進路アドバイス:学部選択~文学部


 文学部は大学にもよりますが、たいてい哲学科・文学科・史学科の3つに分かれます。

 例えば、「外国語」を学びたいと言った場合、その関心領域によって、「語学」そのものを学ぶか、「コミュニケーション・異文化交流」を学ぶかの違いが出てきます。前者なら文学部・外国語学部、後者なら社会学部・国際関係学部がそのフィールドとなってきます。また、「語学」を学ぶ場合も、言語学的関心なのか、文学的関心なのかの違いがあり、「コミュニケーション・異文化交流」を学ぶ場合も、民間交流レベルでの関心なのか、政治・経済・軍事・外交領域を含んだ国際関係論に関心があるのかといった違いがあります。したがって、「何となく外国語を学びたい」といった次元ではなく、「何ゆえ外国語を学びたいのか」という目的意識を明確にする必要があるのです。

 また、外国語でも今やかつてのラテン語、漢文をしのぐ国際標準語・世界共通語になった感のある英語の必要性は言うまでもありませんが、国際公務員を目指すなら、英語・フランス語がペラペラで、スペイン語も読み書きができるとよいとされます。また、外国語の中で唯一、日本語と文法を同じくする韓国語は日本人にとって最も学びやすい外国語であり、いわゆる「外国語コンプレックス」を解消する上で絶大な働きをしてくれます。さらに、英語は元々ドイツ語から分かれたようなもの(正確にはドイツ語は英語の母語であるゲルマン祖語の直系。英語はそこから「ノルマンの征服」以来、フランス語の影響を受けつつ近代英語を形成してきました)ですから、両者の親近性は実に大きく、英語を媒介とすると学びやすい言語であると言えるでしょう。あるいは、文法的にガッチリしているドイツ語は最初は大変ですが、その峠を超えたら後は楽になるのに対し、発音が難しいフランス語は最初は楽ですが、後々まで難しいとされます。さらにアメリカ・日本・ドイツ・イギリス・フランスも次ぐ世界第6位の経済規模を持つ中国(フランスを抜くのは時間の問題とされます)の存在を考えれば、中国語(北京語・広東語)の重要性も見逃せません。

 ついでに英語と日本語との関連で、東洋の諸言語について大雑把な位置づけをすれば、ギリシア語に相当するサンスクリット語、ラテン語に相当する漢文、ドイツ語に相当する韓国語と見ることが出来るかもしれません。そうなると、日本の国語学習において、古文・漢文が必修とされ、実際にこうした教養の有無は国語能力の差に大きく関わることを考えると、英語学習においてもラテン語、ドイツ語、古・中英語の知識が重要であり、さらに従来の日本の国語教育では韓国語に対する系統的理解が欠けているという観点も出てくるでしょう。これは日本語学という分野にも直結してきます。


<英語を学んで人生が変わった人の話>

 美容師だったAさんは、ふと思い立って英会話学校に通い始めました。その後、ワーキングホリデイ(通常、留学ビザで働くことはできず、キャンパス内での安いアルバイトに限られますが、ワーキングホリデイ制度を採用しているオーストラリア・ニュージーランド・カナダなどでは英語を学びつつ、働くことができます)を利用してオーストラリアで働いてみたところ、そこで知り合った人に誘われて香港の金融機関で働くことになりました。その働きぶりが認められて、何と今度はロンドン本店勤務になったということです。彼女の場合、人との出会いもさることながら、ここまで人生が激変するそもそものきっかけは英語を学び始めたということでした。

 よく「英語ができるようになったらいいけど、別に話せなくても支障はないし・・・」という声を聞きますが、「英語ができるようになったら、視野も世界も全く変わる」のは事実です。おそらく、英語を学んで損するということはないでしょう。


【英検(実用英語検定)】

 履歴書に書けるのは2級以上、英語力としての評価対象は準1級以上でしょう。


【国連英検】

 特A級からE級まで6ランクに分かれており、上級レベルになると国際関係・国際政治などの問題意識や判断力も問われます。


【TOEIC】

 国際コミュニケーション・ツールとしての英語力を10~990点のスコアで検定。リスニング100問、リーディング100問。会社でも昇進条件としてこれを義務付ける所も出始め、大学でも対策講座を設ける所は多くあります。ビジネス英語としての評価は英検以上。


【TOEFL】

 アメリカの大学・大学院に留学する際に、授業についていけるかどうかを判定することを目的としたテスト。アメリカ留学の第一関門であり、現在はiBT(コンピュータ・テスト)中心です。

 あるいは歴史学は大きく分けて、「西洋史」「東洋史」「日本史」の3つに分かれ、さらに細かく「イスラーム史」や「各国史」、あるいは「東西交流史」といったテーマ史に下位区分されていきます。歴史学はある意味では、全ての学問の母体とも言え、経済学であれ、法学であれ、言語学であれ、科学であれ、いずれも歴史学の成果や観点を抜きに学問研究を進めることはできないことが分かります。

