科目別本格的勉強法:国語編

【現代文】

 現代文の主要ジャンルは「評論」「小説」「随筆」の3つですが、中でも「評論」は現代文の中心であり、基本的理解をしっかり押さえておきましょう。そもそも現代文では、主観的な「感性」や「感受性」を問うのではなく、客観的な「論理的思考力」を問うことが主体になっていることをふまえると、それが最もストレートに現れる「評論」に習熟しておく必要があると言えるのです。
 ちなみに不思議なのは漢字で、「漢字はからきしダメだが、国語の点はいい」という人は皆無です。漢字力がアップすれば国語力もアップするとは一概に言えませんが、漢字力が無いのに国語力がつくということはあり得ないと言ってよいでしょう。

(1)評論
 具体的には、問題文を一読する際にラインを引いたり、キーワードを囲んだり、段落ごとの小見出しを付けたりして、文章全体の構造と論点の推移を明確にしておく必要があります。特に筆者の「主張」(言いたいこと)は「強調」という手法を通じて表現されるので、「反復」(言い換え)と「対比」に注目するとよいでしょう。さらに論理の展開は「抽象(骨格)―具体(肉付け、説明)」の繰り返しなので、「抽象」部分をつなげれば全体の要旨になることも知っておきたい所です。そして、問題文を読み始める前に著者名と書名に目を通しておいて、大体のイメージ(著者に対する予備知識がある場合)と全体のテーマ(文章全体を一言で言い表せば題名となる)を押えておくことも有効です(少し高度な技ですが)。こうした作業をあらかじめしておくと、接続詞、指示語、語句説明、空欄補充、主旨説明といった問題に対する解答が非常に容易になります。基本的に問題は文章の流れに沿って出されるので、解答は出題される該当段落(場合によってはその前後)に9割方存在していると見てさしつかえないでしょう。さらには「人生論」「科学論」「文化・文明論」「言語論」といった取り上げられやすいテーマについて、あらかじめ知識と基本的観点を吸収しておくことが有効です。

(2)小説
 これに対して、「小説」のテーマは「登場人物の心理」の描写にあります。したがって、小説を読む上でまず押さえるべきは、状況設定(いわゆる5W1H)とその推移の把握です。特に「時間」(たいてい時系列にそって場面が設定されています)と「人間関係」に注目するとよいでしょう。また、主人公をはじめとする登場人物の性格描写、内面描写に関しては直接表現と間接表現の二種類があり、直接表現はすぐに分かるのでチェックしやすいのですが、問題なのは間接表現のケースです。ここでは、「情景一致の原則」に従い、論理的に判断していく必要があるので、要注意です。つまり、ネガティブな情念に満ちた人の目にはネガティブな景色が映り、ポジティブな情念に満ちた人の目にはポジティブな景色が映るというものです。例えば、「真っ黒い空からびちょびちょみぞれが降ってきた」という表現があれば、それが目に入っている人の心も、やはり重苦しさや哀しみが満ちていると考えられるわけで、間違っても幸せ気分一杯だとはとても思えないのです。また、直接、設問として問われることはまず少ないと思われますが、代表的な表現技法として、明喩(直喩、ストレートに「~のような」と表現する)、暗喩(隠喩、「…は~だ」のように、暗に示すような表現)、擬人法(人でないものをあたかも人のように表現する)ぐらいは知っておくと良いでしょう。

(3)随筆
 さらに「評論」と「小説」の融合体とも言うべき「随筆」があります。随筆は小説的なものと評論的なものとに分かれますが、前者は「作者の心理」(⇔小説「登場人物の心理」)、後者は「作者の思想」(「主観的思想」⇔評論「客観的思想」)がテーマとなっており、客観性よりも主観性が強いのが特徴です。身近な感じがしてとっつきやすいのが随筆ですが、客観性が厳密でない分、奥が深いのも随筆です。いずれにしても、小説の読み方と評論の読み方を押さえておけば大丈夫です。

