科目別本格的勉強法:社会編

【世界史】

 世界史の比重では、「西洋史:東洋史」は大体「7:3」か「8:2」といったところでしょう。そして、それぞれの「歴史の骨格」を押さえることが重要となりますが、ここでカギとなるのが「歴史観」です。膨大な歴史事象を覚えるにも、記述対策をするにも、核となる「歴史観」があるかないかで大きな差が生まれてきますので、注意しましょう。実際、世界史の最重要ポイントは「近・現代史」にあります。具体的には市民革命・産業革命以降の300~400年に集中することです。観点は「今日の世界・社会に影響を及ぼしていること、直結していることは何か」ということです。これをざっと押さえて、あとは「過去問ラッシュ」で知識の活性化、肉付けをしていくことになります。
 例えば、世界大戦や世界恐慌のように、現代社会に直結している(直接的影響を及ぼした)ものほど、歴史的意義が高い(歴史的に重要なテーマとして追求せざるを得ない)と考えられます。そして、現代社会の政治の根幹を成す「民主主義」「議会政治」「憲法」「人権思想」などの諸概念・制度は、イギリス市民革命、アメリカ独立革命、フランス革命などによって確立されていった「近代法」「近代デモクラシー」を淵源とし、古代アテナイの民主政などとは無関係です。また、現代社会の経済も産業革命を生んだ「近代資本主義」を母体としており、経済学も対象としているのはこの「近代資本主義」の分析であって、古代や中世の経済にはほとんど関心を持っていません。

(1)古代史・中世史
 西洋史の中心は「ヨーロッパ」ですが、その古代・中世史の中心は「ローマ」にあります。ローマは先行する東方オリエント文明を吸収・洗練化させたギリシア文明を引き継ぎ、地中海を中心とした最初の世界帝国を実現しました。ヨーロッパの文化的原点はギリシアですが、文明的原点はローマにあると言ってもよく、そこで育まれたローマ法、キリスト教、ラテン語などの普遍性は多大な影響を及ぼし続けています。ローマ帝国は東ローマと西ローマに分裂しましたが、西ローマ帝国を引き継いだのがゲルマン民族の建てたフランク王国で、ここにギリシア・ローマ、キリスト教、ゲルマン民族という3つの要素を柱として持つ「ヨーロッパ」が成立したとされます。フランク王国は東フランク、西フランク、中フランクに分かれますが、これがドイツ、フランス、イタリアのルーツとなっています。やがて、東フランクは神聖ローマ帝国となり、これがナポレオンのライン同盟設立まで続きますが、今日のEU(ヨーロッパ共同体)構想はローマ=カトリック教会の精神をバックボーンに、神聖ローマ帝国の復活を目指したものと見る向きもあります。そして、「パクス・ロマーナ」(ローマの平和)を引き継いだとされるのが「パクス・ブリタニカ」の大英帝国であり、さらにそれに続いたのが「パクス・アメリカーナ」のアメリカで、特にアメリカは「現代のローマ」として位置付けられます。また、東ローマの流れはビザンチン帝国を経てロシアに移り、モスクワはローマ、コンスタンチノープルに次ぐ「第三のローマ」と呼ばれました。まさに欧米主要国は全てローマの後裔と言ってもよく、これを抜きにヨーロッパ史を語ることができないことがよく分かります。

(2)近世史
 ルネサンスにおいて「ギリシア精神の復興」が起こりましたが、ギリシアには「主知主義」「人間主義」「現世主義」などの伝統があり、特に「証明」「幾何学」「集合論」に代表される数学的思考は「近代精神」に多大な影響を及ぼしました。また、宗教改革をもたらした「プロテスタンティズムの倫理」は「宗教の合理化」を行い、さらに「資本主義の精神」を生み出していきました。こうした「ギリシア精神の復活」と「プロテスタンティズムの倫理」が生んだ「合理主義」は「普遍化」と「西欧化」の2つの面を持ちます。
 実に「近代化」とは「伝統主義」に対する「合理主義の勝利」であり、「伝統主義」とは「昨日もそうだったから今日もこうである」という「永遠の昨日」に縛られた状況を指します。そして、「合理主義」とは「理性」を根拠とするものですが、「人間」「肉体」「自然」「現実」に目を向けたルネサンスにおいて推進力となり、次第に自覚化、具体化していったものなのです。つまり、「合理主義」にはヘレニズム的背景とヘブライズム的背景の二重性があり、「普遍化」「世界化」と「西欧化」「キリスト教化」という二重の契機を持つということです。

