科目別本格的勉強法:英語編

【英単語】

 英単語は「スペル」「発音」「意味」の三位一体で覚えます。特に「英語ができない人」「英語が弱い人」に共通する要素として、「発音の軽視」は見逃せません。単語は目でスペルを見て意味を思い出すだけでなく、耳で音を聞いて意味を思い出せないといけませんから、基本的には「読めない単語を覚えることはできない」と考えましょう。

(1)中学校レベル単語
 中学校の基本単語(大体1,000語レベル)は丸暗記が手っ取り早いと言えます。ただし、半分以上は日本語化しているといってもいい単語群なので、「発音矯正」をする必要があります。したがって、「発音記号」の理解を一番最初にやっておくことが肝心なのですが、現在の中学校英語ではこれを本格的にやることもなく学習をスタートさせており、「外国語学習」としては難があります。

(2)高校レベル単語
 次に高校基本単語約3,000語が待っていますが、英語の得手不得手が分かれるのがこの領域です。学校指定の英単語集がある場合はそれを使い、なければ自分に合った英単語集を選んで、1日30~50語ずつ地道に覚えていきましょう。覚える端から忘れていくのは仕方がないことなので、「前の日の30~50語だけ復習して確認し、当日分の30~50語を覚えていく」ことです。これは机にかじりついて覚えるというようりも、「目で見て、何度も口で発音して、耳でも覚える」ことに徹して、移動中のバスや電車、トイレの中など、「こま切れ時間の活用」の中で作業したいところです。こういった「機械的暗記」「ノルマ的暗記」がどうしても難しい人は、「出会い頭に片っ端から覚える」方式に切り替えて、文法問題や読解、作文などをやる中で分からない単語が出るたびに辞書を引き、その単語の所にチェックを入れて、「辞書の単語帳化」を進めるのがいいでしょう。そうすると、何度も何度も同じ単語を引いているうちに、自分で「重要度・頻度」が自覚でき、重要頻出単語から優先的に覚えることができるからです。ただ、試験・受験まで時間が限られている人はセニハラ状態なので、「機械的暗記」「ノルマ暗記」方式にせざるを得ず、余裕がある人は「出会い頭に片っぱしから覚える」方式でも可能と言えます。

(3)大学・社会人レベル単語
 ちなみに新しく外国語を学ぶ上で知っておくべきこととして、日常的に使用される単語数は大体3,000~4,000語だそうです。これに対して、例えばニューヨーク・タイムズなどで使用されている単語数は大体20,000~25,000語と言われていますので、知的レベルの高い情報ツールを使いこなそうと思えば、次は地道にこのレベルまで単語数を増やしていくことになるでしょう。実際、大学卒業後に留学して語学学校に通わず、いきなり大学院の授業に入る人は大体このレベルに達しています。日本人で相当な読書量をこなす人なら、日本語でもこれぐらいの単語数は持っているはずです。
 そこで、文化人類学者やフィールドワーカー達は、まず新たな調査に取り掛かる前に集中的に日常的基本単語を修得します。膨大なトーラーを覚えさせるユダヤ人の教育方法でも、こうした「丸暗記」の効用は広く認められています。したがって、「暗記力」に自信がある人なら、とりあえず3,000~4,000語の基本単語を集中的に覚えてしまうのが手っ取り早いということになります。例えば、英単語25万語を覚えたと言われる長崎玄弥氏は「連想法」(グループ暗記)と「スピード」を重視した「連鎖記憶法」という手法を勧めています。あるいは、「身体化」という手法で、単語を「見る」だけではなく、「発音する(耳でも聞く)」「書く」という作業を重ね、「記憶のとっかかり」を増やすということもよく強調されます。さらに「反復」(これが記憶定着のカギです)を増やすためには、実際、「スピード」を上げるしかありませんが、やろうと思えば1日50~100語ずつ覚えて、3000語を1~2ヶ月で一巡させることすらできないわけではありません。むしろ、「1日10語、20語覚えるのも大変なのに、50語や100語なんてできるわけない!」と最初から決めてかかっている、その「心のバリア」自体が「不可能」を作り出しているのです。「やればできる」と思ってかかれば、不思議なことに「可能」が生み出されます。
 これに対して、「無味乾燥な丸暗記には耐えられない」というタイプには、「思考」を重ねながら、「意味付け」をしつつ、単語を増やしていく方法が考えられます。この際、役に立つのが「構成論的アプローチ」と「語源学的アプローチ」です。「構成論的アプローチ」とは、単語を接頭辞+語根+接尾辞に分け、「re-」が付く単語は「再び、さらに」といった意味が共通する(religion, recover, remakeなど)とか、「-tion」が付けば「状態・動作・結果を表わす名詞」を造る(condition, temptation, suggestionなど)といったように語の構成を分析し、未知の単語の理解にも応用が利くようにする方法です。「語源学的アプローチ」は単語や意味の由来を尋ねるもので、ラテン語やギリシア語、フランス語から歴史的理解にまで及び、手間がかかるようですが、最も奥行きを広げてくれます。森鴎外のような語学の達人も、単語を覚える際に必ず語源となったギリシア語やラテン語を書き留めており、こうした例は多く見られます。実は日本人でも中学校から古文・漢文を学びますが、これらは現実的実用性が一切無いにもかかわらず、その知識と理解が深まるほど、日本語運用能力が飛躍的に高まることが知られており、これも一脈通じる現象であると言えるでしょう。手間ひまかけて、覚えたものほど記憶は鮮明になり、かつ後々まで消えないものとして残るのです。そうしてある程度、単語のストックが増えてきたら、知識の有無をチェックするために単語集を利用するとよいでしょう。そこで知らない単語だけチェックして、それらを集中的に覚えればいいわけです。