【古文】

 古文の柱は「語学的理解」「精神的理解」「歴史的理解」の3つですが、「語学的理解」の中心は何と言っても「助動詞」にあります。もっと言えば、「活用」「助動詞」「助詞」が膠着語たる日本語を大きく特徴付けていると言ってよく、これらを押さえることが重要なカギを握ることが分かります。さらに「係り結びの法則」や「敬語法」(最高敬語などが重要です)、和歌などに見られる「枕詞」「序詞」「掛詞」「縁語」といったものを覚えていけば、「古文の古文たる所以」「古文らしい特徴」を押さえたことになります。こうした「機能的理解」に対して、「意味的理解」の立場に立つならば、「現代語にないもの」「現代語と意味の違うもの」の2つをまず理解し、覚えることが肝要となります。さらにそれらの中には「をかし」「もののあはれ」といったキー概念が出て来るので、「精神的理解」にも通じることとなってくるわけです。「精神的理解」にはこの他に「生活様式」「年中行事」「宗教」「法制度」などがからんできますが、これは「歴史的理解」とも重なってきます。そこで、古文学習において「見えざる力」となってくれるのが「文学史の知識」です。これによって、「精神的理解」と「歴史的理解」を同時にクリアすることができ、「教養」として現代文にまで反映されてくる「力」となります。
 こうした「単語」「文法」「文学史」の知識をベースに、あとは問題文を通じて「読み慣れる」ことが必要ですが、その際に有効なのは「人間関係図」を必ず書くことです。古文は余りにも省略が多いため、一体、誰が誰に対して何をしているのかが分からなくなってしまうことが往々にしてありますが、人間関係を図式化することでこの失敗を避けることができます。また、設問は問題文の流れに沿っているので、ある程度のまとまりを読んではすぐに設問を読み、そこでの選択肢などを活用して「こういう内容が書いてあったのか」と確定していくのも一法です。さらに、主要な作品に関しては、ダイジェスト版などを使って、あらかじめ大まかな内容を知っておくと、問題文を読む前から「次にどういう内容が出て来るか分かってしまう」という状態になりますので、「読まずに問題が解ける」というスーパー・テクも可能になります(マイナー作品ではできません)。

(1)古文単語
「活用」=動詞・形容詞・形容動詞・助動詞は、文中での機能や後に続く語との接続から語尾変化をしますが、これを「活用」と言い、次の6つがあります。
①未然形:「ず」に続く形。(例)行かず。
②連用形:「たり」「て」に続く形。(例)行きて。
③終止形:言い切る形(後に続かない)。(例)行く。
④連体形:名詞に続く形。(例)行く時。
⑤已然形:「ど」「ども」に続く形。(例)行けども。
⑥命令形:命令して言い切る形。(例)行け。
「助動詞」=現代文・古文を問わず、日本語文章の意味・ニュアンスを知る上で、助動詞の理解・助詞は欠かせないと言えます。特に現代語に無いもの、現代語と意味が違うものに注意しましょう。
①む・むず:推量(~だろう)、意志(~しよう)、らむ:現在推量(~ているだろう)、けむ:過去推量(~しただろう)
②べし(「む」の意味を強めたもの):推量(きっと~だろう)、意志(きっと~しよう)、義務(~しなければならない)、命令(~せよ)
③ず:打消(~しない)、「え~ず」の形で「~できない」
④じ(「む」に打消の意味を加えたもの):打消推量(~しないだろう)、打消意志(~するまい)
⑤まじ(「べし」に打消の意味を加えたもの):打消推量(きっと~しないだろう)、打消意志(決して~するまい)
⑥き:過去(~た)、けり:過去(~た)、詠嘆(~なあ)
⑦り・たり:完了・存続(~てしまった、~ている)、つ・ぬ:完了・確述(~てしまう、~てしまった、~た)
⑧なり・たり:断定(~だ)
⑨らし:推定(~らしい)、なり:伝聞推定(~のように聞こえる)、めり:推定(~のように見える)
⑩る・らる:受身(~される)、尊敬(~なさる)、自発(~自然に~してしまう)、可能(~できる)
⑪す・さす・しむ:使役(~させる)、尊敬(~なさる)
⑫たし:願望(~したい)、まほし:願望(~したい)
⑬まし(「~せば・・・まし」「~ましかば・・・まし」等の形を取る):反実仮想(もし~だったら・・・なのになあ)
「助詞」=「活用する助動詞」「活用しない助詞」という違いはありますが、両者とも日本語においては決定的な働きをします。助動詞同様、現代語に無いもの、現代語と意味が違うものに注意しましょう。
①ぞ・なむ・こそ:強意、や・か:疑問、反語(~のはずがない)
係り結びの法則~ぞ・なむ・や・か→文末連体形接続、こそ→文末已然形接続
②ば:順接仮定条件(未然形接続、~ならば)、順接確定条件(已然形接続、~なので、~してみたら、~すると必ず)
③とも:逆接仮定条件(終止形接続、たとえ~しても)、ど・ども:逆接確定条件(已然形接続、~だけれども)
④つつ:反復(~しては)
⑤だに:類推(~さえ)、最小限(~だけでも)
⑥てしがな:願望(~したい)、もがな・もがもな:希求(~がほしいなあ、~だといいなあ)
⑦なむ:要望(未然形接続、~してほしい)
⑧そ(「な~そ」の形で):禁止(~するな)
⑨かし・ぞかし:念を押す(~だよ、~だね)
「基本単語」=「つとめて」(早朝、翌日早朝)といった「現代語に無い単語」、「あはれ」(しみじみとした情趣)といった「現代語と意味が違う単語」は限られていますので、これを集中的に覚えることが「記憶の経済」です。