(3)近代史
 近代史の中心はまさに「近代化」そのものにあります。元々、西洋が東洋に勝った時代はほとんど無く、アレクサンダー大王の東方遠征ぐらいで、中国を中心とする東洋の方が圧倒的な国力を持っていました。イスラームを西洋圏に入れるならば、タラス河畔の戦いでアッバース朝軍が唐軍に勝ったことも挙げられますが、これは局地戦でした。さらに軍事的天才であった「一代の英傑」チムールも明への遠征途上で没しますが、生きていれば勝ったであろうと見られているものの、これはifの話です。そして、あっという間に中東を制覇し、ヨーロッパにも迫ったイスラーム軍も精強なモンゴル軍には勝てず、アッバース朝バグダッドも陥落し、ヨーロッパも心臓部にまで迫られ、ロシアも「タタールのくびき」を強いられたことは有名です。ところが、文明の後進地域であった西洋が「近代化」に成功し、近代科学や近代市民社会を作り出すと共に近代資本主義を成立させ、産業革命を成功させるや、あっという間に世界を植民地化していったわけですから、そのプロセスは驚異的ですらあります。この「近代化」はテーマとして避けることができないものであり、その母体となった「絶対主義」(さらにはその前史である十字軍など)や「ルネッサンス」「宗教改革」、その柱とも言うべき「市民革命」(イギリス清教徒革命・名誉革命、アメリカ独立革命、フランス革命)と「産業革命」などは、歴史的意義からしてまず落とせないと言ってもいいでしょう。
 例えば、「近代的学問」が西欧の大学を舞台として発達し、クラシック音楽やルネサンス美術に代表される芸術も急激に洗練されていき、世界化していきました。「近代科学」も目に見えない世界も解明し、原子から莫大なエネルギーを引き出す一方、技術の発達から鉄の船を浮かべ、空を飛ぶことすら可能にして、生活を劇的に変えただけでなく、ものの見方・考え方まで大きく変えていきました。また、それまで人類が自然から恒常的に引き出せる「力」がせいぜい「1馬力」であったのに対し、「蒸気機関」の発明や電気エネルギーの活用、「内燃機関」などの発明がなされていって、「生産力」「工業力」が飛躍的に増大していったのです。実に「普遍性」を持つことが「世界性」「世界化」の要素となるわけです。

(4)現代史
 現代史の特徴は歴史がまさに「世界」史になったところにあります。「第一次世界大戦」と「国際連盟」、「世界恐慌」と「全体主義」、「第二次世界大戦」と「国際連合」、「冷戦」といったテーマは全世界的なものであり、それまでの歴史に一切見られなかったものです。ただ、戦後政治はそのまま「政治・経済」の分野となるので、「世界史」としては本格的に扱いづらい面があります。

(4)東洋史
 東洋史は「中国」が中心ですが、そのカギは「統一王朝」の時代です。「秦・漢」「隋・唐」「宋・元」「明・清」「中華民国・中華人民共和国」がそれですが、具体的には「開祖」「首都」「法制」「文化」「戦争・外交」「農民反乱」がその内容となります。「持続の帝国」と呼ばれる中国において、統一王朝時代は「節(ふし)」に当たる部分であり、これが歴史の骨格となるわけです。

【日本史】

 日本史の最重要ポイントは「近・現代史」にあります。具体的には幕末開国から明治維新以降の200年弱に集中することです。特に「世界史の動きの中で日本史に多大な影響を与えた事件」(例えば、アヘン戦争などは幕末の志士達の脳裏に焼き付いており、間違いなく倒幕・維新の背景にあったと言えます)や「今の日本社会に影響を及ぼしていること、直結していること」に注目することです。これをざっと押さえて、あとは「過去問ラッシュ」で知識の活性化、肉付けをしていくことになります。

(1)古代史
 古代史における理解のカギは「律令体制の構築と崩壊のプロセス」です。聖徳太子の十七条憲法が律令体制の「理念」、大化改新が律令体制の「原点」、大宝律令が律令体制の「完成」と位置付けられます(実はこれらは実証的には問題をはらんでいるので、こうした位置付けに疑問を感じるところから「歴史学」が始まると言ってもいいでしょう)。そして、三世一身法・墾田永年私財法から「律令体制の崩壊」が始まり、令外官(りょうげのかん)と荘園の発生によってそれは決定的になっていきます。藤原氏が権力を掌握していったのも、血縁的には「外戚」、政治的には「摂政・関白」、経済的には「荘園」を押さえたからであり、逆に権力を失っていくプロセスはこれらが1つ1つ崩れていくプロセスとしてとらえることができます。すなわち、藤原氏を外戚として持たない天皇が現れて荘園整理令を出し、院政を敷いて上皇が権力を握り、新たに台頭してきた武士が実権を握っていくということです。実に荘園が完全に無くなるのは秀吉の太閤検地の時であり、名実共に律令が無くなるのは何と明治維新の時ですから、日本社会の特質を律令体制分析を通して明らかにすることができるくらいです。