【英文法】

 単語のルールに「語法」(ニュアンスの差や場合ごとに使っていい語と悪い語とがあったりする)があり、文章のルールに「文法」(文章として正しいか間違いか)があり、発話のルールに「話法」(発話の表現としてあり得るかどうか)があります。特に「文法」の正しい理解は、文章を読んで理解する上で絶対不可欠のものであり、「単語力」と共に「文法力」は「語学力」を支える「車の両輪」と言ってもいいでしょう。

(1)文法の基本的理解
 そこでまず「文法の理解」からということになるのですが、最初の文法書はとにかく薄いものがいいとされます。どんな外国語の学習でもそうですが、なるべく早く全体像が見えた方がやりやすくなるので、最小限の文法事項を押さえたものがあればいいわけです。2度目以降、あるいは疑問を感じてより詳しく調べようとする際に、説明の詳細な文法書を利用すればいいでしょう(これは辞書的に使用するわけです)。1度で全て理解してしまおうと思わず(そんなことは不可能です)、「読書百遍意自ずから通ず」(何でも百回読めば、その意味する所は自然に理解されるものだ)、「葦編三絶」(綴じ紐が3回切れるくらい、同じ書物を何度も読むことが大切だ)と言われる如く(これは本当によく言ったものですよ!)、「反復を重ねて知識を定着させる」ことを考えるべきです。

(2)文法問題演習
 その次に「文法問題演習」による肉付け、知識の整理の段階となるのですが、文法問題は数をこなして、知識を増やすのが一番現実的です。自分のレベルと目標に合った問題集を選んで、1日1章ずつ文法問題をこなしていくことをノルマとし、3巡目、4巡目で仕上げていくつもりでとりかかりましょう。できなかった問題にチェックを入れて、3巡目はチェック問題のみ、4巡目はダブルチェック問題のみとしていけば、加速度的にスピードが上がります。基本的に英語力を伸ばすには最低半年、どんなに急いでも3~4ヶ月はかかるのが普通ですが、単語力と文法力だけは即効性があります。
 これらの分野に関しては試験直前1~2週間でも得点力を上げることはいくらでも可能なので、その場合は目標とする試験の過去問を使って、ラッシュで取り組むべきです。実際、東大から公認会計士・通訳・弁護士の「資格三冠王」を達成した黒川康正氏は、東大受験の時も過去10年分の問題に全て取り組み、司法試験の時に至っては戦後の司法試験制度になってからの全ての問題を解いたといいます。そうすると、傾向、レベルの理解はおろか、ほとんど似た問題が出題されることも多くなり、最善の結果に結びついたというわけです。まさに「過去問演習は速学に不可欠」ということです。

