1年・半年の目標、1ヶ月・1週間の目標、1日の目標を明確にするわけですが、肝心なのは「今日1日の戦い」なのです。実は難関試験を突破する人であっても、1日の勉強を比較すれば、それほど大それたことをしているわけではありません。ただ、「1日の戦い」が明確で、しかもそれを達成するために妥協しないという「ほんのわずかな違い」の積み重ねが、1週間後、1ヵ月後、半年後、1年後には巨大な差として現実化するのです。したがって、目標達成が出来るかどうかは、端的には「その日1日の戦いを見ればよい」ということになります。それほど多いとも高いとも言えない「1日の目標」(英単語を1日20個覚えるとか、英文法の問題を1単元やるとか、英文解釈の問題を1日1題やるとか)に対して、「妥協癖」「逃避癖」がついている人なら、何日やっても妥協・逃避の積み重ねであるし、「達成癖」「成功癖」がついている人なら、時間が経てば経つほど目標が現実的になってくるからです。これは「出来る!」という思いを、「1日の目標」を達成するという「1日の戦い」の中で、「出来た!」という「自信」「確信」に転換する作業(「出来る!」を確認する作業)と言ってもよいでしょう(練習問題、過去問題、模試なども「出来る!」を確認・強化するものと言ってよいでしょう)。

【ここに注目!】

「重要なのは、どんなに大きく見える作業でも、よく見れば細かい単位で構成されていて、細分化できることである。私はこれを因数分解と呼んでいるが、大きく見える作業ほど因数分解がしやすいものだ。なぜ細分化するかといえば、一つひとつの小さな単位なら、単位ごとに途切れ途切れでもできるし、ほかの作業の合間や、ときにはほかの作業をしながらでもこなせるからである。」(「資格三冠王」黒川康正~弁護士・公認会計士・通訳)


●「報酬効果」とは、「自分を喜ばせながら育む」ことである

区切りがつく前に遊べば逃避、達成後なら「報酬効果」 =勉強する前にちょっと一服する人は多くおり、途中の息抜きがついつい長くなって、いつの間にか1時間もおしゃべりしていたり、ついつい手を伸ばしたマンガ本を最後まで読んでしまったという人は後を絶ちません。実はこれらはいずれも逃避であり、勉強から来るストレス回避に他なりません。それで勉強の効率が上がるのならば意味がありますが、たいていの場合、より疲れた状態で勉強に臨むことになるので、逆効果なのです。勉強を推進する上では1単元終わったらお茶するとか、チョコレートを食べるとか、区切りの達成後に報酬を与えた方がより持続力、持久力をもたらすこととなります。これは動物に芸を仕込む作業と同じであり、報酬という喜びも無いのに芸を覚える動物などいないのです。自分を喜ばせながら育てる(セルフ・エデュケーション)ためには、節目節目での報酬が欠かせないのです。

【ここに注目!】

認知行動療法の1つであるセルフ・コントロール療法でも、「報酬効果」を利用した「自己強化」という技法があります。これは簡単な目標を立てて達成の自信をつけ、次第に目標の困難度を上げていき、目標を達成したら、ごほうびとなる行動を自分に許すというものです。目標を達成したら、言葉(ポジティブなセルフトーク)で自分をほめ、自己報酬を増やしていくわけですね。