(2)中世史
 中世・近世史は「武家政治システムの確立と崩壊のプロセス」です。具体的には幕府及び法制が中心となります。そして、テーマ史として、「仏教・儒教・芸術を中心とした文化史」「戦争も含めた外交史」「貨幣と農業技術を中心とした産業発展史」の理解が側面的に必要になってきます。ちなみに、かな文字や和歌など日本文化の原点は平安王朝文化、特に国風文化の成立にあると言ってもいいのですが、茶道・華道や能といった日本を代表する伝統文化が確立するのは室町時代のことです。そして、戦国時代を経て、織田信長・豊臣秀吉・徳川家康の三代によって、江戸幕府という長期安定政権が誕生します。

(3)近世史
 江戸時代のポイントは初期の「鎖国のプロセス」と末期の「開国のプロセス」、及び「三大改革」とその前後・間にはさまる「元禄文化」「正徳の治」「田沼意次の政治」「化政文化」などとなります。「三大改革」などは政財政改革という点からすればむしろ失敗と言えるのですが、「頻度」という点で落とすことができないでしょう。
 ところで、ちょんまげを結って歩いていた極東の島国が、「ヨーロッパ文明」を積極的に導入して「近代化」を成し遂げるや、「日清戦争」でアジアの宗主国を破って「アジアの最強国」となり、「日露戦争」で列強の一角を破って「列強の一員」となってしまいました。第一次世界大戦後の「国際連盟」では常任理事国となり、第二次世界大戦後には敗戦にもかかわらず、ヨーロッパ諸国を追い抜いて、アメリカに次ぐ「第二の経済大国」にまでなってしまったのです。こうした日本の「明治維新」にならったアジア、イスラーム諸国は多いものの、そのほとんどがなかなかうまくいきませんでした。それは「近代化」を推進すればするほど、「伝統主義との対決」や「西欧化」の問題にぶつかり、「キリスト教の論理」に自覚的に直面することとなっていったからなのです。
 しかも、日本の「明治維新」の背景には260年に及ぶ「パックス・トクガワナ」(徳川の平和)があり、ここで技術的蓄積や初等教育の普及、洋学の吸収がなされていったことまで学び取ろうとした国々はなかったのです。あるいは日本は「最も成功した社会主義社会」とも言われますが、こうした「日本の特殊性」の解明は世界が期待する「日本史のテーマ」でもあるわけです。つまり、日本史最大のテーマも「近代化」であり、「明治維新」をめぐる前後数百年の分析だと言えるです。

(3)近代史・現代史
 近代・現代史はまさに日本史における「近代化のプロセス」に他なりません。ここで政治面における「自由民権運動」と「大日本帝国憲法」、外交面における「不平等条約の解消」、経済面における「資本主義・産業革命の達成」がテーマとなってくるわけですが、とりわけ後二者に関して、「日清戦争」と「日露戦争」が大きなヤマ場となりました。やはり、この2つの戦争の意義は見落とすことができないところです。さらに日本の国家戦略が琉球→台湾→朝鮮半島→満州→中国大陸というラインに沿っていることに気づくと、軍事・外交上のポイントが浮かび上がってきます。そして、世界的な流れの中では1920年代以降の「恐慌」と「軍縮」が、1930年代以降の「全体主義化」「軍国主義化」の背景となっています。戦後においては「政治」と「経済」という二極構造で社会分析をする必要がありますが、多分に政治・経済という科目に重なってくるところです。

【地理】

 「系統地理」としては「地図」「地形」「気候」「土壌」などの「自然地理」があり、さらに「産業」(農牧林業、水産業、鉱工業)及び「日本の貿易関係」(輸出入の相手国と品目)などの「経済地理」、「交通・通信」「都市問題」「人口問題」などの「社会地理」があります。そして、主要国の地理的条件と産業的特徴といった「地誌」がもう1つの柱となります。これらが「骨格」となりますが、キーとなるのは「日本との関係の深さ、重要性」(例えば、アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、中国、東南アジアなど)と見てよいでしょう。ちなみに「自然地理」は「地学」の中の「地球物理学」の部分と重なり、「経済地理」「地誌」の部分は「政治・経済」と重なる点が多くありますので、クロス・オーバーで知識と理解を深めていくことが可能です。