(3)文法理解の深化・強化
 ところで、「意味・意義を求める人」「疑問を感じやすいタイプ」の場合、「共時的アプローチ(比較言語学)」「通時的アプローチ(歴史言語学)」の2つが有効です。「共時的アプローチ」とは、「外国語が良く分かるのは3つ目から」と言われるごとく、ただ1つの外国語(日本の場合、基本的に英語となります)のみしか知らないと、そこで挫折すれば「外国語コンプレックス」が沈殿し、深刻化しかねませんが、視点を変えて、いくつかの言語に触れてみると、目標言語を「相対化」させることができるという原理に基づいています。例えば、英語をふまえてドイツ語・フランス語に取り組むと、最初からドイツ語・フランス語に取り組むより理解が早く、深くなりますし、英語の文法知識が実に役に立つことが実感されます。逆に英語の簡単さも良く分かってきます。今まで「見上げていた」ものが、今度は「見下ろす」立場に立ってくるわけです。さらに日本語と文法構造がほとんど一緒の韓国語に触れてくると、インド・ヨーロッパ語族とウラル・アルタイ語、屈折語と膠着語といった「言語の違い」、ひいては「文化の違い」にも自然と目が向かうようになり、「教養」がぐっと深まって、単なるつまらない「勉強」の次元を大きく超えてくることとなるでしょう。また、「通時的アプローチ」を使って英語史・英語学史の知識を持てば、英語における「発音とスペルのズレ」(英語学習者を悩ませるものの1つです)なども全く無法則なのではなく、歴史的経緯があったことがよく分かります。実際、国語で中学校から学び始める「漢文」も、実は「漢語」と「大和言葉」という視点を持てば、「共時的アプローチ」ともなり、「日本語の形成」という観点から見れば、「古文」と共に「通時的アプローチ」となるのです。

【英文読解】

 英語学習の主戦場は英文読解にありますが、この中で単語・熟語の知識、文法・構文の知識、論理的思考と内容的知識・理解、精読と速読といった全ての要素が問われることとなります。ここで必要なのは「構造理解」「文脈判断」「表現整備」の三位一体です。そして「徹底精読」→「長文対応力・設問対応力」→「時間内得点力」の三段階で訓練を重ねていくことになります。そうして、「精読」→「多読」→「速読」の三段階で読解力を確立させていくわけですが、そのために要する文章は150題以上とされます。

(1)徹底精読訓練
 テーマは「分かったような気になることを防ぐ」「あいまいさの排除」です。中学校英語のレベルならここがいい加減でも「単語の拾い読み」と「カン」でけっこううまくいったりするので、いくら口を酸っぱくして言っても事の重大さがなかなか分からないものですが、高校英語になるとこれではだんだん通じなくなっていきます。受験英語にはまず歯が立たないと言っていいでしょう。高校に入ったらすぐに、できれば中学校のうちから「徹底精読」の訓練を受けておくことが重要です。これは「自力訳」→「調べて修正」→「解答・解説の熟読」という三段階を経ますので、1日1題で十分です。

①音読10回
 「単語の発音・アクセント」のみならず、「文章としてのアクセント(ストレス)、イントネーション(抑揚)」に気をつけて、「大きな声で10回は繰り返し音読」する。

②自力訳
 次にノートの見開きを使い、左側のページに英文をコピーして貼るか、2行ずつ空けて書き写す。そして、最初は何も見ないで「自力訳」を試み、右側ページに「日本語訳」を筋が通るように書く。大量の文章を読み込み、地道に訳出していく中で、生きた知識を吸収していく方法は典型的な「灘方式」です。

③構造分析
 複雑な文章に関しては、S(主語)、V(述語)、O(目的語)、C(補語)、M(修飾語)を書き込み、文の構造を明確化していきます。これは劣等生だったチャーチルが受けた指導法であり、この方法で一転して文章力がアップした彼は、後にノーベル文学賞を受賞するほどの「文章の達人」となりました。基本的に英語の文章は「5つの文型」に分類することができますので、「論理的にツメる」上でもこの作業は必要です。さらに主語と述語の間にスラッシュを入れて、「S-V」(これが文の骨格です)を明確にしたり、主語が分かりにくい場合は「三単元のs」や過去形などに注目したり、主語と時制、あるいは目的語を取るか取らないかなどで確定させます。さらに修飾語と被修飾語を矢印でつないで、「修飾関係」を明らかにしたり、「A and B」「A, B and C」といった「並列関係」をはっきりさせたりして(これは意味が分からない単語を推測したりする上でよく使います)、文の構造を分析するわけです。後から見直す時にこうした「読解作業の跡」が残っていると、一読目よりもはるかに速いスピードで再読、再々読することができます。逆に何の作業の跡もないと、一読目と同じくらい時間がかかったりします。