(2)古文読解
「敬語」=尊敬語(動作主体に対して直接敬意を表わします)、謙譲語(動作主体を低めることにより、動作対象に対して間接的に敬意を表わします)、丁寧語(聞き手・読み手に敬意を表わします)の3つがあり、日本語を特色づけていますが、特に古文では「最高敬語」(尊敬語を重ねて敬意を強調します。「給ふ」が尊敬語であるのに対して、「せ給ふ」「させ給ふ」は最高敬語。敬意の対象は天皇及びそれに準ずる人に限られます)があり、人物特定の判断基準として使えるのです。
「人物相関図」=古文では主語や既出の名前の省略が異常に多いため、誰と誰がどういう関係で、何をしてどうなったのかが一読してつかみづらい場合が多々あります。そこで人物は出るはしからワクで囲み、相関関係を矢印で示したり、文章の横に図示すると、場面展開が理解しやすくなるのです。
「文学史」=『国語便覧』などで文学史にひととおり目を通し、メジャーな作品の内容を事前に知っておくと、初めて読む文章で細かい所は意味不明であっても、どういう話の筋でどういう展開になるということが分かってしまう場合があります。「旅先で女児を亡くした悲しみ」が出てくれば『土佐日記』、「旅路に出ようとする息子に対する母の悲しみ」とくれば『成尋阿闍梨母集』、「鎌倉に向う道中」であれば『十六夜日記』といった類です。

【漢文】

 文法的には「返り点のルール」を押さえ、「返読文字」「再読文字」を覚えるだけですので、基本は1時間でもできてしまいます。あとは実際の文章を通じて「読み慣れ」をすることですので、「実際に口に出して読むこと」(「耳で意味を捉える」ということで、基本的に「読めば意味は通る」と言ってもいいでしょう)と「基本的に教訓話として理解すること」の2つが重要です。時代的には「戦国時代」「漢代」「魏晋南北朝」に集中しており、「唐代」「宋代」がそれに次ぎます。特に前三者に関しては、歴史を先に学んでいると、理解が格段に変わってきます。「教訓話」という観点では、『蒙求』のような「教訓話集」が多く利用されるので、ダイジェスト版などで「メジャーな話」はあらかじめ知っておいた方がラクです。

(1)漢文文法
「返り点」=「レ点」(「レ」の記号の下の一字を先に読んでから上に返って読みます)、「一二点」(「二」の記号から「一」の記号までの字を先に読んでから上に返って読みます)、上下点(「下」の記号から「上」の記号までを先に読んでから上に返って読みます)などが代表的です。
「返読文字」=下の字を読んでから、上に返って読みます。
①不(ず):~しない、~ない。
②非(あらズ):~ではない(体言の否定)。
③勿・毋(なシ、なカレ):~ない(否定)、~してはいけない(禁止)。
④雖(いへどモ):~だが、仮に~であっても。
⑤所以(ゆゑん):理由・目的・方法・対象を示す。
⑥自・従(よリ):~から(起点・出所)。
⑦由(よッテ):~を拠り所にして。
⑧与(と):~と・・・とは。
⑨如・若(ごとシ):~のようである(比況)。
⑩見・被(る・らル):~(ら)れる、~される(受身)。
⑪使・令・教・遣(しム):使役を表わす。
「再読文字」=最初に読んで、次に下を読んでから、もう一度返って読みます。
①未(いまダ~ず):まだ~ではない、今だに~し(てい)ない。
②将・且(まさニ~ントす):今にも~しようとする、今にも~になろうとする。
③当(まさニ~ベシ):~しなければならない、~するのが当然だ。
④応(まさニ~ベシ):きっと~だろう、~するのが当然だ。
⑤宜(よろシク~ベシ):~するのが良い、~した方が良い。
⑥須(すべかラク~ベシ):必ず(是非とも)~しなければならない(する必要がある)。
⑦猶・由(なホ~ノゴトシ・ガゴトシ):ちょうど~と同じだ、あたかも~のようだ。
⑧盍(なんゾ~ざル):どうして~しないのか(~すればいいのに)。