4、「記憶のメカニズム」と「情報処理能力のアップ術」がカギ

●「記憶のメカニズム」として、「ワーキングメモリ(超短期記憶)の活用」を覚えなければいけない

「ワーキングメモリ」 (Working Memory)~「短期記憶」の概念をさらに拡大して、課題を遂行するために処理機能の役割を補充したもの。「作業記憶」「作動記憶」とも言います。従来は保持機能にのみ注目されていた「短期記憶」に対して、文の理解や推論など、より高次の認知機能と関連する保持の場として考えられ、目標に向かって情報を処理しつつ、一時的に事柄を保持する働きをしているのが「ワーキングメモリ」であるとされます。これはすでに学習した知識や経験を絶えず参照しながら目標に近づけるように、その過程を支えています。例えば、文を読む際には知識やエピソードを元にした長期記憶の検索を進めながら単語や文を理解しており、読み手は文を読む時に文理解の中心となるもの(フォーカス)を探していますが、ひとたび特定の単語を重要な情報であると判断すると、すかさず、それを中心として心的表象を構築するわけです。ここで如何に効率よくフォーカスを形成できるかが、文理解の効率を決定するのです。つまり、「ワーキングメモリ」は記憶の情報を使った知的活動(暗算、思考、推論、計画、問題解決など)の作業台であり、いわゆる「頭の良い人」は特に「ワーキングメモリ」を駆使することに長けている人と言ってもよいでしょう。ちなみにヒトと相同な「ワーキングメモリ」を担う「脳」部位は真猿類にしかないので、これは「人間性」にも直結する機能だと考えられています。

【ここに注目!】

例えば、671-123を頭の中だけで暗算してみて下さい(この紙も見ないで、頭の中に思い浮かべて計算してみましょう)。そろばんが得意で、頭の中にそろばんがある人はともかく、ごく普通の一般人なら、頭の中の作業台で足したり、引いたりして、処理するイメージがよく分かります。これがワーキングメモリです。


●「情報処理能力のアップ術」として、「捨てる技術」を身につけなければならない

「完全主義」「完璧主義」よりも「いい加減」「適当」にやることが肝心 =1年かけて完璧に、真面目に1回仕上げるよりも、1ヶ月でいい加減に、適当に1回終えて、1年で12回反復する方が「勉強効果」ははるかに上がります。実は英語学習を妨げる心理的要因は「完璧でなければ出来るとは言えない」といった思い込み・強迫観念であり、真面目な人ほど陥りやすい完璧主義なのです。やり過ぎでもやらなさ過ぎでもない「いい加減」に、無謀でも無策でもない「適当」にやるべきであり、そのカギが「1回のハードル」を下げた「反復回数の確保」にあるのです。したがって、参考書・問題集の「目次」は何度も見て、全部で何章あり、何回で終えることが出来るか、今はどこをやっているかを常に把握しながら進めると(「マッピング」)、自分を見失わないで済みます。

また、受験などでは「精読」の訓練(「読解の技術」「論理的把握の方法」を身につけること)は絶対不可欠ですが、いつまでもここに留まると、「完全主義」「完璧主義」の落とし穴にはまってしまいます。「精読」が出来るようになれば(ゆっくり時間をかければ確実に理解することが出来るということを意味します)、早く「多読」の訓練に移行すべきであり、そのために必要な「こだわりを捨てる」ためには一般書籍よりも月刊誌、月刊誌よりも週刊誌、週刊誌よりも新聞の方が適当でしょう。新聞は1日で捨てないとたまってしまうため、さっさと読み切ってしまわなければならず、見出しだけ読んで関心があるものだけ本文記事に目を通すという習慣や、「1媒体1情報」という原則をつかむのに便利なのです。例えば、いきなりタイムなどから始めたりすると、いちいち分からない単語が気になってしまいますが、英字新聞だと通勤・通学時間の間、ヘッドラインと写真のみ目を通して、関心があれば第一パラグラフを読み、さらに興味が湧けば全て読むとすれば十分です。こうなれば、目的地に着いた時点でゴミ箱に捨てておしまいです。また、最初の1ヶ月ぐらいは頻出単語を1日100語ぐらい辞書で引くとよいでしょうが、これもその後、一切辞書を引かなくするためです(ペーパーバックスなどを読む際にも辞書は引かないのがコツなのです)。

【ここに注目!】

英語メディアでも月刊誌・週刊誌より新聞の方が「捨てる技術」を身につけやすいのです。「別に今、全部が全部分からなくてもいいや」といういい加減さ・適当さが速読速解を可能にします。





Copyright © 「やる気」が出る勉強法研究会 All Rights Reserved