④文脈判断
 これは分からない単語・熟語は前後の文脈から意味を類推するということです。難しい英文読解であれば、1行につき分からない単語が1~2個あってもおかしくありません。これに対して、単語力・熟語力だけで対処しようとすると限界がありますので、分からない所があっても、前後関係や文脈の流れから「大体こういう意味であるはずだ」と類推する力が必要となってきます。これには時間を取られますが、こうしたロジカル・リーディングができてこそ、スピード・リーディングが可能になるのです。この2つの違いはギアチェンジができるかどうかにかかっています。

⑤表現整備
 基本的には「直読・直解・直訳」を旨とします。なぜかというと、翻訳とは違って採点対象となる以上、「構文や構造をちゃんと分かっていますよ」ということを採点者にはっきり示す必要があるからです。直訳した場合、「日本語表現としての許容範囲を超える」と思われる場合のみ、「意訳」「表現整備」を行います。この段階のみ、「日本語との戦い」になるわけです。また、読み手は目にする順、聞き手は耳にする順に情報を把握・理解していくわけですから、「私は次のように考えた、すなわち・・・」といったように「訳し下し」をした方がより自然な理解に近くなっていきます。

⑥調べ作業
 今度は辞書や文法書を調べて、単語の意味・発音記号などを書き込み、理解や訳を修正します。本当はここでパーフェクト解答が出来ていいはずですが、実際にはなかなかそうはいきません。この差が「知識の差」を超えた「思考力の差」を示しています。

⑦解答・解説の熟読
 単語や文法、構文、内容などの総点検をし、扱われているテーマに関する知識と見解も吸収していきます。受験で使われる英語は大体、①ニュース英語とは違って偏りがあり、②アメリカの大学生が教養課程で学ぶような英語であって、③人文科学、社会科学、自然科学といった知的なアカデミックな内容が多い、といった特徴を持っています。しかも、「異文化理解」「比較文化」「比較言語」「読書論」「教育論」「人口問題」「科学論」「環境問題」「共生論」など、入試で取り上げられやすいテーマも30~40ぐらいですから、最初から基本的知識と基本的見解をインプットしておいた方が手っ取り早く、そうすれば「先読み」も可能になってきます。したがって、短くてもそれなりに中身が濃い問題文は単なる読解訓練としてのみならず、貴重な知識吸収源、情報源として活用し、この問題文から得られるものはもう無いという所まで吸収し尽くすことが、膨大な読書をするよりもはるかに効率的に読解力アップにつながると言えるのです。

(2)長文対応力・設問対応力訓練
 「徹底精読」の段階では「良質の短文中心」となってきますが、次の段階では打って変わって質・量共に3倍アップした文章が必要になってきます。要するに「知らない単語だらけ」「構造や文脈が分からない所だらけ」といった文章で、早い話が「心が折れそうになる文章」が欠かせないということです。実際の入試などではこういった文章に遭遇することが避けられず、「自分は単語を全然知らないから解けないんだ」「自分は文法をよく分かっていないから、文法の基礎からやり直さなければいけないんだ」と後退するのではなく、「知らない単語だらけ、分からない所だらけ、でも点はもぎ取る」といった訓練が必要だということです。

①パラグラフをくくる
 あまり細かくパラグラフが分かれている場合には、複数をまとめる必要がありますが、基本的にはパラグラフごとにまとまりがあり、文章全体の「論理構造」がありますので、先にパラグラフをくくってしまいます。これは全体像をより見やすくするためで、現代文の読解でも使う方法です。一般的なリーディングなら、第一パラグラフに全体のイントロダクションが来ますので、この理解に集中します。

②「序論」→「本論」→「結論」という三段構造に注目する
 英語やドイツ語のような論理的な文章の場合、「序論」→「本論」→「結論」という三段構造を取るのが基本で、「序論」ではテーマの導入、一般論の提示、筆者の論点提示(「結論の先行提示」)などが述べられ、「本論」では論拠、具体例が複数挙げられます。最後に「結論」ではそれまでの論点の総まとめ、筆者の論点の再提示、今後への展望、提言などが述べられるのが普通です。こうした文章全体の「論理構造」が分かっていると、細部が分からなくても、どういう話の展開になっているか、推測がつくことがしばしばです。