 学問研究上、要求されるものは「語学」「史料批判」「フィールドワーク」などであり、テーマによってはこれに「統計調査」(歴史人口学)や「発掘調査」(考古学)などが加わったりします。


語学

 研究対象とする歴史における主要言語は当然マスターせざるを得ません。例えば、イギリス史なら英語(できれば古英語・中英語まで)、フランス史ならフランス語(できればラテン語まで)、スイス史ならフランス語・ドイツ語・イタリア語といったところでしょう。中東史ならアラビア語(できればペルシア語・トルコ語まで)ですね。では日本史ならこうした苦労はないかというと、古文・漢文の知識が必須であり、さらに古文献に当たる必要があるので、あのニョロニョロ文字を読めるようにしておくことが肝心です(「こんなの読めるか!」と一見思いますが、2週間くらいで読めるようになります)。「語学の天才」と言われたシュリーマンも、目的は古代ギリシアの遺跡の発掘にあったわけで、歴史学の研究に語学の勉強が欠かせないことの証左と言えそうです。


史料批判

 語学が歴史学研究の「重荷」であるとするならば、史料批判はまさに「醍醐味」に当たります。これは「方法論」に相当しますが、斬新な新しい結論・発見といったものは、「新しい史料の発見」か「新しい方法論の採用」によるのです。これは元々聖書批評学(バイブル・クリティシズム)から始まったもので、それまで素朴に信じられてきた伝承(例えば、『旧約聖書』の最初の5つはモーセが伝えたものとして、「モーセ五書」と呼ばれてきましたが、史料批判の結果、モーセ以後の時代の記述が多分に含まれていることが分かりました)がことごとく破壊されて、自由主義神学が誕生する母胎となりました。これが近代仏教学でも採用されて、いわゆる「大乗仏教非仏説」を生んでいます。これは『般若経』『浄土三部経』『法華経』『華厳経』といったメジャーな大乗仏典は、釈迦滅後五、六百年経ってから編纂されたもので、釈迦直説の経典ではないことが明らかになり、天台大師が行なった「五時教判」(5つの時に分けた教相判釈)は矛盾だらけと結論付けられたものです。同じことは哲学でも日本古代史でも起きています。アリストテレス哲学の成立時期を使用語句の検討から再編成したイェーガーの業績や、邪馬台国が原文では邪馬壱国となっており、魏志倭人伝を『三国志』全体の文章表記上のルールから分析して倭国の位置を捉え直し、九州王朝説を確立した古田史学などがそれです。


フィールドワーク

 歴史学は基本的に文献研究が中心になりますが、現地調査をするのとしないのとで文献理解に雲泥の差が生じます。これは受験勉強レベルでも、古文を京都に住んで勉強していると、格段に理解しやすくなるという現象が起きます。なぜなら、「これは昨日、自転車で通ったあそこの話だ」といった土地勘、地理勘といったものが出てくるからです。有名な吉野ヶ里遺跡(環濠集落として知られていますが、軍事拠点的要素を持っており、むしろここから環濠の必要性が出てきたのです)などもたくさんの研究書や写真集が出ていますが、百聞は一見に如かずで、実際に現地に行ってみると、その規模や周辺の状況(例えば、近隣の高良山や基山などに登れば、筑後平野に臨むそれらが明らかに軍事拠点となることが分かり、古代の為政者達がそれらを重視したことが自然と理解されます)といったものが良く分かってくるわけです。あるいは山形県の山寺(慈覚大師円仁が開基、松尾芭蕉が「閑かさや岩にしみ入る蝉の声」と詠んだことでも知られています)を実際に訪れてみれば、奈良・京都の中央仏教とは異質の仏教のエネルギーを感じることでしょう。もっと素朴な観察でも、東日本と西日本では稲の干し方も違い、餅の形も違っています。いずれにせよ、こうしたフィールドワークの積み重ねが歴史学研究の厚みを増すわけです。


【大学教員・研究員】

 専門家としての道を行くならば、大学に残ることとなります。講師・助手から准教授、教授へ至る道ですが、決して簡単ではありません。考古学専攻ならば、考古学研究所などに採用試験を受けて入るという道もあります。


【教諭】

 教員免許だけなら、大学で教職単位を揃え、教育実習に行けば自動的に取得できます。卒業後に改めて取ろうとすると、けっこう手間ひまかかるので、取れる時に取っておきましょう。教育実習は貴重な体験となるものです。実際になるには各都道府県で教員採用試験を受験しなければならず、これは専門予備校で準備しなければ難しいのが現状です。


【司書】

 公立図書館等で図書資料の選択・購入、図書案内や指導などを行います。教員免許同様、単位を揃えれば取得できますが、大学・学部の設定によるので、確認が必要です。また、最近では学校図書館司書教諭(学校図書館の専門的職務を行う)のニーズも高まってきました。


【学芸員】

 博物館・美術館等で資料の収集、保管、調査研究などを行います。単位取得によって資格が発生しますが、実務経験からの道もあります。





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