(2)漢文読解
 「音読」=受験で出題される漢文の場合、難しい漢字や字面と意味が大きく食い違う漢字には必ず読みがながふってあり、声に出して読めば必ず意味が通るようになっています。
 「教訓話」=中国における漢文の伝統は儒教的な「勧善懲悪」と道教的な「ちょっといい話」ですが、全体的に教育的であり、「教訓話」がきわめて多いのがその特徴です。

【小論文・論作文】

(1)「書くための材料」は「経験」「知識」「考え」の3つのみ
 「経験」=最も説得力を持つが、新たに得ることが簡単とは限りません。したがって、「今までの経験を今後の進路にどう活かせると考えるか」「これから新たに経験できることは何か」ということになりますが、「人の経験に学ぶ」ということも可能です。例えば、「私の友人で◎◎した人がいるが、彼/彼女は・・・と感じたという」などとすれば、「人の経験」も全て使用可能となります。
 「知識」「考え」=最も短期間に吸収・習得できるとしたらこれらです。もちろん、受験生はまだ「専門家」ではないので、学者並の知識や政策提言できるほどの方案を持っている必要はありませんが、「専門分野を目指す者」として「最低限の知識」と「基本的な見解」を持っていることは当然とされますので、注意しましょう。この2つが乏しければ、「本当に目指しているのか、心からやりたいと思っているのか」と熱意を疑われても仕方がないのです。

(2)情報収集に関して、「新聞」「ネット」にまさる武器はない
 「本」=読書はすべきですが、時々刻々動いている情報をつかむには遅すぎます。「読解力」をつけるには「問題」の方がいいですし、「知識」「見解」を短期間に吸収するなら「新聞」がベストです。
 「新聞」=「医療」「福祉」「教育」「青少年問題」「政治改革」「地方自治」など、自分の進む専門分野及び関連する周辺分野に関しては、必ず「スクラップ」することです。直前ならさらにこれに「コメント」を加えていきます。これを1週間続けると別人になり、1ヶ月続けると何もしていない人は追いつけなくなるものです。「問題意識」を持ち始めると、「関連情報」に敏感に反応するようになりますが、さらに新聞では一定期間ごとに特集記事を組み、これまでの経緯や問題点、基本的観点をまとめて提示してくれますので、短期間に「最低限の知識」と「基本的な見解」を吸収することができるのです。そして、記者は必ず「しめくくりの決めゼリフ」に向かって記事を書くものですが、凝縮した内容を持つ「キーワード」を効果的に使った「決めゼリフ」はそのまま「使える文章表現」として真似すると良いでしょう。また、作問者も当然情報源の一つとして新聞を読んで問題作成をしますので、作問時期に新聞を読んでいないと、それだけでも不利なのです。
「ネット」=調べるための必要不可欠ツールです。ネット環境がないことのマイナスは表現しようがありません。

(3)「専門講座」「専門ツール」を使いこなす
 「専門講座」(時事)、「専門ツール」(時事テキスト)=それぞれ数年分の新聞記事、『イミダス』『知恵蔵』『現代用語の基礎知識』などのエッセンスですので、それぞれの時事試験に対応するものとしてこれほど効率的なものはありません。個人としても新聞のスクラップなどをすべきですが、何年もさかのぼってできるものではなく、思い立った時点から始める以外にありません。こうした不備を補うためにも、専門予備校が何年もかけて情報を集めて圧縮させた「専門講座」「専門ツール」は貴重な存在であり、利用できるものは全て利用し尽くすべきです。



Copyright © 「やる気」が出る勉強法研究会 All Rights Reserved