③「テーマ」「意見」「論拠」「結論」をワクで囲む
 これは現代文でも使う手法ですが、筆者は「言いたいこと」「伝えたい考え」があるからその文章を書いているわけで、その核心的内容は「強調」という手法を使って読者に伝えられます。具体的には「対比(比較)」と「反復(言い換え)」の2つであり、「対比されているキーワード」や「いろいろな言葉で言い換えられて繰り返されているフレーズ」(英語は同じ表現の反復を嫌います)などを囲んだり、矢印で関係を示したりしておくのです。特に「対比構造」は論理的言語が議論を深めるために用いる基本技法なので、瞬時に見抜けるようにしたいものです。

④「抽象-具体-抽象」の三段構造に注目する
 パラグラフの中でも、「抽象-具体-抽象」といった三段構造がよく見受けられます。抽象的な内容を述べると必ず、読み手、聞き手に「それはどういうことかというと、つまり・・・」といった具体的説明をせざるを得ません。抽象的内容が分からなくても、それに続く具体的説明で理解が可能になりますし、抽象的内容が理解できているなら、具体的説明を読み飛ばすことも可能になります。そして、最後に再び抽象的にまとめることがよくあるわけですが、この抽象部分をつなげていくと、「文章の骨格」が出来上がります。それ以外の具体的部分はその肉付けに相当します。したがって、スピード・リーディングの手法では、全体では第一パラグラフと最終パラグラフに注目し、各パラグラフ内では最初の文と最後の文に特に注目するということになります。

⑤パラグラフをざっと読むたびごとに設問に取りかかる
 「1パラグラフ・1問題」が典型であるとされるように、基本的にはパラグラフごとに設問が設定されているので、パラグラフを読み終わる度に設問に向うべきです。「該当段落に解答の80%がある」というのは現代文の鉄則でもありますが、本文を読んで理解できなかったものが、設問の選択肢を通して「何だ、こういう内容を言っていたのか」と分かることがしばしば起きるものです。

⑥図表・グラフなどが出ている場合、まずその特徴を押さえる
 これは「内容の先行理解」と呼ばれるもので、スピードを上げるためのコツはこの「先読み」にあると言えるでしょう。

⑦問題に出て来た単語、熟語、文法事項、内容は丸暗記するつもりで覚え込む。
 これは新しい情報をどんどん入れるよりも、すでに知っている知識を確実なものにする方がはるかにロスが少ないからで(ローコスト・ミドルリターン)、「未知情報よりも既知情報を優先する」手法と言えます。

(3)時間内得点力訓練
 仕上げは「過去問演習」による実戦力養成ということになりますが、「限られた試験時間内で合格ラインを超える得点を確実に取る」ことがテーマです。

①無制限1本勝負で取り組んだ場合、合格ラインを超えるかどうか
 「時間内」得点力が問題なわけですが、最初は時間の制限を外します。「時間の制限が無いなら、合格ラインを超える力があるかどうか」がまず問題になるからです。「時間制限が無ければ合格ラインを超えられる力がある」なら、次は「タイムアタック」を重ねてスピードアップを図り、「時間内得点力」を目指せばいいということになります。逆に時間制限が無いのに合格ラインを超えられないなら、タイムアタックをしてもカンに走るだけで、いくら回数を重ねても実力アップにつながりません。

②「本番は1割減」と考えて、「1割アップの得点力」を目指す
 実際には本番では、頭が真白になったり、周りの人のカリカリが異常に気になったり、絶望感にかられたり、尋常ではない状況に陥ることがしばしばです。たまに奇蹟が起こることもありますが、全科目にわたって奇蹟が起こることも普通ありませんし、当てにするのは危険すぎるので、「本番は1割減」と考えて準備しておくのが現実的です。過去問演習で90点を超えたことがあるから本番でも超えるとは限らず、90点超えが数回しかないのなら80点台に落ち着くのが普通でしょう。逆に何とか80点台に踏みとどまりたいと思うのなら、練習段階で90点台を連発しておかなければなりません。