(1)系統地理
 「自然地理」では「地図の読み方」「ハイサーグラフ」(気温と降水量を1つのグラフで表示したもの)などを押さえ、「経済地理」では「米・小麦・大豆・茶の生産国」「アメリカ・ヨーロッパ・中国・オーストラリアの農業分布」「産油国」「発電量の内訳」(特にアメリカ・日本・フランス・ノルウェー・カナダ・ブラジル・中国など)、「日本の主要輸出入相手国とその主要品目」などは頻出分野なので、押さえておかなければいけません。あとは「過去問ラッシュ」で仕上げをかけることです。

(2)地誌
 「地域統合」の持つ歴史的な意義からして、「EU」「ASEAN」の2地域は落とせないところです。「EU」は「現代におけるローマの復活」ですが、「市場統合」→「通貨統合」→「政治統合」の3段階のプロセスで進行しており、第二段階から第三段階まで順調に移行していると思いきや、第二段階で思わぬつまずきを見せ、これをどう克服していくかは「アジア共同体」の成立の可能性からしても注目されるところでしょう。今後は「ロシアの取り込み」「トルコから中東イスラーム地域への働きかけ」「アフリカへの進出」などが予測されます。一方、「ASEAN」は基本的に「キリスト教共同体」である「EU」と違い、「多様な宗主国」「多様な宗教文化」が特徴であり、その統合はより大きな可能性を示唆しています。
 さらに「BRICs」(ブラジル、ロシア、インド、中国)も新興経済勢力として注目せざるを得ませんし、まだ用語として定着していないながらも、それに続く「VISTA」(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)諸国も要注意かもしれません。

【倫理】

 倫理は「社会論」「環境問題」「人口問題」「青年期」「人間観」「風土論」「文化論」などの現代社会論と「宗教論」「思想史」などの思想分野からなります。

(1)現代社会
 そのまま英語の長文や現代文の評論でも取り上げられるテーマばかりなので、知識として増やしたいところです。例えば、「共生」という概念でくくれば、「高齢者と若者の共生」が「高齢社会」のテーマとなり、「健常者と障害者の共生」が「バリアフリー社会」「ユニバーサル社会」のテーマとなり、「男性と女性の共生」が「男女共同参画型社会」のテーマとなり、「人間と自然の共生」が「循環調和型社会」のテーマとなるように、如何に「概念」を理解し、駆使できるようになるかが全体像をつかむコツです。これがないと、単なる「膨大な知識の山」に過ぎず、「生きた知識のネットワーク」にならないわけです。

(2)思想分野
 ポイント・チェックをして「過去問」をやるだけです。日本思想の和辻哲郎、現代思想のフランクフルト学派、ロールズの正義論、ノーベル経済学賞を受賞したアマルティア=センなどは要注意です。生命倫理、環境倫理なども頻出分野です。 

【政治・経済】

 これらはいわば「政治」と「経済」という観点から社会の骨格・根幹を理解しようとするもので、「政治的動物」「社会的存在」とされる「人間」の「人間たる所以」の分析ですから、これぐらいの基本的理解はしておきたいところです。実際、「政治(法律)」と「経済」は「社会科学」の中枢を成す分野であり、「社会科学」はあらゆる試験で相当な比重をもって出題されるものなので、これを強味に変えると圧倒的に有利な立場に立ちます。理解を深めてくれるキーワードは「近代法」「近代民主主義」「近代資本主義」であり、これらを三位一体としてとらえ、「近代社会」分析のツールにすることです。さらに「近代哲学」「近代科学」の根幹を理解できれば完璧と言えるでしょう。これらの根底にある基礎概念の1つが「合理主義」です。

(1)政治
 政治は「日本国憲法」と「国際政治」に大きく分かれ、前者では「基本的人権」「三権」「地方自治」「選挙制度」が基本となり、後者では「国連」に代表される国際機構がカギとなります。政治分野においては「衆議院の優越」「直接請求に必要な署名数と請求先」「ドント方式の計算法」だけは理屈を理解する必要がありますが、後は丸暗記です。仕上げはいずれも「過去問」です。

(2)経済
 経済はいわゆる「経済原論」の内容(ミクロ経済学、マクロ経済学)と「日本経済」「国際経済」からなり、前者は「市場法則」「現代企業の特徴」「国民所得の概念」「財政・金融政策」などが中心で、後者は「景気」「社会保障」「経済共同体」などが中心となります。経済分野においては「価格の自動調節機能」「国民所得の定義」「金融政策におけるマネーサプライの観点」だけは理屈を理解する必要がありますが、後は丸暗記です。仕上げはいずれも「過去問」です。



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