③過去問は2度、3度繰り返し取り組む
 過去問は1度やっただけでは「傾向とレベルの把握」「現状データの確保」だけに終わりかねません。課題が明確になったら、弱点を強化・克服してこそ意味があるのであり、2度目、3度目では限りなくパーフェクト解答を目指して「解答作り」に取り組むべきです。逆に2度目、3度目なのに同じ間違いを繰り返していたり、答案レベルが大きく上がっていないとしたら、「勉強効率」に問題があることになります。過去問入手に限度があり、数がこなせないとなったら、模試問題の活用、類似問題の活用にシフトしていきます。

④良質の問題をたくさんこなした分だけ「合格確率」が上がる
 東大や医学部を始めとする上位難関大学・学部の場合、理想形は高校2年の2学期までに3年までの内容を終了させ、3学期からまるまる1年間かけて様々な「過去問演習」に没頭することだとされます。これは「良質の問題をたくさんこなした分だけ合格確率が上がる」からで、「良質の問題」の典型が「過去問」だからです。ところで、受験生の中には「こんな大学の問題やったって、自分はここ受けないし、出題パターンが違う」といって、予備校の授業を批判したり、演習材料に文句をつけたりする人がたまにいますが(昔の司法試験などもそうでしたが、受験経験・知識だけは豊富な多浪生に多く見られます)、試験はあくまで「来た球を打つ」のであり、予測可能な部分(出題パターン)もありますが、いつそれまでとは違う新規パターンを出されても文句言えないわけですから、幅広い訓練と練習を行なっておくことは当然と言えるでしょう。

【英作文】

 いわゆる「話す」「聞く」「読む」「書く」の4つの基本的言語能力の中で、最後に位置するのが「書く」能力です。日本人でも日本語が使えるのは当たり前ですが、文法を自覚できていなかったり、文章が上手でない人もたくさんいるように、英語ネイティブでも文法的説明ができなかったり、文章が下手だったりするのは普通のことです。したがって、ノン・ネイティブとしては「文法的理解」「作文能力」の向上はネイティブに対抗する有力な武器にもなるわけです。
 また、英語力を短期間で引き上げようとすれば、「単語」「文法」のインプット系に対して、「読解」がその応用たるアウトプット系として有効なのですが、「読解」以上に効果が大きいのが「作文」です。これは自分の手持ちの単語・熟語・文法・構文の知識を総動員してもまだ足りず、調べたり、考えたり、無いものをどっかから持ってきてでも形化しないといけないからで、「強制的アウトプット法」と言えます。基本は「1日1題」に全力で取り組むことですが、そうすると、不思議なもので、1~2ヶ月も続けると、英語の知識と理解が骨身に付くようになり、英語力の足腰が強化されて、インプットの器そのものが拡大されてくるのです。インプットをどんなに頑張っても器が小さいと、「新しいことを覚えると、昔覚えたことを忘れてしまう」という嘆かわしい状況になってしまうのですが、無理矢理にでもアウトプットに取り組んでいると、器そのものが拡大されて、よりたくさんのものがインプットできるようになるのですから不思議です。国語でも「書く力」を訓練していくと、「読解力」も強化されていき、知らないうちに「国語力」が総合的にアップするということが起こってきます。

(1)和文和訳
 「情緒的言語」である日本語は、そのままでは「論理的言語」である英語に訳しにくい面があります。あるフランス人言語学者は日本の映画で、医師に想いを寄せている看護師が「好きよ」と告白する場面を見て、「訳せない!」と絶叫したことで知られています。日本人ならどうということのない、ありふれた場面で、特に理解に苦しむ表現でも何でもないのですが、ここには「主語」どころから「動詞」すらなく、「名詞+助詞」という単なる「名詞文」という構造が浮かび上がってくるのです。日本語では状況設定が言語の中に取り込まれ、当事者には明らかな要素が省略されていって、あたかも「省略の美学」でも持っているかのようです。これに対して、英語の5文型を持ち出すまでもなく、ヨーロッパ言語では基本的に「主語+述語」構造が取られ、「何がどうした」ということを表現せずにはおれないようになっているのです。この他にも英語には、「時制の明確化」「単数・複数の数の明確化」「否定構文」(無いものがある、のような発想は日本語ダイレクトの発想ではなかなか出てきません)といった日本語との特徴的違いがあるので、まず「日本語らしい日本語」を「論理的な日本語」「英語に変換しやすい日本語」に「和文和訳」する必要があるわけです。こうした日本語を「中間日本語」とも言いますが、英文を「直読・直解・直訳」した時に出て来る日本語がまさにこれです。これを逆の立場から攻めていくのが「和文和訳」の作業ということになります。

(2)和文英訳
 かくして、「論理的日本語」「中間日本語」に理解し直され、変換された上で、今度は「和文英訳」の作業となっていきます。英語に強い「時制意識」「数意識」にも注意しながら、主語、構文、単語を決定していきますが、日本人が間違いやすいのはむしろ「冠詞」の問題であると言います。難しい構文や単語を避け、手持ちの知識で極力対応して、無駄な失点を防がなければならないのですが、「ここは不定冠詞aが付くのか、定冠詞theが付くのか」といった問題は意外に難しく、日本人はやたらとtheを付け過ぎと指摘されています。ここで所有代名詞で逃げたり、複数形でごまかす手もよく使われます。
 また、添削していて判断が難しいのは、「文法的には間違いないが、こういう言い方があるのか?」といったケースです。これはノン・ネイティブの限界なので、ネイティブ・チェックを受けたいところですが、基本的には「文法中心主義」と「文例中心主義」という2つの立場があり、「文例中心主義」が優先されると考えましょう。アメリカへ大学院留学した際に「日本人離れした英語を書く」と評判だった人によれば、英文を書く際に「和英辞書」は一切使わず、「英和辞書」と「文例辞典」で「文例確認」を行い、文例が確認できない文はばっさり切り捨てていったと言います。とんでもない文章を書いてきて、「どこが悪いんですか?大体こんなもんでいいじゃないですか?」と開き直る人もいますが、それではいつまで経っても作文力が伸びません。単語を調べるだけではなく、文例を確認する地味な作業が不可欠なのです。今ではネットで簡単に「文例確認」ができますから、ある程度の文例が確認できるようなら良しと考え、ほとんど確認できないか、あってもごくわずかしか見当たらないとしたらあまり一般的な表現ではないと考えて、潔く捨てましょう。

(3)添削と仕上げ
 演習書に「直訳例」「意訳例」など、複数解答例が載っているのが普通なので、それを見て「自己添削」するのが基本ですが、厄介なのは「自分の作文は解答例とは違うが、これは正解と言えるのか?あるいはこれではダメなのか?」といった判断ができない場合です。これは見る人に見てもらう以外に方法がありません。「英作文」と「英会話」だけは自己学習に限界がある分野であると言ってもいいのです。逆に見てくれる人が確保できているのなら、「英作文」は差をつける分野になるわけです。そして、書いて添削を受けて、それで完結するのではなく、さらに修正して仕上げてこそ完結するのだということを忘れてはいけません。問題集をこなしている割に伸びない人は、「仕上げ」まで行っていないからで、ここまで行かないとただ単に書いた経験があるだけで、同じような作文例にぶつかった時にまた同じようなレベルの答案を書いてしまうのです。当然、問題集も2~3回転させていく必要があるでしょう。

【リスニング】

 「英作文」以上に厄介なのが「リスニング」対策です。これは音感・語感の差や経験の差も大きく左右します。帰国子女がリスニング問題を聞きながら、内容の面白さに思わず笑って、8割コンスタントで取ってくるかと思えば、海外経験はゼロながら、高1から地味にiPodでリスニング教材を聞き続け、9割を叩き出すような猛者もいます。英語圏留学の場合でも、日常生活に不自由しなくなるのに最低6か月は必要とされますので、とにかく「絶対量」が必要であることは言うまでもなく、なるべく早くから手をつけ、日々一定量を聞き続ける「習慣」を確立することがカギになるでしょう。苦手な人は大体高2の秋から手をつけ始めていますし、意識がある人は中学段階から開始しています。リスニングに限らず、勉強全般に言える大原則ですが、「早く始めた人が絶対的に有利で、遅くなればなるほど不利になる」状況は変わりません。
 ただ、この分野は他の分野と違って、まだ「絶対の1冊」「伝統の1冊」と呼べるような名著・名教材と言えるものがなく、各自の相性と判断に任せられているのが現状です。体験談の中で良いとされているものの中からいくつか試してみて(こればっかりは店頭でチェックできません)、「自分の1冊」に巡り会うことだと思います。



Copyright © 「やる気」が出る勉強法研究会 All Rights Reserved